ユニバーサル 英EMI買収でヴァージン・レコード売却か

コラム 高橋裕二の洋楽天国

欧米のメディアが今週頭に報じた、ユニバーサルミュージックのEMIミュージック買収に伴うヴァージン・レコードの売却話。ヴァージン・レコードの創業者で現ヴァージン・グループの総帥リチャード・ブランソンが有力な買い手として急浮上した。イギリスの経済新聞フィナンシャル・タイムズが伝えた後、アメリカの業界誌が後追い記事を書いている。

リチャード・ブランソンは1970年にレコードの通販ビジネスから身を起こした。その後ヴァージン・レコード、ヴァージン・メガストアーを始め多角化経営に乗り出し、現在は航空会社のヴァージン・アトランティックや鉄道会社、旅行会社、ケーブルTV局、携帯電話会社、レーシング・チームや宇宙旅行会社「ヴァージン・ギャラクティック」他数多くの様々な会社を保有している。

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ヴァージン・レコードはイギリスで、今から40年前の1972年に創業した。1973年、第1回の新譜としてマイク・オールドフィールドのアルバム「チューブラー・ベルズ」を発売。続くタンジェリン・ドリームの「フェードラ」の発売で当初はプログレッシブ・ロックのレコード会社と見られていた。転機が訪れたのは1977年のセックス・ピストルズとの契約。シングル「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」は半端ではない物議をかもした。80年代初頭はカルチャー・クラブやヒューマン・リーグがアメリカのMTVを席巻。その後もジェネシス、スパイス・ガールズ、デヴィッド・ボウイ、ブライアン・イーノ、マライア・キャリー、レニー・クラヴィッツ、ローリング・ストーンズ他数多くのアーティストの作品を世に送り出した。

20年前の1992年、リチャードはヴァージン・レコードをEMIミュージック(当時のソーンEMI)に(現在のドル円換算は適切でないが仮に1$80円とすると)640億円で売却した。事業の多角化の為の資金が必要だった。しかし音楽の夢は捨てきれず、1996年にV2レコードを設立。ブロック・パーティーやホワイト・ストライプス等の良質なロック・グループを輩出した。しかし2006年投資会社に売却、音楽ビジネスから撤退した。

今回のヴァージン・レコード買収計画についてヴァージン・グループの広報担当は、「リチャード・ブランソンとヴァージン・グループは長い間、レコード業界に戻る事を検討していました。ユニバーサルミュージックによるヴァージン・レコードの放出は私達にとってまたと無いチャンスです。再びダイナミックなインディーズ・レコード会社を創れます」とコメントした。但し今回ユニバーサルミュージックが売却するヴァージン・レコードは北米以外の地域だ(独禁法に相当する欧州連合競争法をクリアーしたい為)。しかしリチャード・ブランソンは再参入にあたって、ワールド・ワイドな事業展開を図るに違いない。これからユニバーサルミュージックと駆け引きだ。北米分も買うと。

リチャード・ブランソン、今日(7月18日)が誕生日。まだ62歳。ヴァージン・レコード買収が成功すれば、音楽業界にまた刺激を与えてくれるだろう。

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