お客様のあらゆるニーズに応える「エンタテインメント・モンスター」をめざして 〜スマートフォン向け総合エンタメアプリ「UULA」

インタビュー スペシャルインタビュー

村本 理恵子 氏
村本 理恵子 氏

エイベックスとソフトバンクが提供するソフトバンクのスマートフォン向け総合エンタメアプリ「UULA」のサービスが2月14日にスタートした。

UULAは、映画やドラマ、アニメなどの映像コンテンツや、ミュージックビデオ、アーティストのライヴ映像、カラオケなどの音楽コンテンツ、さらに映像と音楽のコラボレーションをテーマにした「UULA」オリジナルコンテンツなど、6万コンテンツ以上が月額490円で全て見放題の総合エンタメアプリだ。

ユーザーの再生履歴に基づいたお薦めのミュージックビデオを自動で連続再生する「AUTO PLAY」や、ユーザーがチェックしたお気に入りのコンテンツをまとめて連続再生できる「プレイリスト」、途中まで見ていた映画を続きから見ることができる「途中再生機能」など、ユーザーの使い勝手にこだわった機能を有したUULAについて、株式会社UULA取締役 村本理恵子氏に話を伺った。

UULA
[港区・南青山 エイベックス・グループ・ホールディングス(株)にて]

 

——「UULA」開発のきっかけは何だったんでしょうか?

村本:もともと、ソフトバンクの孫(正義)社長と、弊社の松浦が懇意にさせていただいて、以前から「何かエンタメのサービスを一緒にやろう」という話があったんですね。それがスマートフォンを対象にしたエンタメサービスとして具体化してきたのは去年の春くらいです。そこからどういうサービスにするか、話を詰めていきました。

——現在、各社から定額制の音楽サービスが出てきていますが、UULAは映像をメインにしていますね。

村本:今、世の中にあるエンタメサービスは、コンテンツを出す側の都合で、映像のサービスと音楽のサービスが分かれてしまっているという認識がありましたので、「一つのサービス内で音楽、映像と分け隔てなく楽しめる」ことが念頭にありました。つまり、音楽配信サービスをやるとか、映像配信サービスをやるというよりは、エンタメサービスをやろうと。そういった意味では、最近の音楽聴き放題サービスとUULAはある種一線を画しているかと思います。

一日の中のちょっとした合間にミュージックビデオを見たい、お笑いが見たいといった、ユーザーの気持ちや気分、シーンに応えるエンタメサービスでありたいというのが、UULAの目指しているところです。とにかく音楽と映像を分けたくなかったので、「AUTO PLAY」機能など、ミュージックビデオも音楽として楽しめる機能はかなり入れています。今やみなさん音楽をYouTubeなどで楽しまれていて、“聴く”だけから“見る”と”聴く”が一緒になっているような気がするんですね。ですから、まずミュージックビデオからUULAはスタートさせました。

——開発の期間はどれくらいかかったのでしょうか?

村本:昨年の8月から今年の2月までとかなり短かったです。本来は昨年12月中にオープンする予定だったんですが、まだ完成度に問題がありまして、2月に延期しました。それでも半年くらいですね。

——ドコモ向けの定額制動画サービス「dビデオ™ powered by BeeTV」のノウハウやシステムがあったことで開発期間が早まったということはありますか?

村本:システムは全く別ですので、あまり関係ないかと思いますが、「dビデオ」の知見がありますから、不便なことをより改善することができました。

——UULAは様々なコンテンツが入っているのに、すごく見やすいですよね。

村本:ありがとうございます。そこは我々が一番こだわったところです。毎月お客様からいただくお金は、UULAの入場料みたいなもので、特に目的のコンテンツがなくても、UULAを開きさえすれば楽しめる、という感覚をお客様に持っていただけるようなインターフェイスを目標に、サービス内容をかなり詰めてきました。

——UULAの機能的な特徴についてお伺いしたいのですが。

村本:まずは、先ほどお話した「AUTO PLAY」という機能ですね。何も考えなくてもこれだけ押すと、音楽が始まり、気に入らなかったら飛ばすこともできます。そのほかにも「おすすめプレイリスト」という機能を用意していまして、自分でプレイリストを作らなくても、自分の感覚にあったプレイリストができるのが、一つ大きな特徴です。また、お客様が保存しているiTunesの楽曲もUULAで再生できますし、歌詞の確認など、私自身が使ってみて「ここ不便だな」と思ったことは、ひたすら改善していった感じです(笑)。

——カラオケもたくさん入っていますよね。

村本:カラオケってストレスを発散したいときに「歌いたいな」って思うことってあると思うんですよ。そういう気分のときにこの機能で応えられるかなと思います。ストレス発散をカラオケでする方もいれば、お笑いを見て笑って解消する人もいるでしょうし、色々なニーズにUULA一つあれば、とりあえず足りていますよねという、そこが私たちの目指しているところです。

——ドラマ、映画、アニメとコンテンツが充実していますよね。

村本:はい。何と言ったらいいでしょう…「変なものを入れない」と言ったらいけないかもしれませんが(笑)、コンテンツが並んでいる中で「これ何?」と思われた途端に、「UULAってレベル低いな」と思われてしまうんですね。ですから、コンテンツの量だけでなく質にもすごくこだわっています。そういう意味で「ちょっとこれ見たかったんだよね」というような有名な映画やドラマ、アニメはしっかり揃えています。

——これで月額490円見放題ですとかなり安いですよね。

村本:もともと「月額で払えるものの限度はワンコイン」と思っていたんですよ。ですから、それを越えることは我々の中ではありえませんでしたね。

——では、この月額490円という金額は早い段階から決まっていたんですか?

村本:最初から考えていました。もう価格ありきです。こういうコンテンツで、これだけお金がかかるから幾らにしよう、という話ではなくて、この価格でとにかくやりきるんだというところからのスタートでした。

UULA ホーム画面
▲「UULA」ホーム画面

UULA AUTO PLAY
▲「UULA」AUTO PLAY画面

——最近の日本のコンテンツ産業や、音楽業界をどのように見ていられますか?

村本:結構厳しいですよね。昨年若干CDの売上が伸びたと言われていますが、配信とか長期的なトレンドで見るとやっぱり好調とは言い切れないと思います。やはり、みなさんの使うツールや生活時間の過ごし方などが変わってきていると思うんですよ。ですから、コンテンツを作る側もそこに合わせて自分たちを変えていくということが必要だろうと思います。ただコンテンツだけ変えていってもマーケットがないと活かせませんから、そのために私たちはUULAのようなものを作っているという意識なんです。

弊社の中でも、プラットホームを担う私たちは市場を作る側だと思っています。逆にクリエイティヴ側は「この(UULA)の中で聴く音楽ってどんなのだろう?」と考え、音楽を作り出していくことが必要なんじゃないかな? と思います。今はちょうどその過渡期という気がしていますね。

——スマホも急激に普及していますしね。

村本:すごく面白いんですが、音楽の聴き方を調査してみますと、みなさん曲を1、2分聴くと次の曲に移っていたりするんですよ。もしかしたら音楽の長さというのが、今のお客様にとってはそのくらいがいいのではないか?とか考えるんですよね。

——ワンコーラスくらいの長さがちょうど良い?

村本:そうですね。聴き方そのものが、すごく忙しいというか、じっくり聴こうという時間がどれだけあるのか、そういったことを色々考えます。あと、LINEなどを見ていても、コミュニケーションがすごく素早いですよね。そういう時間感覚に慣れた人たちにとっての音楽とはどういうものなんだろう? とか、今後真剣に考えていく必要があるのではないかと思います。

——モバイルと音楽/コンテンツビジネス、ソーシャルメディアの相関関係をどうお考えですか?

村本:正直、UULAの中でソーシャルを持つかと言われると、今のところ多分ないと思うんです。というのは、皆さんすでに外で色々ソーシャル活動されているので、そことどう親和性を持つかの方が重要だと考えています。今もUULAはFacebook等に投稿できるようになっていまして、投稿すると予告編が相手側で再生できるようになっているんですが、それを見た方が「これ面白そうだな」とUULAに興味を持っていただければ、それでいいと思っています。

我々としては、お客様がソーシャルと繋ごうと思ったときに気楽にできればいいかな、という感じなんですね。ソーシャルに繋いで、こっちに戻ってこられるとかあまり考える必要はなくて、「今見ている」みたいなことを呟きたい、言いたいと思ったときに、簡単にできればOKみたいな感じです。

——作る側が難しく考えすぎなんでしょうか?

村本:そうだと思いますね。自分がFacebookの1ユーザーだとしたときに、あまり複雑なことをしたいというよりは「面白いな」と思ったからちょっと投稿するだけだと思うんですよ。そして、その仕組みがすごく簡単ならよく使うでしょうし、それを見ている人は「あっ、UULAで見ているんだ」くらい分かればよくて、無理矢理「ここに繋げましょう」「入会に行きましょう」といった誘導を作為的にやる必要はないのかな、と。それで気がついた頃には、「最近、UULAの映像を見ているという声が多いな」となれば、UULAというブランドにとってハッピーじゃないかなと思っています。

——こちらから提示をしなくても十分ですものね。

村本:使うのはお客様なので、便利だと思って使っていただけるかどうかに尽きると思いますね。

株式会社UULA 取締役 村本 理恵子 氏

——UULAは直感で触って楽しめる印象があります。

村本:触った瞬間に参加できてないと、多分こういうサービスってダメじゃないかなと思うんですよね。例えば、テレビってつけるとすでに番組が始まっていて、それが面白いか、面白くないかでチャンネルを変える…ということは、すでにテレビに参加しているわけですね。オンデマンド型はそこが結構垣根かなと思っていまして、「選ぶ」という行為は人間にとって本来面倒くさいことで、サービスに入会した頃はあれこれ選ぶけど、しばらく経つと、選ぶことに面倒くさくなって、使うのを止めてしまうみたいなことが起きている気がするんですね。

——確かにそうですね。

村本:ですから、そこで「選ばなくていいよ」ということをいかに伝えるか、それがUULAの1つのテーマですね。とりあえずUULAに触ると何かが始まって、「この曲ちょっと気に入らないから別のにしよう」と、そこで初めて選択は起きるわけで、何もないのに来て選べと言われても、選び切れないですよ。オンデマンドサービスとしては、いかに選ぶ面倒くささを軽減できるかが鍵になります。

——それはアーカイブ化の課題だったりしますよね。膨大過ぎて結局何をしたらいいのか分からないと言いますか。

村本:お客様って意外に選べないと思うんですよ。私はよく「7つ以上のものは、人は結構選べない」と言っているんですが、選択肢が増えるとただ見ているだけで、実は選んでいないんじゃないかと。そういう人たちに特集などをどんどん提供していくことで、参加していただく契機を作っていく。それが、見放題、聴き放題サービスの1つのポイントじゃないかなと思っています。

——お客様目線に徹すると。

村本:そうですね。お客様のユーザビリティの追求に尽きますね。いかに楽に、考えないでやれるかというところを徹底的にやっているので、とりあえず、何も見たいのがなくても、是非UULAに来てくださいと言いたいですね(笑)。

——とりあえず遊びに来て欲しいと(笑)。

村本:本当に「UULAで遊んでください」ですね。遊び場だと思ってくれると一番良いかなと思います。

——最後になりますが、UULAの今後の課題や展望をお聞かせ下さい。

村本:今後は当然マルチデバイスというところも意識していますし、デバイスの中に入り口をしっかりと持つということも意識していかなければと思っています。また、UULAはエンタメの相互サービスだと思っていますので、楽しみ方のいかに広げるかを色々と考えています。例えば、コンサート、ライヴのチケットが買えるとか、過去のライヴのセットリストがすぐに見られるとか、ちょっと不便なことをどう便利にできるか、徹底的に知恵を絞っていきたいです。

——お話を伺うまでは、「UULAは動画配信サイト」というイメージだったんですが、そこだけには収まりきらないスケールを感じます。

村本:私たちはあまり動画配信サイトという意識はなくて、エンタメサイトという意識なので。今出ている機能は実を言うと、私たちが考えている60%にも満たない感じなんです。ですから、これからどんどんアップデートしながら、色々と機能が充実していきますし、そういう中で新しいサービスも始まっていくと思います。

——村本さん個人でも結構なんですが、最近注目しているコンテンツやモバイルサービスはあったりしますか?

村本:そうですね…コンテンツというとあれですけど、モバイルサービスって去年は想像しなかったようなものが出てくると思うんですよ。

——確かに予測しづらいですよね。

村本:LINEとかそうだと思うんですが、メールで人とやりとりをするのがみんな当たり前だと思っていたのに、いつの間にかメールを使わないでLINEでコミュニケーションを取るみたいな。この世界って、いつ、何が発生してくるか分からないという意味で言うと、注目するものはその時々で常にあるんじゃないかなと思っています。逆に言うと、そういうものを色々と見据えながらも、自分たちがどう進化できるかという方がむしろ重要かなと思っているんですね。ですから、他社さんのサービスってそんなに実はそんなに気にしていないんですよ。

——そうなんですか(笑)。

村本:本当にそうなんです。そこばかり見てしまうと、どうしてもサンプルっぽくなってしまうので、自分たち独自で「これはお客様に楽しんでいただけるよね」と考えることの方が重要だと思いますね。

——周りを見過ぎると、逆に縛られてしまう感じがある?

村本:ええ。そこは自由にしていたいと言いますか、先入観を持たないようにしようかなと(笑)。そうしないと新しいことがなかなか作れない気がしているんです。また1年経って、来年の今頃何が流行っているかまた分からないですから。そういう中でUULAが常にエンタメサービスの中心にいられたらと思っています。

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