「FDJ(the Federation of Dancemusic Japan)」日本ダンスミュージック連盟 インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

日本ダンスミュージック連盟(FDJ)
日本ダンスミュージック連盟(FDJ)

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 単に海外の模倣でなはく確固たる文化として逆に海外からの注目も高まり、日本の音楽シーンの中でも確実に定着したクラブ/ダンスミュージック。今まで不透明であったダンスミュージックのアーティストやDJ、 Remixer、クリエイターらの権利を明確にし、さらにクラブイベントやフェスが活発化している中で、その表現活動の現場であるクラブに関する研究・調査を行うことによりダンスミュージックの社会的地位向上をはかり、もって日本の音楽産業の発展及び音楽文化の向上に寄与することを目的として、2007年 11月に設立された『日本ダンスミュージック連盟(The Federation of Dancemusic Japan)』(以下 FDJ)。
 来る3月7日(土)のKICK OFF PARTYに先立ち、FDJ設立のいきさつから活動の成果、海外をも見据えた今後の展望までを、理事長浅川真次氏(株式会社アーティマージュ 代表取締役社長)、理事 後藤貴之氏(株式会社ニューワールドプロダクションズ代表取締役社長)、石原尚氏(ブランニューメイド株式会社 代表取締役)に伺った。

[2009年2月24日 株式会社アーティマージュにて]
▼日本ダンスミュージック連盟
http://www.f-dj.org/

——FDJ設立のきっかけは何だったのでしょうか?

浅川:ダンスミュージックというジャンルを中心に活動しているアーティマージュやニューワールドプロダクションズ、ニュースタイルヴィジョンといったプロダクションや、僕らが関わっているクラブ「ageHa」や「渚音楽祭」などを手掛けられているブランニューメイドなどクラブ系のイベントをやられている事業者の横の繋がりといいますか、ダンスミュージック自体のネットワークを作ろうと思ったのがきっかけです。

 昔から音制連((社)音楽制作者連盟)、音事協((社)日本音楽事業者協会)ではダンスミュージック系って第三勢力のように言われてきたところがあるんですが、特にまとまって何かをするということもなかったんですね。ただ、クラブシーンの発展に対して一番大きい問題になる風営法(風俗営業法)の営業時間とか、そういった部分を改正していこうと石原さんたちは以前から活動されていたんですね。

——石原さんはそういった活動を何年前からなさっていたんですか?

石原:私自身がやっているのは5〜6年前くらいからで、クラブを集めていろいろやったりしているんですけどね。

浅川:クラブという場は我々ダンスミュージックをやっているポジションからすると非常に重要なファクターで、宣伝の場でありアーティストの活動の場であるというところで、風営法をなんとかしていきたいと集まったりはしていたんです。

後藤:風営法への取り組みという部分はFDJの一つの核なんですが、もう一つは’90年代半ばからどんどん増えてきたダンスミュージック系のアーティストやDJが今や市民権を得て一般化している中で、放送二次使用料や貸レコード使用料など、著作隣接権の部分を取りまとめているCPRA((社)芸団協・実演家著作隣接権センター)の中に分配者がわからないという未分配者が出てきたんですね。

——ダンスミュージック系のアーティストの権利が宙ぶらりんになったままということですか?

浅川:ええ。宙に浮いたままのものがこの10年で急激に増えて、そのリストを見るとクラブ系アーティストがすごく多いんですね。多いんですが、それをどうやって分配していくかというルートがCPRAの中でもないというかわからないという点と、実際に呼びかけてみたもののアーティスト自身にしてみれば、よくわからない団体から「お金もらえるから入ってくれ」とかいう連絡を受けても割と門前払いだったり、「自分たちでやってるからいい」というような回答が多いんです。ただその分配はアーティストなり制作者たちの権利ですから、ダンスミュージック系のアーティストたちに「ちゃんと権利と貰えるお金があるんだよ」と説明していく作業を始めたんですね。

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——権利についての啓蒙活動を始めたわけですね。

後藤:そうですね。権利があることをわかってもらう啓蒙と、風営法改正への取り組み、そしてクラブシーン自体を発展させていくという大きな目的のために作ったのがFDJです。

——FDJの発足は2007年ですね。

後藤:2007年の11月です。もうとりあえず作っちゃって、実際に活動して何か少しでも具体的な形になっていかないと、アーティストたちも我々自体も理解できないところもあるだろうと考えました。知っている人たちには声をかけられますが、名前は知っているけど会ったこともないというようなアーティストやプロダクションが今はもう沢山ありますから、FDJとしてしっかりと実績を作るところから動きだそうと思ったんです。

 

——FDJは音制連内の一部門という関係なんでしょうか?

浅川:いえ、そういうことではないんですが、今FDJを通して直接分配するということは出来ないので、分配等の作業をするにあたって僕が音制連の理事をやりつつFDJの代表をやっている関係上、流れとしては音制連がいいんじゃないかと。

——FDJに入ると自動的に音制連に入るということになるんですか?

浅川:そうなりますね。現段階でFDJは会員制の形をとっていないので、分配作業に関してFDJから説明をして、音制連に権利を委任してもらうような流れになります。ですから紹介者としてFDJは存在するわけです。

——つまり音制連が直接加入を呼びかけても、ダンスミュージック系のアーティストたちは入ってくれそうにないので、その仲介者としてFDJという組織があったほうがいいと。

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浅川:簡単に言うとそうですね。FDJはダンスミュージック系のアーティストたちに権利関係を理解してもらいたいというところから始まっていますから。

——FDJ設立から約1年が経過しましたが、どのような成果があがりましたか?

浅川:音制連に権利を委任する方が増えたという部分では、この1年半くらいでかなり成果をあげていると思います。音制連を通してCPRAのほうでもダンスミュージックに関しての未分配者がわかってきて、実際に分配された金額というのもかなりの額になりました。

——それはもしFDJを作っていなければ宙に浮いていた金額ということですね?

浅川:そうですね、宙ぶらりんになっていたかもしれませんね。ただCPRA自体もそれをずっと置いておくわけにもいかないので、ある一定期間をとった後、今いる権利者の分配原資になるんですが、それだと本来の権利者にお金が行かないわけじゃないですか? 当然のことに権利者を明確にしていくことが筋なので、そこの活動を強化したいですね。

 また、目に見えていない部分の動向としては、今Mix CDや DJ Mixがものすごく増えていますが、それらを作ったDJやRemixerはアーティストなのか演奏家なのかという位置づけも曖昧だったんですね。それをFDJとしては音制連を通して単なる演奏家ではなく、彼らはアーティストだというところを主張して、それをCPRAの解釈としては我々の主張に足並みを揃えて統一していこうと動きにはなってきているので、Mix CDを作った場合でもMix CDに入っている楽曲だけに分配されるんじゃなくて、それをコンパイルしたDJ、RemixerもFeatured Artistという言い方なんですが、ちゃんと認識される方向になりつつあるという段階です。それは権利者(DJやRemixer)の側では多分明確にはわからなかった部分だと思うんですが、そういうところもこれからきちんとやっていくつもりです。

——それは個人個人で主張してもどうにもならないでしょうし、意義のあることですね。

浅川:そうですね。非常に意義のあることだと思います。あとはやはりクラブ系アーティストやDJ、Remixをやるクリエイターの地位向上ですね。

石原: DJの地位というのもようやく世間一般的に認められてきたところではあると思うんですが、未だに職業分類表には「DJ」という職種は載っていないんですよ。日本のトップクラスのDJで年収1千万単位を稼ぐ人もいますし、世界を見れば1ギグで五百万というスーパースターも存在しているにも関わらず職業分類表には載っていない。つまり一般的に認知されていても認証されていないということなのかなと思うんです。それはもちろんDJ側の意識の問題もあるし、風俗営業法の問題もあるとは思いますが、FDJがそういった部分に対してもアプローチできたらなと思いますね。

——現実に約1年が経過してどれくらいの賛同が得られたのでしょうか?

後藤:2007年当時にあがってきた未分配者リストの7〜8割というところです。まだ説明段階というところもあるのと、やはり委任する上で公的な部分もありますから手続きが割と面倒だったりもしますので、そういうところでは苦戦していますが、大きいところに関してはほぼ説明は出来たかなと思います。もちろん、今もどんどん新しいアーティストやプロダクションが生まれていますし、このジャンルは個人プロダクションみないなかたちも多いですから、今後も説明を続けていく必要があると思います。

——その説明役はどなたがやられているのでしょうか?

後藤:もちろん音制連とあとは僕らFDJの理事の人間から声かけしています。

 

——次に風営法への取り組みについても伺いたいのですが。

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石原:渋谷だけを見れば下手したらカラオケよりもクラブ、ライブハウスのほうが多いんじゃないかと思うくらいですが、そういう状況であるにも関わらず、本音と建て前という非常に日本的な部分がまだあるので、この現状は何年かかっても変えていかないと駄目だと思っています。

 私はあちこちのクラブを使ってパーティーをやっていていろいろなネットワークがありましたので、これまでにもみんなを集めて例えば風俗営業法はどんなものか、深夜飲食とはどういうことかというのを行政書士の先生を呼んで勉強会をやったりしていたんですが、クラブだけの集まりに活動自体の行き詰まりを感じていたんです。あとはコスト的な問題もあります。やはり専任がいて、協会みたいなものを成り立たせる為には基本的にはクラブから毎月1万円なり2万円なりのお金をとって一般的な協会と同じ仕組みを作っていかなければいけないんですが、クラブによっては変わるか変わらないかわからない法律のことよりも、今週末の営業が心配だというところが非常に多いわけですね。そういった資金的な問題も含めてなかなか先に進まなかったんですが、そのときに浅川さんや後藤さんが声をかけてくれました。

——FDJとして一緒にやっていこうと。

石原:そうですね。FDJという組織を通じてネットワークをしっかり作り、ゆくゆくは法改正に向けたアプローチが出来ればいいんじゃないかと。

——風営法の改正というのはなかなか難しいんでしょうか?

石原:風営法というのは戦後すぐに作られた法律で、やはり今の世の中に合ってないんですが、改正となると大変難しいですね。FDJとしてはまだ1年ちょっとですから権利の分配などメリットがあるところが中心となっていて、クラブにとっての直接のメリットは今は見えない状況です。そのため実際クラブにはまだしっかりと声をかけていないんですね。

 世間的にはクラブに対してあまりいいイメージがないようですし、政治家もちゃんとした理由がないと動きませんし、世論はもっと動かないですからね。私のイメージですと携帯で署名を集めても百万単位の数が集まらないと、この日本では本当に法律が変わるということがないと思うんですよね。ですから、しばらくはFDJを通じてベクトルが見え易いチームと一緒に組んで、法改正に向けた活動の輪をさらに広げていくといった作業になるんじゃないかと思います。法律を変えようという話ですから、やはり時間がかかります。でも、ゆくゆくは変わっていかないとおかしいと思っていますし、私は変わると信じています。

——FDJとして現在の問題点といいますか、困っているところはありますか?

後藤:このジャンルは徒党を組みたがらないと言いますか、個人主義な人たちが多いですから、それぞれの固有の考えを尊重しつつも、いざとなったときには一丸となることが今後必要になってくると思います。現段階でFDJは会員制の形をとっていませんが、やはり今後きちっと運営していくためにはそういう方法をとっていかざるを得ないですし、その場合には賛同してくれる人たちにしっかり集まってほしいと思っていますので、会員制をどう確立していくかが大きな課題と考えています。

——最後にFDJとして今後の展望をお聞かせ下さい。

浅川:現在のポップスも含めた日本の音楽は「Cool Japan」という捉えられ方でヨーロッパやアメリカで広がっていますし、日本から発信する音楽としてダンスミュージックは一番世界に近いと思うんですよ。ダンスミュージックって今はもう国境がないですし、日本から世界に出て行くのにダンスミュージックは一番近道だと思っています。そういう意味でもFDJがDJやアーティストたちに対して色々なフォローや後押しが出来ればいいなと思っています。今回のアカデミー賞じゃないですが、日本がどんどん注目されている中で音楽もいつでも火が着きそうな状態にあると思いますので、FDJとしてもそういった場面をどんどん作っていけたらと考えています。

——3月7日にFDJのKICK OFF PARTYを開催されるそうですが、これはFDJのお披露目と団体加入の呼びかけでもあるんでしょうか?

浅川:KICK OFF PARTYに関してはあまり堅く捉えてはいなくて、「みんなで集まってちょっと情報交換しましょう」というようなイベントですね。我々のもっているノウハウと出演者も含めてまずは1回パーティーをやって、実際に顔も見えてもちろんお酒も飲めて楽しむ場でもあるし、そこからまた呼びかけや新たな交流が生まれればいいなと考えています。FDJを通じて一年半いろいろと声をかけてきた流れの中で、この日をKICK OFFというかたちにしようと。

——こういったパーティーは定期的に開催される予定ですか?

浅川: そうですね。定期的にやって色々な方々と交流できたらいいですね。

 

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the Federation of Dancemusic Japan PRESENTS
FDJ Vol.1

2009.03.07[sat] 22:00 OPEN
@ MADO LOUNGE
DOOR 3,500yen、MADO MEMBER 3,000yen
FDJ WEB DISCOUNT 2,500yen

[FLOOR 1]
DJ KAORI
DJ JIN
DJ MASTERKEY
MURO
DJ TOSHIYA
VJ : SECRET DESIGN

[FLOOR 2]
Genki Rockets
森田 昌典(STUDIO APARTMENT)
SUGIURUMN
栗原 暁(Jazzin’park)
VJ : WADAKEN

MADO LOUNGE
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ 森タワー52F
tel : 03-3470-0052
web : www.ma-do.jp 

-2009.3.4 掲載

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