マドンナが新たなレコード会社と契約、360度契約の行方は

コラム 高橋裕二の洋楽天国

【マドンナと360度契約の行方】

今週の水曜日(12月14日)、新聞ニューヨーク・ポストがマドンナの新たなレコード会社契約を伝えた。それによると2007年、ワーナーミュージックと契約を解消後、興行プロモーターの最大手ライブ・ネイションと「360度」の包括契約をしたが、新しいアルバムはユニバーサルミュージック・グループのインタースコープ・レコードから発売される。3枚のアルバム契約で、1枚のアルバムに100万ドルが支払われるという内容。

このスクープ記事に業界誌ヒッツは、「そんな事は2週間前の12月2日に当社は記事を書いている。それも3枚契約で3000万ドル、1枚なら1000万ドルの契約。ニューヨーク・ポストは桁を間違えている」と書いた。

ドル円換算(1$77円)すれば、ニューヨーク・ポストの記事は、マドンナのアルバム1枚が7700万円で契約出来るという事になる。

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2007年にライブ・ネイションがマドンナと交わした契約は10年間で1億2000万ドルの包括契約。初めての特大「360度」契約が交わされたと当時大ニュースになった。「360度」契約とはマドンナが稼ぎ出す大半のビジネスを包括する。レコード売り上、コンサート売り上げ、Tシャツ他のグッズから売り上げるマーチャンダイズの権利、ファン・クラブからの会費、映画のプロジェクト、TVを含むコマーシャル出演料等が含まれる。

要はマドンナが稼ぐほぼ全てのビジネスとライブ・ネイションは契約したという事。10年契約と言いながら既に4年が経った。

木曜日(12月15日)、マドンナとライブ・ネイションはインタースコープ・レコードと3枚のアルバムの「ライセンス契約」を結んだと正式発表した。ニューヨーク・ポスト紙もよく分かっていないようだが(記事は、ツアーはライブ・ネイションが引き続きやるが、マドンナはレコードはインタースコープと契約したという内容)、ポイントはマドンナがインタースコープ・レコードと直接契約したわけではなく、ライブ・ネイションがレコードに関してインタースコープ・レコードと「ライセンス契約」を結んだという事だ。契約当事者はライブ・ネイション。

インタースコープ・レコードにとってはアーティスト育成費や開発費といったリスクがない、既にスーパー・スターのマドンナの完成品がライセンス契約出来る事は安定したビジネスになる。前渡し金の金額だけが問題を含むが。

ライブ・ネイションは大金を払って(基本的には前渡し金だが)360度の包括契約を結んだのはいいが、レコード商売は素人なので、マドンナのアルバムはレコード商売のプロにやってもらおう。結果として業界の超大物、ジミー・イオヴァインが最高経営責任者を務めるインタースコープ・レコードとライセンス契約を締結する事になった。契約の内容は明らかになっていないが、業界誌の報道からすると、3枚契約で、1枚のアルバムに1000万ドル(1$77円換算で7億7千万円)が支払われる。

これはあくまで契約金ではなく、マドンナがアルバムから稼ぎ出すアーティスト印税の前渡し金といくばくかのライブ・ネイションの上乗せ手数料という事になるだろう。難しい話になるが、前渡し金が回収(リクープ)されるまで、ライブ・ネイションにはインタースコープから一銭もお金は支払われない。

2007年の時点でライブ・ネイションとマドンナが交わした「360度」の包括契約は1億2000万ドル。今回インタースコープ・レコードとライブ・ネイションが交わした金額は3000万ドル。マドンナの中でレコード売り上げが占める割合は25%程度でしかないという事になる。

アルバムは完成したそうで、2012年の3月末に発売の予定。アルバムからのシングルは「Gimme All Your Luvin’」 は2012年1月末発売予定で、2月5日にはスーパー・ボールのハーフタイム・ショーで歌う事も決まった。

5年振りのニュー・アルバム。53歳のマドンナ。インタースコープ・レコードなので、25歳のレディー・ガガとはレーベル・メイトという事になる。

今回の契約でもわかるように、マドンナが書く曲の権利はいっさいライブ・ネイションの包括契約には含まれない。それだけ音楽著作権は「宝の山」なのだ。その意味でもマイケル・ジャクソンは弁護士の意見を聞きながらビートルズ(ジョンとポール)の音楽著作権管理会社を買ったのは本当に先見の明があった。

ところで「360度」契約。レコード業界で最も推し進めたのがワーナーミュージックのエドガー・ブロンフマン。マドンナがワーナーミュージックと契約解消した主な理由は、マドンナはエドガー・ブロンフマンが嫌いだった。そのエドガー・ブロンフマンもワーナーミュージック買収後今年いっぱいでワーナーミュージックから追い払われることになった。栄枯盛衰。

「360度」契約が上手くいったという話は聞いた事が無い。

記事提供元:Musicman オススメBlog【高橋裕二の洋楽天国】

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