そらる 最新アルバム『ゆめをきかせて』収録曲も初披露した、ソロ初のオンラインライブをレポート

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SORARU ONLINE LIVE 2021 -きみのゆめをきかせて-
2021.7.22

“ゆめ”を追う人も。“ゆめ”を見つける途中の人も。かつて“ゆめ”見た人も。人生と切り離すことのできない“ゆめ”に、あらためて向き合う時間だったように思う。

なんの話かといえば、活動13周年を迎えたそらるが、7月22日に行った自身初の全世界配信ライブ『SORARU ONLINE LIVE 2021 -きみのゆめをきかせて-』のことである。

丁寧に作り込まれたオープニングムービーがあけて画面に映し出されたのは、ブランコや滑り台、ベンチが置かれた、公園を思わせるステージ。なんと、タイムマシンまである。楽しい思い出や未来への無邪気な希望。多くの人の幼い日々を彩るものだ。

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始まりは、そらる自身が作詞・作曲も手がけたドラマティックな「銀の祈誓」。目まぐるしく表情を変えていく歌声ににじむのは、“どんな苛烈な運命にも抗う”という凛とした強さだ。スタンドマイクを握りしめながら繰り返す<どうして>にも、エモーショナルなロングトーンにも心が動く。

「みなさんこんばんは、そらるです。そらる個人として初めてのオンラインライブということもあり、目の前にみんなの顔が見えない不安もあり、少し緊張していますが、最後まで心を込めて歌うので、楽しんでもらえたらと思います」

挨拶の後は、ハンドマイクで歌う「ぽんこつ白書」へ。前作『ワンダー』から2年2か月ぶり、9月29日にリリースされるアルバム『ゆめをきかせて』に収録される、Neru書き下ろしナンバーだ。無垢な疾走感に映える透明感を失わないそらるの歌声といい、スクリーンに映し出される歌詞のフレーズといい、“子どものころの自分に聴かせたい一曲”というアルバムのテーマにぴったりだ。

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ステージが赤いライトに染まり、レーザー光線が鮮烈に飛び交った「アイフェイクミー」では、エフェクトボイスやささやき声、突き刺すようなハイトーンで翻弄するそらる。アグレッシブな躍動感もよく似合う。アンバーな光に照らされながらの歌い出しでいきなり心をつかまれてしまったのは「シャルル」。サビのファルセットも美しくて切ない。モノクロ調に映像を加工し、スクリーンに歌詞を大きく映し出すという配信ライブならではの演出で魅せたのは、6月30日に配信リリースした「ブルーパレット」。オシャレな曲調とアンニュイな歌声の相乗効果は、ライブでますます発揮されていく。

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「みなさん、楽しんでいただけているでしょうか。こちらはとても暑いです(笑)。初めて聴く曲もあると思うんですけど、先日リリースを発表したアルバムの中から、豪華なクリエイターさんたちに書いてもらった曲をいくつか先行お披露目したかったので、楽しみにしていただけたらと思います」

このあとも新曲が聴けるかも!?という期待感を高めた上で、バンドメンバーを紹介していくそらる。「お客さんが目の前にいないとどこを見たらいいかわからない」と戸惑いを隠さず、オンラインライブを幾度も経験しているメンバーにアドバイスを求めるうち、すっかりカメラに背中を向けてしゃべり続けてしまう姿も(笑)。

また、「配信ライブをしたことで、これまで自分がいかにお客さんに助けられていたか、ということに気づきました。それに、普段ライブ会場になかなか足を運べない人に観てもらえるというのは、オンラインライブのいいところ」という、ポジティブな視点も印象的だった。

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バンドメンバーの「オンラインライブだからといって力まないで」という助言を胸に、「ここからは肩の力を抜いていこうと思います」と決意して、自らが作詞・作曲した「ユーリカ」へ。吹っ切れた様子で、画面の前にいる“君”に向け、大きく手を振るそらる。傷ついた心を温かく、優しく包み込んでくれるようなそらるの歌声に、この瞬間もたくさんの人が救われ、背中を押してもらえている。

自身が紡いだメロディと言葉、その歌声で不思議な物語の世界へと誘うのは、「嘘つき魔女と灰色の虹」。サビでそらるが腕を広げたと同時に、虹色の光で満たされるステージ。絵本のページをめくっていくときと同じドキドキ感やワクワク感が、そこにはあるのだ。

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これも配信ライブならでは、街灯、フェンス、鉄棒が日没後の公園を思わせるステージセットにチェンジして、静かに歌い始めたのはナノウ書き下ろしの「ぼくを叱って」。『ゆめをきかせて』に収録される、ノスタルジックなナンバーだ。たくさん傷ついて、時に人を傷つけて、失ってしまったものもある。ひっそりと抱える痛みに、正面から向き合うのは苦しい。でも、目を背けないのがそらるだ。<君は大丈夫 だってほら 見てよほら 今も生きてるから>というフレーズはじめ、すべてをさらけ出し、かつての自分に語りかけるような歌はあまりにも心に深く刺さってしまった。

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オレンジのライトにステージが暖かく染まった「夕溜まりのしおり」の、アコースティックギターや鍵盤の音色が寄り添う穏やかな歌声。幻想的な映像演出にも息を呑んだ「海中の月を掬う」の、揺れる心情や儚さをたたえた歌声、<ただ君にだけ 届いて欲しい>という願い。ボーカリストとしてはもちろん、作詞者としても、作曲者としても、豊かな感受性があふれ出てしまうのがそらるだ。

五線譜に音符や楽器が楽しく踊る背景の前で歌ったのは、『ゆめをきかせて』に収録される、yukkedoluce書き下ろしの「五線譜のタイムマシン」。それは、時間も距離も越えて、視聴者ひとりひとりの胸に幸せをもたらす歌声だった。メンバーも声を重ねたように、オーディエンスも一体となって歌える日がとても待ち遠しい。

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「みなさん、楽しんでいただけたでしょうか。僕は、最後まで楽しく歌うことができました。それが少しでも伝わっていたら嬉しいです」

そう言って、最後に届けてくれたのは「ワンダー」。<意味をくれたのは 君だ>と、画面の向こうにいるリスナーを指さしたそらる。 <永遠に覚めない 鳴り止まない 響き続けるような そんな歌>は、生きていく力になる。

7月末から8月にかけ、実に6年ぶりとなるアコースティックライブツアー『SORARU ACOUSTIC LIVE TOUR 2021 -きみのゆめをきかせて-』を開催し、名古屋、神戸、東京を巡るそらる。アコースティックスタイルでその歌声を堪能できるなんて、贅沢の極みである。コロナ禍にあってオーディエンスは声を出すことはできないけれど、同じ空間で共に描く“ゆめ”もまた、きっと素敵なものになるだろう。

文=杉江優花 撮影=小松陽祐[ODD JOB]

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