今最注目の19歳女子シンガーソングライター・asmiが自身を振り返るーー「ラブソングなら私にしか書けない言葉がある」

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asmi 撮影=日吉“JP”純平

吐息のように儚く甘い歌声で綴られるラブソングで注目の、大阪在住の19歳のシンガーソングライター、asmi。Rin音の「earth meal feat. asmi」でのフィーチャリングを機に注目度急上昇中の彼女が、1stアルバム『bond』をリリース。声高に愛を叫ぶのではなく、独り言のように呟くのがスタンダード。そんな次世代の恋愛観を牽引する、カワイイだけじゃないリアルでクールなラブソングを歌う彼女に音楽を始めたキッカケから、アルバム収録曲のことまでを訊いた。

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 ーー普段の声も歌声と同じなんですね。

よく言われます。4つ上の姉がいるんですけど、同じ声です(笑)。

ーーasmiさんは今19歳ですが、音楽を始めたキッカケは?

姉が音楽を好きだったので、私も歌や音楽が好きになりました。でも曲を作ったりはしていなくて。ただ単に歌が好きで歌ってただけなんです。お姉ちゃんがシンガーソングライター系が好きだったのもあって、私は今も片平里菜さんがめっちゃ好きで。

ーーじゃあ、曲を作り始めたのは……。

作り始めたのは去年の6月なんです。だから私もびっくりしてるんです(笑)。『bond』というアルバムタイトルは「繋がり」という意味で付けたんですけど、この1年間、目まぐるしい感じでいろんな人と繋がって出来た10曲が入ったアルバム……そういう意味を込めています。それまでは1曲しか配信していなかったので、CD音源を作るのも今回が初めてだったんです。今、音楽の専門学校に通っているので、レコーディング自体はそこの授業でやった事はあったのですが。

ーー「summer sour」のMVでもギターを弾きながら歌ってますが、作曲はギターで?

ギター弾き語りで作ってるんですけど、まずコードのイメージがあって、その後にメロディーと言葉が一緒に出てくる感じですね。そうやってできた私の弾き語りのデモ音源と、その曲に込めた想いみたいなものをトラックメイカーさんに送って、トラックメイカーさんとキャッチボールしながら完成させていく、といった流れですね。

ーー音楽経験も専門学校が始まりですか?

高校生の時に100人くらいの部員がいる軽音楽部に入っていて、そこの部長をやってました。

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ーーこんな甘い声の持ち主が100人の部員を率いる部長?! ギャップがかっこ良過ぎる。

がんばってました(笑)。部活は……歌が歌いたかったので楽しんでたとは思うんですけど、私が部長の時にコーラス部門で全国優勝したぐらい大会重視の部活だったので、今思うと「音楽」をあんまり楽しめてなかったかも知れないですね。1人でやる前は2人組でユニットをずっとやっていたんですけど、今の専門学校の先生に出会った時に、「1人でやってみたら?」「自分で曲作ってみたら?」と言われて。私も自分の作った曲を歌ってみたかったし、1人でやるためにはやっぱりギターもやらないとな、という事でギターを始めたのが去年の1月ぐらい……ちょうど1年と9ヶ月目位ですね。で、去年の5月頃、ちょうどゴールデンウィークの時に初めて失恋したんですが、それをキッカケに作曲を本格的に始めました。

ーー10代にとっての恋愛……しかも初めての失恋なんて、キツかったでしょうね。

電車に乗ってるだけで涙が出てくるような失恋でした。でも失恋の気持ちの持っていきどころがちょうど作曲に向いて、その時に作った曲を先生に褒めてもらったので、それがasmiの始まりという感じですね。今でもその失恋の記憶を曲にすること結構ありますし、いい経験になったなぁと、今でも思います。

ーーその時に出来た曲って、今回のアルバム『bond』にも入ってます?

「おすしの唄」がそうですね。

ーー「おすしの唄」ってタイトルを見ると、かわいい食べ物ソング風だけど、内容は音楽を作る人に恋した赤裸々ソングですよね。1番は寿司ネタ、2番は曲のネタについての曲で、ネタという部分がかかっていて面白いなぁと思っていました。

ああ~~。そこまで私、考えてなかったです(笑)。新発見です。その通りですね、2番は曲のネタについて歌ってますもんね。日頃何も考えていないので、曲を作ってる時も口に出してみて初めて気づくことがあるんです。今こんなこと思ってたんだとか。

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ーーTwitterの文字数の話もちょこっと出てくる「Lemon tea」なんて、古いJ-POPや童謡を引用しつつそれを今の10代の視点で切る、みたいな感覚がすごくクールだし、歌詞も密かに韻を踏んでいて、曲としての完成度がかなり高い。

ラップをめっちゃ聴いているわけではなかったんですが、そういう要素も取り入れたいな、韻は踏みたいなと思ってたので、そう言ってもらえてめっちゃ嬉しいです。

ーー<思い上がった私が悪いわ>(「summer sour」)とか、<愛してるって言ったりしなきゃよかった>(「lonely midnight」)といった自虐的なフレーズも印象的ですが、これはasmiさん自身の恋愛観でもあるんでしょうか?

歌詞は全部が全部実話と言うわけではなく、わりと妄想だったりもするし、自分の中の自分じゃない誰かの話だったりするんです。私自身は好きになったら自分から伝えるタイプだし、どっちかと言うと恋愛をスパン! と進めていきたいタイプ。なので、自分の曲と自分自身が一致してるのか考えたことなかったです。……インタビューでこんなふうにたくさん自分のことを話したことがないので、新しい感覚です(笑)。

ーー歌詞に自分の本音や実体験が反映されることに対する照れや抵抗はないですか?

ないですね。音楽が自分をいちばん表現できてると思うから照れとかはなくて、むしろ気持ちいいです。結構冷めてる方だと思いますし……冷めてると言って学校の先生に批判されたりとかもしました(笑)。基本的に私は男っぽいなと自分では思います。

ーーだからラブソングとして恋愛を俯瞰視出来るのかもしれないですね。

私、SNSも好きで、恋愛の事とかめっちゃ書くんですけど、やっぱり歌だから書ける事はありますし、共感してもらいたいという気持ちがあります。特に失恋した時って、失恋ソングがあるのとないのとでは違うというか。うまく言葉にできないんですけど、そういう音楽があることで、失恋したことさえ楽しんでもらえたらなと思うんです。失恋を楽しめるわけはないと思うんですけど、私の歌がそういう存在になれたらなと。失恋という状況に浸れるというか、音楽があればそういう状況を彩ることもできるじゃないですか。インスタのフォロワーさんは男女半々ぐらいなんですけど、女の子のリスナーさんとかは結構「last」が好きだと言ってくださる方が多くて。「今の自分と同じ!」と。ダメな恋の歌なんで、みんな壮絶な恋をしてるんだなと(笑)。

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ーー誰かに楽しんでもらいたいという願望があるんですか?

あるかもしれないですね。いたずらとか好きですし、ライブの30分間の中でもいちばん好きなのがMCの時間と思うくらい喋るのが好きで、小学校の時はお笑い芸人になりたいと思ってましたから。

ーー今は恋愛という繋がりから生まれるラブソングがメインですが、今後は恋愛以外の繋がりも曲に落とし込んでいきたい?

そうですね……。今回、「好きな人にため息をつきながら話すみたいに作ってみたら?」とお題をもらって出来た「-fu~」は、ある種のラブソングではあると思うんですけど、私の中ではこのアルバムの中でこれ1曲だけ違う感じで書いた曲で。この曲だけは、友達とかにも届いたらいいなと思っていて。本当はそういう曲ももっと書いてみたいけど、まだラブソングしか書けないなと思っています。まだ19年しか生きてなくて、人生のことなんて全然わからないし、ラブソング以外で人より優れた曲が書けるほど経験があるとは思っていない。ラブソングなら私にしか書けない言葉があるけど、人生の歌はまだ書けないなという気持ちです。

 取材・文=早川加奈子 撮影=日吉“JP”純平 

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