『Newspeak presents “Burning Lungs Tour”』2026.3.14(SAT)東京・代官山Space Odd
ツアーの終着点であるはずのツアーファイナルがそのバンドにとって、新たなスタートになることは珍しくない。昨年12月に配信した新曲「Burning Lungs」をツアータイトルに掲げ、名古屋、大阪と回ってきたNewspeakもまた、ツアーファイナルとなる3月14日(土)の東京・代官山Space Odd公演を1つの節目と位置づけ、ライブに臨んでいたことは曲間にRei(Vo.Key.Gt)が語った「次のステージに向かいます!」という言葉からも明らかだった。
次のステージが何のことを言うのかは後にわかるのだが、この日、サポートギタリストのTakeを加えたステージの4人が序盤から一気にアクセルを踏み込むようにダンサブルな「RaDiO sTaTiC」、ファンキーな「Alcatraz」、アンセミックな「Leviathan」とライブのクライマックスを任せられるキラーチューンの数々を惜しげもなく披露して、ライブバンドとしての瞬発力の高さを見せつけていったのは、振り返ってみれば、次のステージに向かうことを決意したバンドの気迫の表れだったような気もする。
サビでテンポアップするSteven(Dr)のドラムがいつもよりも走っているように聴こえたところが良かった「Leviathan」の演奏中、観客の反応を見ながらReiが笑みを浮かべたのは、早速、大きな手応えを感じたからに違いない。
そこから「大きな声で一緒に歌いましょう!」とReiが言いながら、繋げたファンカラティーナな「Wide Bright Eyes」は、「カモン!足りない!足りない!シンギン!」と巧みに観客をリードするReiのパフォーマンスも見どころだったが、彼の言葉に観客がこの日一番のシンガロングで応え、早くもクライマックスという言葉がふさわしい盛り上がりが生まれている。
「マジ楽しいね。ライブが生き甲斐です」
「みんなの大きなスマイルを見ているだけで、ただただしあわせ」
Yohey(Ba)とStevenの言葉からもバンドと観客の間に、いいバイブスが生まれていることがわかる。もっとも、熱狂を生む曲だけがNewspeakではない。
「節目の日。すべて燃やし尽くして、次のステージに向かいます!」
改めてReiがこの日のライブにかける意気込みを言葉にしてから、<明日へ踏み出せば 世界は美しい>と歌った「Nokoribi」からは、じっくりと聴かせる曲を繋げていき、Newspeakがバラードやメロディアスなスローナンバーも得意としていることを印象づけていく。
その中でも際立っていたのが「See You Again」と「Stay Young」の2曲だ。Reiがファルセットを交え、歌い上げたバラードの前者は、YoheyとStevenがダン!ダン!ダン!ダン!とユニゾンでリズムを刻む間奏から、ぐっと白熱していったバンドの演奏も見逃せなかった。一方、フォーキーな味わいとUKロックサウンドが入り混じるミッドバラードの後者は、この日に限って言えば、Newspeakチームのメンバーの結婚式で新郎新婦の入退場に使われたこの曲を聴いた時のReiのエピソードも込みで聴きどころだった。
「その時、ぐちゃぐちゃだった自分のメンタルが許せたんです。Newspeakにはいろいろな感情を歌った曲があるけど、最終的には愛を歌っていたいのかもれない。光が射しこむイメージが俺はあるんだけど、同じように思っている人はけっこう多いんじゃないかって想像してます」
Reiの話を聞きながら、もしかしたらその時の経験がもっと自由に作りたい曲を作って、歌いたい歌を歌おうと彼に思わせたのかもしれないとちょっと想像したりも。もちろん、想像の域を出るものではないけれど、「Stay Young」といい、前述した「Nokoribi」といい、この日のセットリストがいつも以上にReiをはじめ、次のステージに向かうことを決めたメンバー達の気持ちを代弁しているという意味でリアルに感じられたのは、筆者だけではないだろう。
それを一番感じたのは、シンセをレイブ風に鳴らしたNewspeak流のエネルギッシュなディスコナンバー「Media」からダンサブルなロックナンバーを繋げ、観客のフィジカルなリアクションとともに再び熱狂を作り出していった直後に不意に繋げたピアノバラードの「Be Nothing」だった。
1つ前の「Hear It Out」はメランコリックな曲をダイナミックに聴かせる手数の多いStevenのドラムプレイのかっこよさも見どころだったが、「Media」からたたみかけるように白熱した演奏を繰り広げ、観客とともに作り上げた熱狂を感じながら、「俺達みんなライブが大好きなんです」と語り始めたReiは「こういう場所があって、俺ら、ほんとに幸せだと思います。俺らとお客さん以外の何物でもないって場所はなかなかなくて、こういう場所があるから俺らはバンドができる」と続けると、「Be Nothing」を歌い始める前に「大事なあなた達に捧げます」と言った。
<I want to be nothing I’m sick of trying to be something for nobody I wanna be nothing For somebody(誰でもない誰かのために素晴らしい人間になろうとすることにはもううんざりだよ。何者でもなくってしまいたい)>と歌う「Be Nothing」を、Reiはこの日、大事なあなた達のために素晴らしい音楽を作り続けたいという思いとともに歌ったのだということが彼の言葉から想像できた。
曲の冒頭でReiのピアノの弾き語りにStevenが加えるハーモニーが美しい。そして、Takeがピキーンと鳴らしたギターのヘッドピーンからバンドイン。最後はメンバー全員で演奏をかき回しながら、そのままドラムのジャングルビートで繋げ、「Be Nothing」のメランコリックを吹き飛ばすようにNewspeak流のビートロックナンバー「State of Mind」になだれこむ。まるでザ・フーの「マイ・ジェネレーション」を演奏している時のジョン・エントウィッスルみたいにリズムを刻むYoheyのベースプレイがかっこいい。それは前述したジャングルビートやTakeが巧みにチョーキングを使いながら奏でるリフとともに筆者のお気に入りだ。
そして、この日、Reiが何度も口にしてきたNewspeakの次のステージがここでついに明らかになる。
「Newspeakは独立します!」
株式会社次世代及び株式会社ワーナーミュージック・ジャパンとの契約を満了したことをキッカケに、新たに次世代所属当初のマネージャーが運営するSELEBRO inc.とタッグを組み、これからはすべての活動を自分達で回していくのだという。この時点では正式な発表はまだ先だが、ライブに来てくれた人達には直接伝えたいということから名古屋、大阪に続いて、この日、東京でもフライングの発表となった。加えて、独立の第1歩として、新イベント『Port Primal』を10月12日(月祝)渋谷WWWで開催することも発表された。
「3人でスクラムを組んで、ゼロからやっていこうと思ってます。みんなともっと近い距離で接して、今まで以上にみんなを大切にしてやっていきたい」(Rei)
Newspeakのこれからを自ら祝福しながら、観客と新たな約束を交わしたところで披露したのが今回のツアータイトルになっていた新曲「Burning Lungs」。タイトルは内なる情熱を連想させるが、Reiが語ったところによると、作り始めた時は終わりの曲だったそうだ。それが3人で合わせているうちに始まりの曲に変わっていったという。
「大事な曲になりました」(Rei)
曲調はビートルズを連想させるものの、Reiがアコギを弾いているせいか、フォーキーな味わいもある。しかし、バンドサウンドはアトモスフェリックというNewspeakらしいユニークな曲になっている。Reiの歌にYoheyとStevenが重ねるハーモニーも聴きどころだ。Takeによるフィンガーピッキングも珍しい。シンガロング必至のライブアンセムになっていきそうだ。
「Newspeakでした!」とReiが声を上げ、ダメ押しするように盛り上げるのかと思いきや、この日、バンドが選んだラストナンバーはビタースウィートなミッドバラード「Coastline」だった。
1曲目からジェットコースターのように感情のアップ&ダウンを繰り返しながら、気迫に満ちたパフォーマンスを見せつつ、最後は「Burning Lungs」と「Coastline」の2曲で締めくくる。そこには何か吹っ切れたような清々しさも感じられた。次のステージに向かうと決意したいま、Newspeakに迷いなどこれっぽっちもないのだろう。
もはや彼らのライブの恒例になっているアコースティックセットで「Clockwise」をまず披露したアンコール。「感謝しかない。みんなにもメンバーにも」とReiが言い、自らを鼓舞するように演奏した「White Lies」の大きなグルーブで観客を包み込むようにライブはエンディング――と思いきや、ダブルアンコールに応え、「最後はぶちあがりましょう!」(Rei)と「Blinding Lights」でフロアを揺らす。
メランコリックな曲がサビで一転、<目も眩むような光よ 僕らが乗り越えられると思わないのか>と歌いながら勇壮なアンセムに変わる。その時、会場は解放感に満ち溢れていた。今回のツアーにこれほどふさわしいエンディングはなかっただろう。
取材・文=山口智男 写真=河島遼太郎

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