「チケット全てをブロックチェーンで配布」欧州サッカーが買い占め・転売対策に電子チケット。UEFAスーパーカップ決勝で実現

コラム All Digital Music

 

音楽業界やエンターテイメント業界に先がけて、サッカー業界はチケットの違法転売や買い占め、詐欺行為を防ぐためにブロックチェーンを活用したチケット販売を成功させた。

欧州サッカー連盟(UEFA)は、8月15日に前年のUEFAチャンピオンズリーグの王者レアル・マドリードと、ヨーロッパリーグ王者アトレティコ・マドリードが対戦したUEFAスーパーカップで、試合のチケット全てをブロックチェーンベースのID認識技術による電子チケットシステムで販売したのだ。

 

UEFAサッカーに電子チケット化の波

エストニアの首都タリンにあるア・ル・コック・アレーナで開催された今年のUEFAスーパーカップでは、紙チケットは全て廃止された。その代わり、UEFAはオンラインでのチケット購入者に専用アプリで配布を行った。

受け取りは簡単なプロセスだ。チケット購入者は、スマートフォンに紐付いたアプリのダウンロードリンクと個別コード付きのテキストメッセージを受け取り、アプリにサインインすれば、電子チケットを受け取ることができる。複数枚チケットを購入して友人知人に配布する場合も、個人の場合と同様にアプリ経由で個別コードが発行されるため、簡単に受け取ることが可能だ。

スタジアムの入り口では、Bluetoothデバイスでチケットアプリのアクティベーションが行われる。ファンはログインに使ったスマートフォンとID認証したアプリでQRコードを入り口で取得して、ゲートを通過することができる。
 

 

 

スポーツイベントの電子チケット化で高額転売防止

 

 

SecuTix ロゴ

今回、UEFAは電子チケット販売には、エンターテイメント業界で活用されるチケットテクノロジーの専門会社「SecuTix」の技術が導入されている。SecuTixは、スイスのローザンヌに拠点を構え、スイスの大手IT企業ELCAの子会社だ。

今年4月、UEFAはSecuTixと電子チケットプラットフォームの長期契約を2021年まで締結した。2020年に開催されるヨーロッパの主要大会「Euro 2020」ではSecuTixの電子チケットが導入される。また、UEFAチャンピオンズリーグの決勝戦やヨーロッパリーグ、スーパーカップでも導入が決定している。

さらに、UEFA主催の主要大会の公式チケット転売プラットフォームもSecuTixが担当する。

特にEuro 2020は、従来の1国開催からヨーロッパ12都市に分散して開催する初の試みとなり、複雑な大会運営が予想される。300万枚以上のチケット販売が予想されるEuro 2020では電子チケットの導入による安全なチケット配布と、違法転売防止をヨーロッパ各地で導入できるかが運営のカギとなる。

Secutixの実績はUEFAの大会だけにとどまらない。今年イギリス・プレミアリーグのエバートンは、SecuTixと本拠地のグディソン・パークの公式チケットプロバイダー契約を締結した。39,000人収容の本拠地のチケット販売において、エバートンの歴史上初めてApple Walletで入場する電子チケットや、観客席の景観が見渡せる360度マップを導入したチケット販売サイトなどがSecuTixのプラットフォームによって実現する。

電子チケットの導入で、違法なチケット転売や詐欺行為が防止できるというメリットは、大規模なファンを抱えるスポーツやエンターテイメント業界のイベント運営側にとって利益を確実に確保するという面で重要な要素となっている。

また、世界の電子チケットプラットフォームの多くは、チケット転売サイトの運営もソリューションとして、イベント運営会社に提供している。確実にファンとイベントをチケットで結びつけるというメリットがここで生まれる。

SecuTixは、昨年からブロックチェーンを活用したチケット販売システムを展開してきた。フランス・リヨンで毎年開催する音楽フェスティバル「パレオ・フェスティバル」は、ブロックチェーンでID認証管理したチケット配布を導入し、長年悩まされてきたチケットの違法転売や詐欺、買い占めを撲滅し、確実にファンへチケットを提供していく取り組みをSecuTixと始めた。

アメリカでは、フットボールリーグのNFLがチケット販売最大手のチケットマスターと提携、2018-2019シーズンから、全チームのチケット販売を電子化する取り組みを開始する。シーズンチケットの配布やプリシーズンゲームのチケットまでも電子チケットが採用され、これによって高額転売や違法取引を防ぐ。

またエンゲージメントの高いNFLファン層には、スマートフォンアプリを通じたプロモーションキャンペーンやギブアウェイなどを展開するなど、チーム運営会社がより高度なデータ活用でファンエンゲージメントとマネタイズを同時に実現していくためにも電子チケット化は有効な手段となっている。
 


 

jaykogami
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Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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