フジロックフェスティバル’18、延べ12万5000人が来場

コラム Izumi Sakamoto

フジロックフェスティバル’18が、7月27日から29日まで新潟県湯沢町にある苗場スキー場にて開催された。

湯沢・苗場での開催20回目にあたる今年は、26日の前夜祭に1万7000人、27日に3万人、28日に4万人、29日に3万8000人と、4日間で延べ12万5000人が来場。台風の影響から開催を危ぶむ声もあったが、スケジュールを一部変更しながら全日程行なわれた(3日目のデイドリーミングのプログラムがアンフェアグランドにて合同開催された)。

 フジロックフェスティバル’18のオフィシャルフォトを一挙公開!
 

総勢251組の多彩なアーテイストが苗場を盛り上げた3日間

今年は3日間で総勢251組の多彩なジャンルのアーティストたちがフジロックを盛り上げた。今年の特色としては、主催のSMASH日高代表が旅の際に見つけてきたキューバからのバンドの出演、またヒップホップ系の若手アーティストのN.E.R.Dとケンドリック・ラマーに、アナログ的なカリスマアーティストのボブ・ディランという対照的なアーティストをヘッドライナーに据えたことなどが挙げられるだろう。
 

N.E.R.D

「本当に台風は来るのだろうか?」と思うほどにきれいな青空が広がった初日は、恒例のルート’17 ロックン・ロール・オーケストラが、仲井戸”CHABO”麗市、甲本ヒロト、奥田民生、トータス松本をゲストに迎え、豪華絢爛なロックン・ロール・ショーを繰り広げた。”キング・オブ・フジロック”こと忌野清志郎や最終日に出演するボブ・ディランの曲などを演奏し、最後にはゲストボーカリスト全員揃ってエディ・コクランの「C’mon Everybody」を熱唱した。

フィールド・オブ・ヘブンでは、鬼才マーク・リボー率いるセラミック・ドッグが大きな注目を集めた。現在の社会情勢に対する強い怒りが込められた扇動的で激しい言葉と実験的なサウンドに多くの人が釘づけに。演奏前からできていた人だかりが、瞬く間に会場を埋めつくすほどにふくれあがっていった。
 

SKRILLEX

時折青空が顔をのぞかせるも大半が雨模様となった2日目は、直前にYOSHIKIとの共演が電撃発表されたスクリレックスのステージが話題を集めた。「Bangarang」で本編のスクリレックスのステージが終了し、照明が完全に落ちると、観客から「もう終わり?」といったどよめきが起こる。

ステージにクリスタルピアノと「X」のロゴの入ったドラムが搬入され、聴こえてきたのは「Endless Rain」。曲名どおりに強く降りだした雨の中、YOSHIKIのピアノとスクリレックスのギター、そして観客の大合唱が響いた。そして、YOSHIKIのドラムでスクリレックスが代表曲の「Scary Monsters and Nice Sprites」を演奏してフィナーレに。YOSHIKIの「フジローック!」と何度も叫ぶ声に会場も大きな歓声で応え大団円を迎えた。

時間が経つにつれ、どんどんと雨脚が強くなり、強風も吹き始めていた。テントが飛ばされ、近くの施設に避難する人が続出。翌日の開催はどうなるのだろうかと誰もが考えていたことだろう。
 

KENDRICK LAMAR

そして迎えた3日目。前日の強風は会場のいたるところに爪痕を残していたが、無事に実施されることがわかり胸をなでおろす。晴れたり土砂降りになったりと不安定な天候が続くも、夕方頃になると心地よい風が吹きはじめた。

そんななか、機は熟したとばかりに登場したボブ・ディラン&ヒズ・バンド。1978年の初来日から40周年に、日本での公演101回目、日本のロック・フェス初出演、ノーベル文学賞受賞以降はじめての日本公演など、今回のディラン出演に関する話題はつきない。ディランの出演時間には、ホワイトステージをはじめ他の主要ステージを空けるという前代未聞のタイムテーブルも衝撃だった。

ディランは「シングス・ハヴ・チェンジド」に「悲しきベイブ」、「追憶のハイウェイ61」や「くよくよするなよ」、「マスターピース」、「風に吹かれて」などを全曲ピアノ、後半にはハーモニカの演奏を交えながら演奏した。本公演では近年海外ではほぼ許されていないスクリーン映像が許諾されたことで、遠くからでも表情や時折見せる笑顔、さりげない仕草などを見ることもできた。ディランは一言も発することなく、背筋を伸ばし睨むように会場を見渡して、満足気な表情でステージを後にした。

観客の中にはディラン世代とおぼしき60・70代の人たちも多く見られ、いつものようにアレンジや歌い方を変えて進化する曲の数々に「またやってるよ」とでもいうように、にんまりと笑みを浮かべる人の姿もあった。

 

 

ROOKIE A GO-GO 投票企画の第1次投票結果発表

毎年注目のROOKIE A GO-GO。今年のメインステージの出演者では、CHAIやMy Hair is Bad、suchmosやD.A.Nに、ミツメ、ceroなどがROOKIE A GO-GOの出身で、ブレイクを予感させる新進気鋭のアーティストたちが見られると大好評のステージだ。今年は以下15組のルーキーたちが熱いパフォーマンスで会場を大いに沸かせた。

突然少年、東郷清丸、paionia、底なしのバケツのようにざらざら、東京塩麹、裸体、1 inamillion、ANYO、RiL、THE RODEOS、GLARE SOUNDS PROJECTION、NOT WONK、いーはとーゔ、阿佐ヶ谷ロマンティクス、Manhole New World(出演順)
 

突然少年、東郷清丸

なお、ROOKIE A GO-GO出演者の中から1組、来年のフジロック主要ステージへの出演者を決める投票企画「FRF’19出演権獲得!目指すはメインステージ!」において、フジロック開催中に現地で行なわれた第1次投票の結果が公開された。現在は、突然少年と東郷清丸が同率1位となっている

第2次投票(WEB投票)の受付は2019年3月上旬ごろよりフジロックオフィシャルサイトにて受付開始予定。来年フジロックのメインステージに立つのははたしてどのバンドとなるのだろうか。

 

 

今年限りのスペシャル企画 移動式大人の遊園地「アンフェアグランド」

 

アンフェアグランド

湯沢・苗場での開催20周年を記念して、今年限定のスペシャル企画が登場。フジロックのモデルとなったイギリスの「グラストンバリー・フェスティバル」から、移動式大人の遊園地「アンフェアグランド」がフジロックにやってきた。グラストンバリー・フェスティバルが開催されない今年だからこそ実現できた企画であり、地元協賛・協力のもと催行された。

かつてオレンジコートがあった場所には、大きな唇の入口が目印のテントを中央に、イギリスから輸送されたオブジェや苗場で描かれたグラフィティアートなどが飾られ、アンフェアグランドの不思議な世界に誘う。インスタレーションあり、サーカスあり、もちろん音楽あり。夜が更けるほどに濃くなるディープな雰囲気に多くの人が酔いしれた。

 

 

初となるYouTubeでのライブ配信を実施

今年は初の試みとしてYouTubeでのライブ配信が行われた。出演アーティストのメッセージ・インタビュー動画だけでなく、グリーンステージ、ホワイトステージ、レッドマーキー、フィールド・オブ・ヘブンの4つのステージにて行なわれた約50組のパフォーマンスをライブ配信。現地苗場の模様を全世界に向けて配信したのだ。この新しいフジロック体験より、会場に行くだけでなく、家で楽しむという選択肢が生まれた。

また、会場でフジロックに参加している人にとっても、休憩中や待ち時間に別会場のライブを観るなどさまざまに利用することができる。今回のようにデジタルとアナログを組み合わせたことで、どのような相互・相乗効果を生み出すのか、今後の動きに注目したい。

さまざまな新しい企画なども盛り込みながら、今年も盛況に終わったフジロック。2019年は、7月26日から28日まで、おなじく苗場での開催が予定されている。来年以降も引き続き、苗場の地で新たなフジロックの伝説が生まれていくことだろう。

(取材・テキスト:Izumi Sakamoto)

 フジロックフェスティバル’18のオフィシャルフォトを一挙公開!
 

 


 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

ロンドン在住、フリーランスのライター/エディター/フォトジャーナリスト。日本の大学を卒業後、国外で日系メディアやPR会社に勤務。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や記事執筆、編集、撮影などを行う。

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