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Newspeakとファンの強い絆を感じた『Glass Door Tour』ファイナル――「心の底から書いた曲を心の底から愛してくれる人がいるかぎり音楽をやり続けます」

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Newspeak

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Newspeak presents “Glass Door Tour”
2025.11.4 SHIBUYA CLUB QUATTRO

「こういう時こそ楽しくワンマンやりましょう!」

スタンディングのフロアを存分に揺らしながら、序盤戦を終えたところで、Yohey(Ba, Cho)が言ったこの言葉がこの日のライブの空気を見事に言い表していたと思う。

8月31日にリリースしたメジャー2nd EP『Glass Door』をひっさげ、東名阪を回った『Glass Door Tour』のファイナルとなる11月4日の東京・渋谷CLUB QUATTRO公演。対バンする予定だったGLIM SPANKYがメンバーの体調不良のため出演できなくなり、急遽、Newspeakのワンマンライブとして開催されたことはすでに伝えられているとおり。サポートギタリストのTakeを含む4人は、ある意味ピンチとも言える状況をフル尺でライブができるチャンスと考え、いつも以上に観客と交歓を楽しみながら熱演を繰り広げ、結果的にNewspeakのライブに足を運べば、こういう一体感を味わえるということを改めて示してみせたのだった。

Rei(Vo, Key, Gt)

Rei(Vo, Key, Gt)

「こういう日に集まってくれる人は本当に愛でしかない」

本編の最後を飾ったNewspeakの新たなアンセム「Glass Door」を演奏する前にRei(Vo, Key, Gt)は観客に対する感謝を言葉にした。ツーマンが急遽ワンマンになるという状況を共に楽しんでくれるファンの存在を目の当たりにできたことは、これからのバンド活動のよりどころになるんじゃないかと、今、ライブを振り返りながら、3曲目に演奏したファンキーな「Alcatraz」の中盤、フロアに向けたマイクに応え、シンガロングした観客の声を聞いた瞬間のReiの破顔が本当にいい表情だったことを思い出している。

あそこで緊張も含め、この日ライブに臨むにあたって、メンバーたちの胸中にあったいろいろなものがふっきれたのかもしれない。

Yohey(Ba, Cho)

Yohey(Ba, Cho)

Reiがエレキギターをジャキジャキと鳴らしたガレージロックナンバー「Generation of Superstition」でフロアの温度をぐっと上げると、EP『Glass Door』収録の「Lifedance」から「Wide Bright Eyes」、そして「What We Wanted」とダンサブルかつファンキーなロックナンバーをたたみかけるように繋げ、フロアを揺らしていく。「Lifedance」はTakeからYohey、そしてSteven(Dr, Cho)に繋げた熱度満点のインタープレイも聴きどころだった。

「(シンガロングを求め)もっとイケるでしょ! カモン!」
「シブヤ、レッツゴー!」

それぞれに観客を煽るReiとStevenの言葉にも自然と力が入る。Yoheyのステージアクションもいつも以上にダイナミックだ。

「最高でしょ!」(Rei)
「調子いいですよ!」(Steven)
「バリバリ最高ですね!」(Yohey)

早くも大きな手応えを感じていることを、3人は異口同音に言葉にする。

Steven(Dr, Cho)

Steven(Dr, Cho)

そして、「ツアーファイナル全力でやります!」とさらなる意気込みをReiが語ってから、バンドはフロアを揺らした序盤戦から一転、今度はReiが胴鳴りするアコースティックギターを弾きながらじっくりと聴かせる曲の数々を披露していく。

Takeが鳴らしたサーフトーンのギターから始まる『Glass Door』収録の「Coastline」はメロウな歌もさることながら、ゆったりした曲調にStevenのドラムが加えるダンスグルーヴも聴き逃せない。胸を焦がすメロディーをグルーヴィーなバンドサウンドに落とし込んだ「Before It’s Too Late」はサビの直前でYoheyが奏でる印象的なパッセージが1番のみというところが心憎い。そして、「お気に入りのウインターソング」とReiが曲を紹介した王道のバラード「Ocean Wind & Violet Waves」は、YoheyとStevenが加えるハーモニーに加え、Takeがチョーキングでフレーズを泣かせたリードギターが荘厳なムードを演出する。そんな3曲が観客を釘付けにしてきた中盤を締めくくったのは、渾身のバラード「Be Nothing」だ。

「「Be Nothing」は誰かのために作ったわけじゃないというか、言っちゃえば、俺ともう一人の人のために作ったんだけど、そういう曲が伝染して、みんなの大切な曲にどんどんなっていっているのがうれしい。『BULLET/BULLET』というアニメにエンディングテーマとして「Glass Door」を書き下ろしたじゃない? その監督が「Be Nothing」のことを最高だって言ってくれて。俺らがバンドとして行きたいところってまだまだ遠いところにあって、どうしても思い通りにいかないこともあるけど、そんなふうに心の底から書いた曲を心の底から愛してくれる人がいるかぎり音楽をやり続けます」(Rei)

そんな思い入れを語ってから演奏した「Be Nothing」。ピアノの弾き語りと思わせ、Takeがカキーンと鋭い音で鳴らしたヘッドピーンを合図にバンドイン。バラードにもかかわらず、白熱する演奏も含め、なぜ、こんなにもエモーショナルなのか。「Glass Door」を演奏する直前のReiのMCを聞いたら、無になりたいと歌った彼の境地が理解できるんじゃないかと思う。まずは曲順通り、Stevenがジャングルビートを打ち鳴らした「State of Mind」から一気にテンポアップしていった終盤戦の盛り上がりを振り返っておくと、バンドは彼らのレパートリーの中でも一際人気の高い「Media」から「INERTIA」、そして「Bleed」とダンスナンバーを繋げ、再びフロアを揺らしていった。

《Jump into the night》というサビの歌詞に合わせ、観客がバウンスした「INERTIA」は、Reiがボーカルで参加した澤野弘之のプロジェクト、SawanoHiroyuki[nZk]によるテレビアニメ『TO BE HERO X』のオープニングテーマのNewspeakによるカバーバージョンだ。最初聴いた時は、彼ららしいアレンジだと思いながら、ライブのクライマックスを飾るダンスアンセムになるなんてまったく予想していなかったが、この日もまた「Media」の熱狂をさらに大きなものにしたことを考えると、もはやNewspeakのライブには欠かせない曲なのかもしれない。

前述したとおり「こういう日に集まってくれる人は本当に愛でしかない」と観客に感謝を伝えたReiは、続けて「Glass Door」にまつわる思い、そして、この日ライブを通して感じたことを語り始める。

「俺ら、ドアを一つひとつ開けて、ここまで進んできました。いつも、こいつドアを開けてんなって思うかもしれないけど、常にドアを開けたいという曲を書いています。わかるでしょ? でも、そうなんだよ。ドアを開けたらまた次のドアがあって、塞ぎこんで、行き詰まって、クソがって思って、また次のドアを開ける曲ができたり、「Be Nothing」みたいにクソがって曲ができたりっていう。そんな曲ばかりなんだけど、「Glass Door」を作ったことで、また新たなドアが開いたと思ってます。最近、音楽をやっている意味を考えることが多くて、俺らの音楽からインスピレーションを受けて、何か始めてくれるとか、自分は一人じゃないと思ってくれるとか、そんなことが俺らにとってもパワーになるってことを思った今日1日でした」

そして、披露した「Glass Door」。ピアノの弾き語りパートも含め、じっくりと聴かせる要素とダイナミックなバンドサウンドが入り混じるアンセミックな曲調は、まさにNewspeakの真骨頂。8月1日のリリースパーティーでは、ライブ初披露となったこの新しいアンセムをしっかり受け止めようと観客は耳を傾けていたが、この日の観客の反応を見るかぎり、「Glass Door」がライブアンセムとして、観客の中にかなり浸透してきたことは明らかだった。

その熱気がまだ残る中、アンコールに応え演奏した「Lake」のアコースティックバージョンと「Leviathan」「Bonfire」の3曲は、どれも観客がシンガロング。中でも「一番でかい声で歌ってください!」とReiが求め、本当にこの日一番大きな声で観客が歌った「Bonfire」のシンガロングにはちょっとびっくりさせられながら、胸が熱くなった。

なぜなら、メジャー1st EP『Leviathan』のカップリングだった曲がいつしかライブの大団円を飾るアンセムになっていたことにNewspeakとファンの絆とも言い換えられる強い結びつきを感じずにいられなかったからだ。それだけでもこのライブに足を運んだ意味はあった。

「この続きは絶対やろう。だからまたライブに来てください」

名残惜しそうにしている観客に再会を約束したReiをはじめNewspeakのメンバーたちに観客が大きな拍手を送った。

取材・文=山口智男 撮影=toya

@musicman_nusicman