ボブ・ディラン、18年振りの新刊『モダンソングの哲学(仮)』岩波書店より刊行へ

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ボブ・ディラン著『モダンソングの哲学/The Philosophy of Modern Song』が、サイモン&シュスター社より11月8日に海外で出版される。これはディランにとって、2004年に出版され、50週以上にわたって“ニューヨーク・タイムズ“のベストセラー・リストに名を連ねてきた「ボブ・ディラン自伝」以来の新著。そして2016年にノーベル文学賞を受賞して以降、初の著書となるものだ。

2010年から執筆に取り組んできたという『モダンソングの哲学』でディランは、ソングライティングに関する技術や技巧について、いわば上級者向けの講義を展開している。ここでディランは、彼以外のアーティストの作品に焦点を当てた60以上のエッセイを書いているのだが、その顔ぶれはスティーヴン・フォスターからエルヴィス・コステロまで、ジャンルはハンク・ウィリアムスからニーナ・シモンまでと、じつに幅広い。たとえば、彼自身が「安易な押韻」と呼ぶ問題が分析されていて、シラブルを1つ増やすだけで、曲の魅力が損なわれてしまうといったことが書かれている。さらに、ブルーグラスとヘヴィ・メタルの関連性といったテーマまで語られているのだ。ディラン一流の散文体で書かれていくこれらのエッセイは、神秘的で機知に富み、時に辛辣であり、深遠であり、またしばしば、大声を出して笑いたくなるほどおかしなもの。いずれのエッセイも、もちろん表面的には音楽をテーマにしたものだが、じつは、人間のありようを深く想い、熟考を重ねて書かれた文章なのである。またこの本では、時間をかけて整理収集された貴重な写真約150点を掲載。加えて、それぞれの曲から夢のように美しい一節が紹介されているのだが、それらが1つになって叙事詩のような輝きを放ち、この本の価値をさらに高めている。

2020年に「ラフ&ロウディ・ウェイズ」を発表したディランは、その傑出したアルバムによって、1960年代以降のすべてのディケイド(10年間)でビルボード誌のアルバム・チャート40位圏内に1枚以上のアルバムを送り込むという偉業を達成した、初のアーティストとなった。「モダンソングの哲学」には、その実り豊かな、長い年月のあいだに彼が学んできたさまざまなことが収められている。そして、これまでに彼が取り組んできたことすべてと同じように、この本そのものが、きわめて重要な意味を持つ芸術的成果なのだ。

サイモン&シュスターの会長/チーフ・エグゼクティヴ・オフィサー、ジョナサン・カープ氏は「この万華鏡のような魅力にあふれたボブ・ディランの本を出版することによって、私たちと同じ時代を生きる偉大なアーティストたちの歌の数々を、世界中の人たちと祝福したい」と語る。「『モダンソングの哲学』は、ボブ・ディランにしか書き得ない本。彼はその独特の語り口によって、それぞれの歌に対する深い賞賛と理解、その歌を世に送り出した人たちへの想い、我々の人生にとっての意味などを伝えてくれる」。

『モダンソングの哲学』は、岩波書店から2022年度に刊行が予定されており、海外ではオーディオブックとしても発売され、なんとディランもナレーションの一部を担当し、ほかの人たちの声とミックスされるとのこと。

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