TENSONG
2020年4月に大学の同級生同士で結成された、たか坊(Vo)と拓まん(Gt)からなる音楽ユニット・TENSONG。過渡期と位置付けた2025年を乗り越えた彼らは、2026年2月にリリースした新曲「これからの話をしよう」を引っ提げ、5月より全国17箇所を巡る全国ツアーを開催する。占い師にChatGPT、どストレートに”売れたい”と言ってのけるTENSONGの、音楽と未来へ向けた真摯な想いに耳を傾けよう。
――TENSONGは昨年からたか坊さん、拓まんさんの2人体制になりましたが、現体制でこの1年活動してみていかがですか?
たか坊:2人で話す時間がすごく長かった1年だったと思います。特に、僕は拓まんにすごく支えられて2025年を過ごしたなと思っていて。それこそ個人的な悩みとか音楽に対する姿勢で迷いが生じたりして、ちょっと落ち込むタイミングもあったんですけど、拓まんがずっと「とにかく前に進むしかない」っていうマインドで、僕を背中におぶって進んでくれた感じもあったので、2025年は何とか乗り切った感がすごくあったんですよね。
――その「個人的な悩みとか音楽に対する姿勢で迷い」というのは?
たか坊:「自分は何のために歌っているのか」っていう、根本の部分ですね。2025年10月ぐらいのことなんですけど。
――かなり最近のことだったんですね。
たか坊:そうなんです。それまでは表向き、なんとかがむしゃらにやっていっていい形にしようみたいな思いでいたんですけど、やればやるほど悩みの溝がどんどん深くなっていくばかりで。そこでのストレスがドンと爆発したタイミングが、ちょうど昨年の10月ぐらいで、それを拓まんに相談したら、「お前が好きなようにやれ。俺はそれについていく」と言ってくれた。そこからはストレスフリーでやれています。
拓まん:側から見ていると、たか坊がそこまで悩んでいるようには感じなかったんですよ。ちょうどメンバー(アルフィ)が脱退して10ヶ月経っていて、僕的には前進しまくっているつもりだったから、「そんなこと言ってる場合じゃないぞ」っていう感覚だったし、「お前が俺をTENSONGに誘ったのに、それをお前が言い出すんや」という思いもあったから、「悩む前に好きなようにやれよ」と。
たか坊:もともとは5年前に3人で音楽活動を始めて、事務所の社長が自分たちをお世話してくれることになり、その4人でずっと続けてきたつもりだったから、僕はその形を崩したくなかったっていうのも正直あったんですよね。だから、2人になってからの10ヶ月間は現実を見ないようにしていたところもあったんですけど、やっぱり心に穴が空いている感覚もあったし、それを払拭するためにがむしゃらに前進した結果、どの方向に行けばいいかわからなくなった自分がいて。そういうことも含めて、「自分は今、何を歌いたいんだろうか」とかそういうことを考えた時期でもありました。
――結成当初からのメンバーが脱退したことは間違いなくトリガーになったとは思うけど、それ以上に活動を5年続けてきたことで一度初心を思い返すタイミングでもあったのかもしれないですよね。
たか坊:節目といえば節目でしたものね。こんなことあまり言っちゃいけないのかもしれないけど……僕、楽曲制作や音楽を聴くことが好きかどうかって言われたら、別にそこまで好きってわけじゃないんですよ。誰か特定のアーティストとか、いろんな人の曲を聴くことも特にないし。それよりも、ただ歌を歌うことが好きであって、「音楽制作でこういうことをやりたい」とか「0から1を作りたい」っていう感覚もないんですよね。だから、自分が歌詞を作っている理由も……もちろん、共感を呼んでたくさんの人に届いてほしいという気持ちもありますけど、一番は自分自身を助けることなんです。そういう歌詞を歌うことで、いろんなしがらみから解放されてきたのに、それ自体もだんだんとストレスになり始めてしまった。だけど、自分は歌うことが好きなんだということを再認識できてからは、「そのためには何をすればいいのか」について拓まんや社長に相談するようになりました。
――10ヶ月の間に溜め込んでしまった膿を出し切れたと。
たか坊:いや、出し切れたとは思っていなくて。ただ、考え方が楽になって少しだけ解放されたというか、「楽しければやりたいし、楽しくなかったらやりたくない」と物事をはっきりさせることができるようになった感覚ですね
――では、昨年10月に迎えた転機以降の約半年間は、それ以前とは違う?
たか坊:全然違いますね。それこそ、これまで一緒に制作をしてきたプロデューサーからも離れて、自分たちのやりたいことを全部自分たちで決めるようになりましたし。それは曲作りもそうだし、アレンジャーを誰にするのかも……2月に配信した「これからの話をしよう」も自分たちの知り合いのたいせー(Taisei Toda)さんにお願いして、いろいろ試行錯誤しながら一緒に作ったんですよ。あと、MV制作においての絵コンテも僕が書いたり、ライブで披露する際にはこういうことをやりたいとか自主的にアイデアを出したりすることが、かなり増えました。
たか坊(Vo)
――「これからの話をしよう」のクレジットを確認したらSTAFF陣の体制が変わっていて、気になっていたんですよ。
たか坊:たいせーさんは初期の「存在」とか「昇進者」「纏」あたりもアレンジしてくれていた、僕たちのちょっと上の先輩なんですけど、今回は僕から「ここはこうしてくれ、ああしてくれ」と今まで以上にお願いした記憶があります。
――では、その「これからの話をしよう」についてじっくりお話を聞かせてください。これは本当に、TENSONGの過去の楽曲から頭ひとつ飛び抜けた感がある1曲だなと思いました。
たか坊:一番嬉しいお言葉をもらえましたね。
拓まん:本当ですか?
――はい。なので、なぜこのタイミングにこういう曲が生まれたのかが、インタビュー前からすごく気になっていたんです。その中でアレンジャーの変更だったり、MVのプランニングにもTENSONGとクレジットされていたりと、いろいろと変化をが散見されまして。でも、ここまでのお話を聞いてその理由がわかりました。この曲には「メンバーの実体験から生まれた、等身大の物語。」というキャッチコピーが用意されていますが、その意図含めて「これからの話をしよう」がどのような過程を経て生まれたか、教えていただけますか?
たか坊:まず最初に、拓まんがこの曲のトラック持ってきたんですよ。それはまだ2025年10月よりも前のことで、僕もめっちゃ悩んでいて曲が全然作れない状況で。ちょうど拓まんも「これから自主的にいろいろやろう」と彼なりに考えて、DJの役割を自分が担おうとしてトラックを作るようになったタイミングだったんです。
拓まん:DJが辞めた時点で「どちらがトラックを作るのか」という問題とぶち当たるわけじゃないですか。でも、最低限レベルの音楽理論は僕のほうがわかっているし、結局僕が作るしかないわけで。それで、5月ぐらいから自分でも作り始めて、たか坊に合う曲ということでアッパーやミドル系、バラードとかいろいろトラックを作ってみたわけです。
たか坊:そのトラックのひとつを僕に送ってくれて、「これで曲を作ってみたら」と提案してくれて。僕も今自分がぶち当たっている壁や悩みについて書いてみようと思ったんですけど、なかなか言葉が出てこない。それで、拓まんといろいろ話していくうちに、自分の原点を見つめ直すと同時に「これからの話をしよう」というキーワードが浮かび上がって。それをきっかけに、原点を振り返りながら未来について歌おうと思うことができたんです。僕は小さい頃に母親を亡くしているんですけど、親父と2人きりの生活になってからはよく温泉に行って、「これからどうする?」っていう話をずっとしていたんです。で、それも「自分の原点を振り返りつつ未来について語る」というテーマにぴったりだなと思って、歌詞に反映してみようと思いました。
拓まん(Gt)
――テーマが固まってからは、歌詞が完成するまで早かった?
たか坊:最初に1番だけ作った時点ではまだ中途半端な感じだったんですけど、そこから僕と拓まんのこれから、僕と社長のこれからについてしっかり考えるようになって、気づいたら100%完成していました。あと、この曲を作れたおかげで、自分たちが今後やりたいことのビジョンがしっかり見えた気がしたのはすごく大きくて。これまではその場その場で「これがあるなら、これでいい」みたいな感覚でやってきたんですけど、ちゃんと「これがあるから、こうやりたい」みたいな未来の設計図にまで意識を向けられるようになった。そういう意味でも、「これからの話をしよう」を自分たちの手で完成させられたことはすごく大きかったと思います。だからこそ、売れてほしいですね、切実に(笑)。
――正直でいいと思いますよ(笑)。このトラックにはストリングスを取り入れていますが、これは生のストリングス?
拓まん:そうです。これはアレンジャーさんのわがままで半ば実現したところもあって(笑)。
たか坊:最初は打ち込みで入れていたんですけど、アレンジャーが「これは生(のストリングス)じゃないとダメだ」と言って。
拓まん:で、社長と相談して、最終的にGOサインが出ました。そこに関しても今回は自分たちが積極的に関わっていたので、改めて周りの人たちに対する感謝の気持ちが強くなって。それは、生のストリングスをOKしてくれた社長に対してはもちろん、熱意を持ってアレンジに取り組んでくれたたいせーさん、ミックスしてくれてたエンジニアさんとか……特にミックスエンジニアさんは、ミックスチェックのときにすごく緊張されていたんですよ。僕はミックスチェックに立ち会うこと自体が今回始めてで、いろんなアイデアを出しながらミックスを進めていく姿に「この人も命を削って、この曲に賭けてくれているんだ」ということが伝わって。
TENSONG
――なるほど。
拓まん:それこそ、MVの打ち合わせにも今回から参加したんですけど、監督がすごく熱を持ってプレゼンしてくださっていて。その真剣さがストレートに伝わりましたし、そんな思いに自分たちも真剣に応えなくちゃいけないなと気づけただけでも、2025年は自分たちにとって大きな1年だったと思います。
たか坊:そうだね。なので、僕に関しては人と“当たる”ことが増えたかもしれない(笑)。もちろん悪い意味ではなくて、相手が僕たちのことをめちゃくちゃ深く考えてくれていることが伝わるからこそ。ストリングスのレコーディングにも立ち会ったんですけど、芸大卒のバイオリニストを前にしたらちょっと日和ってしまう自分もいて(笑)。それでも、自分の中にあるイメージはちゃんとあるわけで、そこから外れていたらしっかり伝えないといけない。そうしたら皆さんすごく大人で、ちゃんと「わかりました」と受け入れてくださるんですよ。真摯にぶつかっていけば相手も真剣に向き合ってくれるし、その切磋琢磨している感じがすごく充実していたなって、改めて感じました。
――ギターに関しても伺いたいのですが、2番の終わりからラストサビにかけてのギターソロ、めちゃくちゃよかったです。
拓まん:おお、嬉しい!
たか坊:これ、アレンジャーの家で、ギターをライン録りしたんですけど、アレンジャーから「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」と指摘されながら、拓まんが悩みに悩んで。その中で「これ、面白いじゃん!」「これもアリかな?」とかいろんなやりとりを経て、6時間ぐらい弾いていたよね。
拓まん:ギターだけでね。
たか坊:ワンフレーズのためだけに1時間使って考えてるみたいなこともたくさんありましたね。
拓まん:もともと、ギターソロは1ヶ所しか入れる予定がなかったんですよ。2番のサビ終わりはストリングスソロみたいなことをやって、最後のサビが終わったところでギターソロがいいんじゃないかかって話だったんですけど、「いやいや、両方やろうよ」ということになって。最初のほうのギターソロに関しては、今までの自分が経験してきたことを表現しようと思って、自分でフレーズを考えたんですよ。で、最後のサビはこれからのこと……ギタリストとしてのこれからを示したくて、即興で弾いて。それに対して「こうしたらいいんじゃない?」と、アレンジャーやたか坊から意見をもらって、自分の中に取り込んでまた弾くという感覚でしたね。
たか坊(Vo)
――前半と後半でプレイの質感がことなりましたものね。前半のソロはメロディメイカーとして曲の流れに合わせてしっかり作り込んだ感が伝わるけど、後半のほうは完全にギタリストが本能的に弾いている感が強くて。
拓まん:僕は普段からメロディを作ることが好きなので、それが強く打ち出されたのが前半で。逆に、ギタリストっぽいフレーズというものを自分の中で今まで意識したことがなかったので、それを今回解放してみたのが後半。なので、まさにおっしゃっていただいたとおりなんですよ。
――MVもすごく素敵なストーリーで、胸に沁みました。昨年8月に配信された「わたしは私」のMV同様、今回もメンバーが出演しないドラマ仕立てとなっていますが、今作に関しては2人の考えがしっかり反映された内容になっているわけですよね。
たか坊:そうです。MV自体に携わることが初めてで、何を勘違いしたのか、僕が絵コンテまでガチガチに固めて打ち合わせに臨んだんですよ。そうしたら監督さんに「僕、もうすることがないじゃないですか」と言われてしまって(笑)。
――(笑)。
たか坊:「ここまで来たんなら、もうこれでいきましょう。あとはちょっとだけ、こちらで修正します」と気を遣ってくださって……本当に申し訳なかったです(苦笑)。なので、僕がイメージした世界観を現実的に成立するようにと座組を組んでくれたのは、全部監督さんのおかげなんですよ。
拓まん:さすがに絵コンテを見たときは「アホやなあ……」と思いましたけどね(笑)。でも、「こんな感じで行くから」と見せられたものが、たか坊の実体験というか、彼の人生そのものだったので、これが表現者ということなんだなと感じて。ちょっと話題が外れますけど、歌詞に関しても最初は「もっとわかりやすい表現のほうがいいんじゃないか?」とか「こういう言葉に変えたほうがいいんじゃないか?」とアドバイスしたものの、彼は「いや、俺はこうしたいけん。これでいかせてくれ」と言っていたので、曲作りにおいてもMV制作においても今回の「これからの話をしよう」においてはたか坊の思っている通りにやることが一番なんだろうなとは感じていました。
たか坊:最終的には監督さんが親身になって協力してくれたおかげで完成できたものなので、そこにも感謝ですね。
拓まん(Gt)
――この自信作を携えて、5月16日からは新たな全国ツアー『これからの話をしよう』も始まります。現体制になってから二度目のツアーとなりますが、昨年とはまた違ったものが見せられそうですか?
たか坊:去年のツアーの頃は……今振り返ると、ステージ上の自分とライブ以外の自分とがだいぶ乖離していたような気がして。ステージに立つ自分は何ひとつ偽りなく歌うことができるんだけど、いざステージを降りるとイエスマンになってしまっていたというか、そこに偽りを感じる瞬間もあったんです。でも、ステージ以外で嘘偽りがないほうが、ステージで吐く言葉の一つひとつがよりリアルになると思うんですよ。そこを認識できた今だからこそ、今回のツアーでは昨年とは違った自分を見せられるのかなと思っています。
拓まん:去年の自分たちは「とにかく前に進むぞ」ってことだけを考えていたけど、今はアーティストとして自分をどう表現するのかにも意識が向くようになった。『これからの話をしよう』というタイトルを掲げたツアーですし、昨年以上に皆さんに伝えられるものがたくさんあると思います。
たか坊:それこそ、ライブの流れ自体も『わたしは私』ツアーのときとはまったく違うものになると思いますし。
拓まん:ある意味、何も考えていなかった時期だから、ライブの構成自体も「ここでアッパーの曲が来て、ここにバラードを入れたらちょうどいい流れになるかな」と深みのないものだったし。まあ、初めて2人で回るツアーだったし、あれはあれで楽しかったんですけどね。ただ、今はもっと違った表現ができるはずだと思うので、そこも含めて期待していてほしいです。
――過渡期の2025年を経験したからこそ、2026年は真の意味での仕切り直しになりそうですね。
たか坊:実は、占いでも「2026年は次に向けた準備期間」と言われたんですよ。
拓まん:高額占い師の、あれ?
たか坊:そう、1万5000円払って。で、そのあとにChatGPTに同じことを聞いたら、おんなじ答えが返ってきたんです。じゃあ占いに行かなくてもよかったんじゃね?っていう(笑)。まあ、ダメ押しでそういう答えが出たと考えれば、今年はじっくり腰を据えて次に向けた準備をしなくちゃなと思っています。
――これでインタビューは終わりになりますが、何か言い残したことはないですか?
たか坊:……売れたいです。よろしくお願いします。
拓まん:このまま書いてください(笑)。
たか坊:この「売れたい」は下品な意味ではなくて、もっとたくさんの人にTENSONGの曲を知ってほしいという思いから出てきた言葉であって。そのためには売れたいですし、たくさんの人の前でライブがしたい。とにかく、今まで以上にいろんなところに向けて、僕の声、僕らの音が届けばいいなと思っています。
取材・文=西廣智一 撮影=大塚秀美
TENSONG『これからの話をしよう』【Official Music Video】

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