係争中の音楽生成AI「Suno」、独立系アーティスト育成プログラム「Spark」立ち上げ 詳細条件に自社への批判禁止など
インディーズアーティストやレコード会社との訴訟を抱える中、音楽生成AI「Suno」は6月25日、インディーズアーティスト育成プログラム「Spark」の立ち上げを発表した。
自身の名前で音楽をリリースしている18歳以上の無所属アーティストなら、誰でも応募可能(中国、トルコ、ベトナムなど特定国の居住者は対象外)。選出者には創作活動を支援するための助成金とマーケティング費用が支給されるほか、Sunoライティングキャンプでの著名アーティストとのコラボレーション、開発中の機能へのフィードバックの機会などが与えられる。
参加アーティストは、Suno上で公開される楽曲を1〜12曲制作し、各楽曲はSunoで制作されたことを明記した上で、複数のソーシャルメディアプラットフォームを通じてプロモーションを行う必要がある。楽曲の制作は「アイデアの創出など、プロセスの一部にSunoが関与している限り、どのようなツールを使用しても構わない」。
権利面でが、アーティストは作品の創作上の主導権と商業的権利を保持し、さまざまなデジタル・サービス・プロバイダー(DSP)に配信できる。一方で、Sunoは参加者にメディアの削除や修正などを求め、「マーケティングおよびプロモーション目的」で参加者の氏名や肖像を「派生作品」を含むあらゆる形態で使用する権限を有する。
参加者はまた、契約期間中および契約終了後に関わらず、Sunoに関する誹謗中傷の禁止、対Sunoの集団訴訟に参加する権利の放棄、一定期間の競合他社との提携禁止に従う必要がある。
(文:坂本 泉)
榎本編集長
AI音楽のプラットフォームが、アーティストを「育てる」側へと回り始めた。Sunoが立ち上げた「Spark」は、無所属のアーティストに資金や指導、プロモーション支援を提供する育成プログラムだ。同社は今月、4億ドル(約631億円)を調達し、評価額は54億ドル(約8,500億円)に達した。その潤沢な資金を、アーティスト育成へと振り向ける構えだ。
注目したいのは、創作上の主導権も商業的権利もアーティストが保持し、配信先も自由に選べる点だ。AIツールを使いながらも、作品はあくまで本人のものという立て付けになっている。これは、AI音楽への反発が根強いなか、「人とAIが協働する」かたちを示そうとする試みといえる。
先にSunoがワーナーと提携し、業界に歩み寄ってきた延長線上にある動きだ。応募条件や細則には慎重に読むべき部分もあるが、巨額の資金を投じてアーティスト育成に乗り出す姿勢自体は、AI企業が音楽産業の一員になろうとする意思の表れと見える。
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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