2019年日本音コン&ピティナ特級覇者・亀井聖矢、東京でのリサイタル・デビューへ! 「いい緊張感と興奮とで音楽を作りあげたい」

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2019年、若きピアニストの登竜門である二つのコンクール、ピティナ・ピアノコンペティション特級と日本音楽コンクールピアノ部門の両方で、見事第1位に輝いた亀井聖矢(かめいまさや)。本来であれば数々のステージが待ち受けていたはずだが、新型コロナウィルスのために中止・延期を余儀なくされた。この秋、さまざまなコンサートが徐々に再開されつつある中、亀井も満を持しての東京でのリサイタル・デビューを果たす。その意気込みについて語ってもらった。

■渾身のプログラムでのぞむ東京リサイタル・デビュー!

——東京でのリサイタル・デビューは、昼夜2公演での開催ということで意欲的ですね。

感染症対策のため、まだ客席をフルに活用することは難しいので、少しでも多くのお客様に楽しんでいただけるように、2回公演にしました。9月には大分県で、2日間で3公演を行いましたので、集中力やモチベーションの維持という面では経験があります。確実に練習量を積んだ上で、2回とも良い緊張感と興奮とで音楽を作りあげていきたいです。

ただ、音楽というのは、その時その時で姿を変えるものだと思っています。特に僕は、“安定感”といえるようなものがまったくないんです(笑)。リハーサルと本番では、音楽がかなり変わっちゃうタイプ。ですから、昼と夜とでは、同じ曲目でもかなり表現が変わるのではないかなと思います。お客様の反応を感じ取りながら、その瞬間その場で生まれるものを大事にしたい。2公演両方いらしていただいたとしても、まったく飽きを感じないくらいの演奏をしたいです。

——一回あたり休憩なしの70分とのことですが、プログラミングにも亀井さんの意欲が滲み出ていますね。まずはベートーヴェン のソナタ第21番「ワルトシュタイン」で幕開けです。

今年はベートーヴェン生誕250周年ですから、ぜひベートーヴェンは入れたいと思いました。32曲あるソナタのうち、この「ワルトシュタイン」を選んだ理由は、ベートーヴェン中期の傑作でありながら、聴きやすさもあるというところ。第一楽章の厚みと、第三楽章の広がりのあるイメージ、一つのソナタの中にあるそうしたコントラストを楽しんでいただきたいです。

——2曲目はショパンですが、ワルツやマズルカなどの舞曲ではなく、前奏曲などの小品でもなく、ソナタ第2番を選曲されました。

あえてソナタを二つ並べることによって、ベートーヴェンとショパンの対比が鮮やかとなり、そのコントラストも提示できるのではないかと考えました。ショパンの第2番のソナタには、彼の内面的な感情の起伏、さまざまな葛藤を感じさせるものがあります。「葬送行進曲」で有名な第三楽章も、具体的な誰かの弔いというよりも、自分の心の中で何かを葬ってしまいたいというような感情の表れであると捉えています。第四楽章はとても怪しげな雰囲気を残して終わってしまう。全体の構成としても古典的なソナタから脱却した非常に独特なソナタです。テクニックだけでどうにかなるような曲ではなく、内面的な表現が必要になります。僕自身の人生経験からはまだまだ追いつかない部分はありますが、今は多くの人が苦しい思いを強いられる時代となってしまいましたし、そうしたことにも思いを馳せてこの曲をお届けしたいです。

——おしまいはリストの超絶技巧練習曲集 S.139から、とのことですね。

12曲から成る曲集ですが、「プレリュード」「鬼火」「マゼッパ」の3曲を演奏したいと思います。「プレリュード」では世界観をガラッと華やかに変え、「鬼火」は技巧的な曲想の中での表情の変化を味わっていただきたいです。「マゼッパ」はよく知られている名曲ですが、これをコンサートの最後に弾くのは実はけっこう大変(笑)。でも、バリエーション的に展開し、気持ち的にも盛り上がる曲想ですので、皆さんに「楽しかった!」という気持ちを残してくれる作品だと思います。

リストはやはり、エンターテイナーですよね。彼の演奏に女性たちが失神した、というエピソードはよく知られていますが、やはりお客さんに楽しんでほしい、そのためにはどうしたら…と考え抜かれていることが伝わります。僕自身もいつも考えていきたいポイントです。

——2019年のピティナと日本音楽コンクールでは、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番という、あまりメジャーとは言えない曲で優勝を飾られました。亀井さんの作品を選ぶ目、というところも示された結果ですね。

心の底から自分が弾きたい曲であること、それがまずは一番いい結果につながると思っています。「楽しい」という中にもいろいろな意味合いがありますが、自分がまずはその作品を一番に楽しめなければ、お客様にもそれは伝わらない。その意味で、今回も僕自身が今一番弾きたいと思うものを軸にしてプログラミングしました。

■コロナ禍においても、モチベーションを高めてきた

——コロナ禍となってしまう以前、昨年12月末にはパリでレッスンを受けられたそうですね。

レナ・シェレシェフスカヤ先生とルイサダ先生に、1週間ほどレッスンしていただきました。自分の中でもある程度、作品に対して「こう弾きたい」というのを考えてきたつもりでしたが、より細部にまで掘り下げ、その上で全体を構築するという方法を学びました。海外でのレッスンはとても刺激的で、その後ドイツや他の国々でもレッスンを受けたいと考えていたのですが、コロナの影響で難しくなってしまいました。また状況が落ちついたころ、いろいろな国を見て、留学先も決めたいと考えています。

——2月には、日本音楽コンクール受賞記念演奏会でチャイコフスキーの協奏曲第1番を演奏され、3月のピティナ入賞者記念者コンサートでは配信事業に変更になりましたが、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲を披露されるなど、アンサンブルの経験も少しずつ増やしておられますね。

ピアノとは呼吸感の異なる弦楽器や管楽器と共演することで、ちょっとした間合いや息遣いや、音圧の多様性を感じ取ることができました。それらに合わせていく経験を通じて、歌い方や自分の体の使い方にも意識が向くようになり、音楽作りにも影響しています。フレーズの作り方などは、独奏にも応用できることが多いです。今回のプログラムの中でも、ショパンの第三楽章の中間部には本当にシンプルな歌が現れますが、そういうものにこそ、合奏で得られた要素や感覚が生かされると感じています。

——この春はしかし、コロナの影響でコンクールの褒賞コンサートなどが軒並みキャンセルとなってしまいましたね……

この状況ばかりは、僕だけのことではないですし、悔やんでも仕方がないので切り替えていかねば、と思ってきました。4月・5月は久しぶりに、家族とゆっくりすごすこともできましたし、読書なども進みました。ピアニストとしては家の中でできることもありますからね。新しい協奏曲の譜読みなどを進めていました。ただ、本番があるなしでは、モチベーションの作り方が違ってきます。今はようやくコンサート再開の動きが出てきましたから、このリサイタルに向けて、がんばっていこうという気持ちがより強くなっています!

——最後に、リサイタルを楽しみにされている皆様にメッセージをお願いします。

東京での初リサイタルという、気合の入ったステージです。渾身のプログラムで臨み、ぜったいに楽しんでいただけるコンサートにします。ご興味を持っていただけたら、ぜひお越しいただければ嬉しいです。お待ちしています!

取材・文=飯田有抄 撮影=池上夢貢

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