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自分たち世代のグルーヴと価値観を生み出す、TiDEとやさしいみらいのツーマンライブ『宇宙の泳ぎ方』ライブレポート

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TiDE×やさしいみらい

TiDE×やさしいみらい

TiDE×やさしいみらい ツーマンライブ「宇宙の泳ぎ方」
2026.3.11 表参道WALL&WALL

TiDEとやさしいみらいがツーマンライブ『宇宙の泳ぎ方』を3月11日に表参道WALL&WALLで開催した。ソウルやヒップホップ、ファンク、ロックなどをユース世代の解釈で今のポップとして鳴らす2組。昨年、やさしいみらいがEP『space』のリリースイベントとして『New Action!』と共同開催したオムニバスイベントなどを通じて意気投合したTiDEとのツーマンは、バンド同士はもちろん、感度の高いリスナーにとっても嬉しい機会だったようで、平日の夜を日常と地続きの祝祭のスペースに塗り替えた。

TiDE

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先攻のTiDEは昨年初の自主企画ライブで一面的ではないグルーヴに感銘を受けたのだが、この日は同世代バンドである“やさみ”(やさしいみらいを界隈はこう呼ぶようだ)との対バンで、どこかブラザーフッドというかラフな側面も見せてくれた。「Day Trip」のサビ《興味無いかい》がリフレインするSEとともにサポートキーボーディストを加えた5人編成で登場し、そのまま「Day Trip」でスタート。演奏と同時にクラップが起きる曲の浸透ぶりだ。小宮紹滉(Ba)のシンセサウンドっぽいベースソロのエンディングが初っ端から喝采をさらい、すかさず井上大悟(Vo,Gt)のギターとフェイクで始まる「WAXING」へ。本当にこの人のボーカルは、鼻歌ぐらいの温度感なのにまっすぐこちらに届く。もちろんバンドアンサンブルに余白があるからなのだが、孤独の自由を感じさせるAメロの歌詞がしっかり聴こえることで、曲全体の説得力を上げる効果に意識的なんだと思う。オルガンが効果を上げる「nostalgia」は図太いベースサウンドをはじめ、ファンクアレンジがライブで映える。井上のバンカラな味わいの歌とロックギタリスト然としたしょにー(Gt)の相性もいい。

TiDE

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さらに胸のすくような展開を聴かせる「やさぐれ」。ジャジーなノートのコーラスが効果的で、それだけでなくラップパートや、しょにーの歌にボコーダーをかませたセクションなど、声の変化も楽しめる1曲だ。しかも壮大なスケールのSEが映画的な広がりも。そこから逆回転のSEで「Airo」に繋ぐ構成も見事。小島祥平(Dr)の手数・足数の多いフレーズが演奏に強い印象をつける。ちなみにメンバーの中でも外交的な小島。彼がやさみのラッパーである夢句のセッションに参加したことも二組の繋がりをさらに強化した模様だ。そこから、対バンのお楽しみタイムであるカバーが展開。フロアのリアクションはその曲が「Johnny」と聞くとさらに盛り上がる。井上はボーカルとラップの一人二役で、流石にラップは苦戦。「やっぱ夢句すごいわ。ラップムズい!」と、途中でなぜか「Sunday Morning」(マルーン5)に変貌。そしてタイトルの《Johnny》の掛け声が起こるのは両バンドのファンの多さを物語る。しょにーが「人生で最高に名前呼ばれました」と満足げだったが、選曲はもしや彼…?

TiDE

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次回ライブや新曲の紹介をしたあと、当該の新曲「色めき」を披露してくれたのだが、パッと視界が開ける明るいトーンが景色を変える。スタイル・カウンシルから渋谷系までを想起したが、小宮のローが効いたベースが今のダンスミュージックに音像を更新。自立していく痛みを《そして泣く、そして泣くんだ》や《意味をなす、意味をなすんだ》と自分に言い聞かせる歌詞が肯定していくニュアンスが、新しいシーズンソングとして聴かれるといいなと思う。続く「Rise」で都会的な色を加え夜に戻ってきた体感を得る。さらに真っ赤なライティングが夜明けというか灼熱を思わせる「Dawn」。シンセのピッチベンドが映えるライブアレンジに聴き入っていると、やさみの夢句(Rap)が登場。TiDEとの関係やこのツーマンの意味も盛り込んだラップをぶちかまして、意気揚々とステージを後にした。夢句の即興性に拍手喝采の中、井上が「夢句も一緒にやればよかった」と本音をこぼしながら、「祝祭」冒頭のロングトーンをぶちかまして、TiDEの本領を発揮。サビで思いっきりラテンのリズムに変化するこの曲では自然とフロアから手が上がり、シンガロングも起きる。どこまでも音楽への反応で増していく場の熱量がオーディエンスにとっても心地いいのだろう。加えて、夢句が揺さぶりをかけてTiDEのカジュアルな側面も引き出された印象を受けた。

TiDE

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やさしいみらい

やさしいみらい

後攻のやさしいみらいはサウンドチェックからそのままオンステージでライブをスタート。いきなりサポートのサックスが空気を作る浮遊感たっぷりな「遊泳」が流れ出すのだが、目につくのはラップの夢句とボーカル&ギターの松本レンの2トップだ。やんちゃな彼らといかにもしっかり演奏を支える印象の松本カイ(Ba)、小泉至(Dr)、サポートギターの対照的な佇まいも面白い。言葉を刻みつけていく夢句と、少年性を湛えたレンのボーカルがあることで、一面的じゃない心象を描けるのもやさみの強みだと感じた。タイトなビートを刻む小泉とナツナ(Key)のシンセセリフが推進する「ODOLIEN」。この曲でも、現実を見つめつつ今ここで踊ることの意味をラップで綴りつつ、サビでは“踊る+エイリアン”を意味するようなodolien(オドリアン)をふんわりした声でリフレインする二面性が曲の構造にハマっている。2トップの予定不調和なアクションからも目が離せない。アウトロから大人っぽいピアノリフで、続く「blackout」に繋ぐのだが、ナツナの鍵盤の音色選びのセンスとプレイもかなりのレンジの広さだ。ちなみに彼女はTiDEのライブサポートも行ったことがあり、そのアンサンブルも理解しているメンバーと言えるだろう。カイのプレイも緩急が効いていて、ピアノリフが弾みをもたらすこの曲の後半に4ビートのフレーズをサラッと弾いて、グッと曲の印象を強くした。登場した時はクラスの仲良しバンドのように見えていたのが、3曲で『Tiny Desk Concert』に出てる辣腕バンドに見えてきた。

やさしいみらい

やさしいみらい

やさしいみらい

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MCでは夢句がTiDEとは接点を持ってから半年ぐらい仲間としてやってきたが、両バンドで「もっとデカい場所の景色が見たいです!」と、ストレートに意気込みを話す。その熱量を脱臼させるようにレンがアコギリフを弾き続け、「これ1時間やるよ」ととぼけてみせる、そのバランスもやさみの魅力。真面目な雰囲気に傾きそうになると自然に崩す。元々レンと夢句の2人のDTMユニットとして始まった友だち同士の嘘のなさがやさみの基本トーンにある気がする。それにしてもレンの力みのない、スウィートですらある自然体のボーカルは質感こそ全然違うものの、TiDEの井上然り、その人のパーソナリティを映し出す声の表現としては近いのかもしれない。今の音楽はテクスチャー重視で聴かれるというけれど、心地よい声をライブでも実感できるアンサンブルは両バンドに共通するものだ。なんてことをロマンチックな歌メロを聴きながら思っていると、このツーマンをレペゼンするアドリブも交えて、夢句のラップが切り込んでくる。

やさしいみらい

やさしいみらい

やさしいみらい

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「さっきTiDEが「Johnny」やってくれたんで」とレンが言うだけで、返礼を察したフロアから歓声が上がり、アコギの弾き語りでTiDEの「沬先 (misaki)」のカバーが始まる。ボーカリストが違うとこんなに空気の柔らかさが変わるんだ?と、驚きつつ、さらにサックスが入ることでやさみのバンドアレンジを堪能させ、ラップの即応力もカバーだからこそより際立った。中盤も過ぎたタイミングでレンがフロアを見て「いっぱいいる!」と満面の笑顔なのもナイスキャラなのだが、ここから彼の本領発揮。「回鍋肉」の前説は面白くて勉強になる(!?)もので、「陳建民の発明は少しの嘘が不思議な料理を生みました」(本場中国のそれを日本向けにローカライズしたという意味)というMCから、JBスタイルのファンクに突入していくエンタメ性ったらない。ベタだが、“ホイ!”“コー!”“ロー!”のコールアンドレスポンスも楽しい。が、ライブが大きなピークを迎えた後に「ステージが高くて怖い」と話すフロント2人の温度感。いい意味で仲が良くてどんな世代より冴えている小学生2人組がそのまま大人になったような痛快さだ。

やさしいみらい

やさしいみらい

やさしいみらい

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ポップなファンキーソウル「知らないあの子」で明るくフロアを弾ませた後、本編ラストは太いベースラインが生音ヒップホップを底上げする「少林」で、ラップと歌が自然と接続する構成に自然とこちらも乗せられていく。おかしかったのが、曲の最中にレンが「ここでジャンプするから、一番高いところを写真で押さえた人が勝ち!」と、スマホのカメラを向ける人にも勝負(?)を挑んだこと。自分が楽しい方向へ勝手にアイデアが出てくるんだろう。辣腕の演奏隊が熱を帯びたプレイで強力なグルーヴを生み出してエンディングを迎えた。

アンコールに応えたやさみは予定になかった「serotonin」を「みんな幸せになりたいと思うから」と言う理由でドロップ。《life is a moment…》と歌う感性が実はやさみの根底にあるのかなと思う瞬間だった。だが、夢句が「こんな湿っぽい終わり方嫌だからTiDE呼んでいいですか?」と、4人を招き入れ、「うちにもTiDEの「祝祭」みたいな曲あるんです」と、なんと11人編成で「Ready」を演奏。井上がボーカルで参加し、小島がボンゴを叩くなどステージ上は祭りの大団円状態に。さらにベースとギターをTiDEメンバーに交代したりしてお互いの曲へのリスペクトを存分に表明してくれた。平日の夜、しかも週の半ばにこのテンションは確実に栄養になる。やさみのEP由来のイベント名だが、自分のスタイルで宇宙はちょっとスケールが大きいけれど、毎日を泳いで行こう、行けるんじゃないかと思わせてくれるツーマンだった。

取材・文=石角友香
撮影=TiDE:河上陽香、やさしいみらい:松本樹

 

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