「ハピネスを1秒でも多く」話題の兄妹ポップラップユニット・ぺろぺろきゃんでーが東京初ワンマンで届けた、ポジティブな“ギャルマインド”と背中を押すメッセージ

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『ぺろぺろきゃんでーpresents “Welcome to 6次元”LIVE Remix』2024.4.25(THU)東京・渋谷Freedom

昨年12月、地元大阪で初ワンマンライブ『“Welcome to 6次元” LIVE』を成功させた、ぺろぺろきゃんでーが、4月25日(木)に今度は東京初ワンマンライブ『ぺろぺろきゃんでーpresents “Welcome to 6次元”LIVE Remix』を渋谷Studio Freedomで開催。いわゆるZ世代をメインとしながら、実は幅広い年齢層の観客がステージの2人に熱い視線を向ける中、ぺろぺろきゃんでーの2人は全20曲を披露した。

「天才兄者」こと兄のSUNNY-PLAY、そして「低音女子」こと妹のJanet真夢叶からなるぺろぺろきゃんでー(以下ぺろきゃん)は、モットーに“世界の隅っこにいるあなたへ、ギャルマインドをお届け”を掲げるポップラップ・ユニット。2021年10月に1stシングル「色恋沙汰」でデビューして以来、精力的にリリースを続けてきた楽曲とともに発信するポジティブなメッセージが歓迎されてきた。そんな彼らが地上波のテレビ番組で最新トレンドとして取り上げられたことは、2人がネットだけにとどまらない支持を集め始めたことを物語っていると思うのだが、そんな追い風を感じながらの今回の東京初ワンマンライブとなる。

「みんなで手を上げていきましょう!」とJanet真夢叶が声を上げ、1曲目の「ロリポップ」から観客を巻き込みながら、スタンディングのフロアを揺らしていく。そこから跳ねるピアノの音色とともにSUNNY-PLAYとJanet真夢叶がラップを掛け合うパーティーソング「さま☆ばけ」、シティポップに通じる魅力もある「気付いてるよ?」と繋げると、今度はハンドクラップを求め、フロアを1つにする。

「やっと関東のロリポス(ぺろきゃんのファンの名称)に会えましたね!」

笑顔で挨拶したJanet真夢叶はこの瞬間が来ることを待ち焦がれていたようだ。それも含め、ファンとの交歓を終始、心から楽しむ2人の姿が印象的だった。それも東京初ワンマンライブのテーマの1つだったのかもしれない。ただただパフォーマンスを繰り広げるだけではなく、ファンと実際に言葉を交わしながら、追い風や自分達の人気の実体を肌で感じとったに違いないこの日の経験は、これからさらに大きな存在を目指していく上で2人の大きな自信となることだろう。

さて、序盤のチルムードから一転、2曲続けて披露した「折返鉄拳」「TMI」と2曲続けて披露したドープなヒップホップ・ナンバーこそ、ポップラップ・ユニットと言いながらも実はポップにとどまらないぺろきゃんの魅力だ。そんなタフでクールな姿をアピールした直後に惑星カカオからの中継と称して、惑星カカオ人のナメさぶろうとチョコミン子に扮したSUNNY-PLAYとJanet真夢叶が登場。二人の衝撃的、いや、笑撃的な姿にびっくりのビデオを観客が楽しんでいる間、それまでのツナギからパンク風のストリートファッションに。終盤でも惑星カカオからの中継ビデオを挟んで、衣装チェンジ。そんなところからも単にパフォーマンスを繰り広げるだけではなく、エンタメとして、観客にライブを楽しんでもらいたいという2人のチャレンジが窺えた。

惑星カカオからの中継の様子

惑星カカオからの中継の様子

Janet真夢叶がシンガーとしての実力をアピールするように、敢えてカラオケで歌い上げた中島美嘉の「GLAMOROUS SKY」、DREAMS COME TRUEの「未来予想図II」のカバーもそんな試みの1つだったのだろう。

ピーナッツくんによる「刀ピークリスマスのテーマソング2022」のR&Bとラテン掛け合わせたようなリミックスと、エキゾチックなシンセフレーズが耳に残る「肆仟年」を繋げ、トラックメイキングのおもしろさでも楽しませた後半戦。しかし、聴きどころはやはり恋愛をテーマにしながら、それぞれに切り口を変え、前向きな失恋、恋愛依存、一途な恋心を男女の掛け合いスタイルで物語る巧みなリリックメイキングを印象付けた「色恋沙汰」「クズ男」「3回目の正直なんです」の3曲だろう。バラードと言ってもいい「クズ男」は、雨音のSEが流れる中、いったんはけたSUNNY-PLAYとJanet真夢叶が傘を差しながら歌うというシアトリカルな演出も。

そこから、ぺろきゃんの存在が多くの人に知られるキッカケとなったバイラルヒット・ナンバーにしてギャル賛歌の「話題のGAL」を繋げ、観客のシンガロングとともにフロアを盛り上げると、カジュアル&スポーティーな衣装に着替えてきた2人はさらにチルな「Typical Girl」、ジャズファンクを連想させるグルービーなトラックもゴキゲンだった「マリオネット」と繋げ、本編をビートを打ち鳴らすアップテンポのパーティーソング「わがままマーメイド」で締めくくった。

「悔いの残らないように楽しんでください!」というJanet真夢叶に応え、観客がタオルを回した光景はまさにアンセミックの一言。曲が持つ「Be yourself」というメッセージが胸を打つ。

そして、「話題のGAL」を、ビートを強調した「兄者ージーRemix」でリプリーズして、コール&レスポンスを交えながら盛り上げたアンコールは、さらにこの日リリースしたばかりの新曲「どんまい。」と5月下旬にリリース予定のJanet真夢叶曰く「超新曲」も披露して、観客を歓ばせる。前者はリオデジャネイロ発祥のビートであるバイレファンキを取り入れたというおどろおどろしいトラック、自分を否定する相手に対して「は?」と凄みをきかせながら中指を突き立てるリリックとともに、このタイミングでアピールする攻めの姿勢が痛快だった。一方、「ニコニコハッピーに聴いてくれたらうれしい」とJanet真夢叶が言った後者は、好きと伝えられない恋心を歌った、Janet真夢叶曰く「超カワイイ」チルナンバー。その振り幅もまた、ぺろきゃんの魅力なのだろう。体を横に揺らしながら聴いていた観客の姿が印象に残っている。

80分に及んだ東京初のワンマンライブの最後を飾ったのは、ポップソングの「トットちゃん」。この曲をラストナンバーに選んだ理由は、Janet真夢叶が語った通り。

「私達は小さい頃から、しんどいことのほうが多い時期がたくさんあったんですけど、その中でエンタメというものにめっちゃ背中を押されてきました。お兄ちゃんとぺろきゃんをするってなった時からずっと、活動を通して、私達と同じような経験をした子達や居場所がなくて困っている子達の背中をちょっとでも押せたらいいなという思いの元、やってきました。チョコミン子とかナメさぶろうとかもそのエンタメの1つ(笑)。ちょっとでもみんなに笑顔になってほしいという考えが根本にあります。みんなが少しでも寂しい気持ちになったりとか、やり場のない孤独や怒りを感じたりとかしたとき、「トットちゃん」を聴いて、ぺろきゃんがいるんだなって思ってもらえたら幸せです。そういう存在になれたらという思いが詰まった曲です」

レゲエ調の裏打ちのリズムに揺れるフロアを見ながら、自身の経験を基にしながら<My friend>と歌いかけるセンスが心憎いと思った。なぜなら、その一言を加えるだけで、誰もが共有できるアンセムになるからだ。

「ライブは終わっちゃったけど、みんなには私達がいるし、私達にはみんながいるし。これからもお互いに寄り添って、しんどいことはいっぱいあるけど、少しでもハピネスを1秒でも多く一緒に楽しんでいけたらうれしいと思います。これからもぺろぺろきゃんでーは、みんなと一緒に楽しく歩んでいきたいと思います。みんなが愛しくてたまらない」

名残惜しそうに観客に語り掛けるJanet真夢叶が最後に付け加えた「めちゃめちゃもっともっとがんばっていきます!」という言葉が今後どんな活動に実るのか、この日、ここに集まった誰もが大いに期待している。

取材・文=山口智男 写真=オフィシャル提供(撮影:Koya Yaeshiro

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