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音楽業界と係争中のアンソロピック、中国アリババを「蒸留攻撃」で非難

ビジネス 海外

米AI新興企業アンソロピックは6月10日付の米国上院議員に宛てた書簡の中で、自社のAIモデル「Claude」を不正利用し「過去最大規模の蒸留攻撃を実行した」として、中国のEC(電子商取引)大手アリババグループを非難。議会に対し「米国のAI研究所間の脅威情報の共有を促進し、中国のAI研究所が米国の先端チップにアクセスすることを可能にしている抜け穴を塞ぎ、蒸留攻撃を行った中国の研究所に制裁を科す」よう要請した。

アンソロピックは、歌詞の無断利用を巡り、音楽出版社グループなどと法廷闘争中。アリババのAIモデル「Qwen(通義千問)」は、楽曲のジャンルやムードを識別でき、最新の「Qwen3.5-Omni」モデルは音声を生成し、声を複製することができる。アリババ独自のベンチマークテストでは、同モデルは多言語音声の安定性においてイレブンラボを上回る性能を示した。

アンソロピックによると、アリババおよび傘下のAI研究所(Qwen)とつながる運用者が、約2万5,000個の不正アカウントを通じて、4月22日から6月5日にかけてClaudeと2,880万件以上のやり取りを行った。標的となったのは、エージェント的推論など、同社が「Claudeの最も価値ある機能」と呼ぶもの。

2月にもアンソロピックは、DeepSeek、Moonshot、MiniMaxの3つの中国系研究所による蒸留攻撃を報告。OpenAIも昨年1月、DeepSeekがOpenAIのデータを無断で利用し、競合モデルを訓練した可能性があると指摘した。テンセント・ミュージック・エンターテインメント(TME)は、音楽制作ツールにDeepSeekを統合している。

ブルームバーグによると、米当局は、無許可の蒸留によりシリコンバレーの研究機関が数十億ドルの損失を被っていると推定している。

(文:坂本 泉)

榎本編集長

AIを巡る知的財産の争いが、いくつもの層を持ち始めている。アンソロピックは、自社のAI「Claude」を中国のアリババに「蒸留」され、能力を不正に抜き取られたと主張した。

一方で同社自身は、歌詞を無断で学習に使ったとして音楽出版社グループから訴えられている立場でもある。学習データを「使う側」が、今度はモデルを「写し取られる側」に回る——AI時代の知財が、何重にも入り組んでいることを映す構図だ。

音楽の現場でも、この多層性は表れている。テンセント・ミュージックは中国のDeepSeekを制作ツールに組み込み、アリババのQwenは声の複製で先行する。誰の何が「守られるべき創作物」なのか、その線引きはなお揺れている。

学習データ、生成物、そしてモデルの能力そのもの——それぞれの段階で権利をどう扱うか。音楽業界にとっても、この問いは避けて通れないものになりつつある。

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。

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