逢田梨香子、30歳のバースデーイベント“Dear ME”で届けた音楽愛

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撮影:AZUSA TAKADA

声優・アーティストの逢田梨香子によるバースデーイベント「RIKAKO AIDA Birthday Party 2022 “Dear ME”」が8月8日、東京・Zepp Hanedaで開催された。逢田の誕生日当日に毎年恒例で行われている本イベント。30歳のバースデーとなる今年は、彼女が影響を受けた音楽をカバーと共に振り返る企画コーナーから、待望の新作となる3rd EP「ノスタルジー」からの楽曲を含むスペシャルライブまで、音楽愛に溢れた催しとなった。

毎年趣向を凝らした演出でファンを楽しませてくれる逢田のバースデーイベント。1部と2部の2公演が行われた今回は、天津向がパーソナリティを務める架空のラジオ番組「Lifetime Hit Number “Dear ME” Radio」に逢田がゲスト出演する、というスタイルで進行。ステージ上で繰り広げられる架空のラジオ番組の“生放送”を受けて、観客がハッシュタグ「#DearMeRadio」を付けて番組の感想やコメントをツイッターでつぶやくと、ステージ上の逢田と天津向がそれらのつぶやきをリアルタイムでチェックして読み上げる、ファンとの繋がりを大切にする逢田らしい企画も実施された。

会場が暗転してステージ上のON AIRランプが灯ると、FMラジオのお洒落な番組風のジングルが流れ、天津向の影ナレーションに導かれて逢田がステージに登場。彼女が14歳のときに出会ったという思い出の楽曲、柴咲コウの「invitation」を披露する。ゆったりとしたワンピースに身を包んだ逢田は、ややシックにアレンジされた同楽曲を優雅に表現しながら歌唱。今もなお聴き続けているという青春の1曲を、喜びに満ちた表情でファンに届けた。

トークパートでは、天津向と逢田がステージ中央に用意されたラジオブース風のスペースに向かい合って座り、逢田の「Lifetime Hit Number(=人生における大事な曲)」年表を見ながら彼女の音楽遍歴を振り返っていく。幼少期はSMAPに夢中になり、歌も演技もバラエティもこなす彼らのスーパースターぶりに憧れ、それが芸能の道を意識するきっかけにもなったという彼女。そこからGACKT、大塚愛にハマっていき、先ほどカバーした柴咲コウ「invitation」との出会いをきっかけに、自身の音楽の趣味がさらに広がったと明かす。

ここで再びカバー曲のコーナーへ。逢田がセレクトしたのは、大塚愛の代表曲の1つ「プラネタリウム」。先ほどの「invitation」とは趣きを変え、しっとりとした空気感の中で切々とした感情を繊細に表現していく。ミラーボールの光が作り出すプラネタリウムのごとき星空、落ちサビ前での花火を表現した音と光の演出などが、夏の気分をグッと高めてくれた。

イベントは逢田の音楽遍歴トークに戻り、今度はアニメやアニソンとの出会いが語られる。それは16歳の頃、TVアニメ「銀魂」にハマった彼女は、同作のEDテーマを担当していたSPYAIRの音楽に魅せられ、ライブに足繁く通うほどのファンに。さらに同時期、平野綾のかわいさと演技に衝撃を受け、声優という職業を意識するようになったと語る。そこから色々なアニメに触れていくなかで、逢田の中でアニソンの定義が変わるほどのかっこよさを感じたというのが、TVアニメ「Angel Beats!」に登場するバンド・Girls Dead Monster。ということで、今度はガルデモの楽曲「Brave Song(Gldemo ver.)」を凛々しくもエモーショナルにカバー(2部公演では「Crow Song(Yui ver.)」を歌唱)。この日歌われたカバーはどれも違った表情をもっていて、アーティスト・逢田梨香子のルーツだけでなく表現の幅広さを存分に味わうことができた。

その後、キリさんとシバさん(CV:逢田梨香子)を交えたユーモラスなグッズ紹介映像を挿み、逢田が自身の楽曲を披露するプレミアムライブのコーナーへ。柄の入った大人かわいいワンピースに着替えた逢田は、まずはこの日がフラゲ日だった1年半ぶりの新作「ノスタルジー」より、明るくお洒落なポップチューン「天使の記憶」を披露する(2部公演では「Adolescence」を歌唱)。シャッフル系の軽快なリズムに乗って晴れやかな歌声を会場全体に響き渡らせる逢田は、とても楽しそうで、歌いながらクルッと一回転する場面も。喜びが歌からも身振りからも伝わってくる。

逢田は続くMCで、今回のイベントのタイトル「Dear ME」に込めた想いについて語る。ファンやスタッフをはじめ、自分のことを大事に思ってくれている人が周りにたくさんいるなか、みんなが大切にしてくれている“私”を自分自身も大切にするため、改めて自分を振り返って好きになるため、自分自身に手紙を書くようなイメージで「Dear ME」と名付けたのだという。感傷的ではないノスタルジー、昔の思い出を楽しく振り返るようなコンセプトのもと制作された3rd EP「ノスタルジー」ともリンクするテーマだ。

「みんなの人生の思い出に残る曲になれたら」――逢田はMCでそんなことを語っていたが、この日、ようやくライブで初披露された「I will」は、まさにそんな楽曲になったのではないだろうか。「I will」は彼女のデビューEP「Principal」(2019年)に収録された優しいバラード曲。逢田いわく「(楽曲を受け取った当時の)私には大きい曲に感じて、自分が達せていない」気持ちがあり、ずっと温めていたのだという。だが、30歳の節目を迎えたこの日、彼女は「今だからこそ歌える」と考え、特別な想いを込めてこの曲を歌唱。“あなた”と共に新しい未来へと進む気持を歌ったその歌詞は、30代の新たな一歩を踏み出す今の彼女には、デビュー時とはまた違った意味合いを帯びているはずだ。慈愛に満ちた表情で“ジブンを信じて 明日へ”と歌う逢田の眼前には、たくさんの“あなた”。いつでも自分を支えてくれる「Us(逢田の公式メンバーサイトの名称)」の存在を実感したのか、歌い終えたあとの彼女は少し涙ぐんでいた。

その後、TVアニメ「装甲娘戦機」OPテーマとしてもお馴染みのアッパーチューン「Dream hopper」を元気いっぱいに歌唱。クルクルと豹変する楽曲を弾む歌声でキュートに表現し、頼もしささえ感じさせるほどの力強いパフォーマンスでイベントを締め括った。

自身が人生で影響を受けた楽曲を改めてカバーすることで、自らの思い出をファンに共有すると共に、新曲やライブ初披露曲といった特別な演目で新しい最高の思い出を作り上げた逢田梨香子。彼女が最新作で表現するところの「ノスタルジー」、いつまでも色褪せることのない“楽しい夏の思い出”が、ファンの心のアルバムにも新たに書き加えられたはずだ。

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