国際レコード産業連盟が世界のレコード会社の予算配分を発表

コラム 高橋裕二の洋楽天国

今週の月曜日(11月12日)、IFPI(International Federation of the Phonographic Industry)、国際レコード産業連盟が、2011年に世界のレコード業界が、制作や宣伝でどのくらいの予算を使っているかを発表した。業界各誌が伝えている。国際レコード産業連盟は世界各国が加盟しているレコード業界の団体。日本からは日本レコード協会が加盟している。

レコード会社は売り上げに対し16%を制作費関連として使っているそうだ。この割合が大きいか小さいか。研究開発費として考えると、製薬業界では15.3%、コンピューターのソフトウェア業界では9.6%、ハードウェア業界では7.8%(欧州委員会報告書より)。IFPIのフランセス・ムーア会長は、「まだまだリスクがとても高い産業」とみている。

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2011年の時点で、大手レコード会社が契約しているアーティストのうち、新人アーティストの割合は23%だった。では主要なマーケット(アメリカ、日本、イギリス、ドイツ、フランス等)でアルバム・デビューさせブレイクさせるのにどのくらいの経費が必要か。以下がIFPIがまとめた数字だ。全て1$は80円で換算した。

アーティスト印税の前渡し金(アドバンス) 1600万円
レコーディング費用 1600〜2400万円 
宣伝用ビデオ制作費(2曲〜3曲) 400〜2400万円
コンサート・ツアー・サポート代 800万円
宣伝費・販売促進費 1600〜4000万円

日本では馴染みがないが、海外では発売前にアーティストに対して印税率かける一定枚数の前渡し金(アドバンス)が支払われる。ビデオ制作費は本当に低くなった。マイケル・ジャクソンの頃と比べると桁が一桁少ない。そのぶんつまらないビデオが氾濫する。ツアー・サポートは、新人の場合コンサートやライブのチケットが余り売れない為、またそれに加え会場費やステージ、音響、照明等にはそれなりに経費がかかる。レコード会社は「見せてファンにしレコードを売る」宣伝活動の一環である為、経費の一部を負担する。宣伝費・販売促進費はピンからキリ。アメリカの場合ラジオ対策費が大きい。結果新人で1押しのアーティストには最低でも約1億円が必要だという事になる。レコードが10万枚のヒットになってもレコード会社の取り分は約5000万円。リスクは大きい。

ちなみに世界の主要マーケットで国内のアーティストが売り上げに占める割合は以下だ。実物のCDアルバムの売り上げという条件だが。日本は際立って自国内のアーティストの売り上げが占ている。

1位) 日本 77%(洋楽は23%という事になる)
2位) アメリカ 62%
3位) ドイツ 55%
4位) フランス 54%
5位) イギリス 53%

日本の場合は昔からそれほど変化していない。当ブログの筆者が現役の洋楽担当ディレクター時代(70年代)でも30%程度だったと記憶する。アメリカが自国のアーティスト比率が下がったのはイギリス勢の躍進にあると思う。アデルやマムフォード&サンズやコールドプレイやスーザン・ボイルの大ヒットだ。フランスは昔日本と同様、自国のアーティストが強かった。日本人が日本語のレコードを主に買うように、消費者はフランス語のレコードを主に購入していた。様々な理由はあれど、日本のレコード購買者は日本語のレコードで満足している。別の見方をすると、各国と異なり、日本のアーティストが海外で稼ぐ時代にはほど遠いという事だろう。

アデルの「21」は母国イギリスで450万枚を売り上げるが、アメリカを主に海外で1800万枚の売り上げを記録した。450万枚が基本給なら、1800万枚は4ヶ月分のボーナスだ。時代の流れは、母国からヒットし最終的に海外でのヒットを目指す。日本のアーティストは海外で売れない為にこのボーナスが全くない。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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