TikTokのバイラルから3,000人のホールへ — WHITE JAM「磁石」が示した楽曲の地力とSoundOnの実装力
2026年4月25日、東京ドームシティ内のKanadevia Hall(東京ドームシティホール)。WHITE JAM TOUR 2026「池袋サンシャイン」のグランドフィナーレに集まった約3,000人のフロアは、開演前から独特の高揚感に満ちていた。
幕が上がりシロセが声を放ち始めた瞬間、会場の空気が一段引き締まる。TikTokのフィードで断片的に触れていたあの旋律が、ホールの音響のなかで輪郭を持ち、ひとつの楽曲として立ち上がっていく。ショートムービープラットフォーム経由で入ってきたリスナーが、そのまま3,000人規模の客席を埋めた──この事実そのものが、いま日本の音楽産業で何が起きているかを端的に示している。
シロセの歌声は、力みのない発声のなかにも芯の強さがある。サビで一気に開く瞬間の説得力、語尾に残る微細なニュアンス。短尺動画では拾いきれない情報量を、ライブはきちんと伝えてくれる。TikTok発の楽曲ヒットが一過性のバイラルで終わるか、アーティストとしての持続性に転化するか──その境界線は、結局のところこのあたりにあるのだろう。
作家・シロセが書いた「磁石」という楽曲
WHITE JAMの現在地を語るうえで外せないのが、TikTokでの累計再生数が7億回を超えた代表曲「磁石」だ。
まず注目したいのは、ヒットの土台にある楽曲そのものの強度である。シロセはSnow ManやNissy(西島隆弘)など複数のメジャーアーティストへ楽曲提供を続けてきた書き手であり、業界内ではかねて作品力を評価されてきた作家でもある。「磁石」は、引き合いながら反発する男女の関係性を、独占欲や愛情といった生々しい言葉でつづったラブソングだ。N極とS極というありふれたモチーフを、リスナーが自分の物語を投影できる「切ない距離感」に落とし込んでいる点が、本作の核心と言えるだろう。
TikTokで広く拡散される楽曲は、しばしば「短尺で映える瞬間があるかどうか」という観点だけで語られがちだが、「磁石」のロングヒットを支えたのはむしろ古典的な作家性──メロディと言葉の説得力──だった。この点は強調しておきたい。
365日の連投と、SoundOnが灯した二度の追い風
ヒットの過程を時系列で振り返ると、「磁石」の歩みは偶然のバイラルというより、シロセ自身の地道な実装の積み重ねだったことが見えてくる。
シロセはこう振り返る。
「100個中90個は失敗した。それでも全部、とにかく頑張った。1日も投稿を休まなかった」
もともとTikTokやSNSは得意ではなく、何度もやめたいと感じていたという。それでも続けられたのは、「画面の向こうの一人ひとりに音楽を届ける」という発想を手放さなかったからだろう。
- 2025年3月末 シロセがTikTokへの毎日投稿を開始。最初の壁となる120万再生超えの動画が出始める。
- 2025年4月ダンスクリエイターによる上半身ダンス動画が拡散。本人アカウント(@shirose_whitejam)でも振り付け・リップシンクの投稿を重ね、4月25日の動画が1,000万再生を突破。
- 2025年7月〜11月振り付けと歌詞のフックが定着し、100万再生超えの動画が複数発生。11月には「今日、好きになりました。」出演メンバーの投稿を契機にトレンドが一般層へ波及。ペットアカウントやファミリー系アカウントにも広がり、900万再生超えの投稿が連続した。
連続投稿のなかで興味深いのは、当初批判的だった層がファン化していった現象だ。シロセ自身もこう述べている。
「最初アンチだったけどファンになった、という人が本当に多い。そういう人たちが今はライブにも来てくれている」
コメント欄にもアンチからの転向を綴る声が目立つ。毎日上がる動画と本人の丁寧な返信の積み重ねが、徐々に印象を反転させていったということだろう。
このプロセスを下支えしたのが、TikTokが運営するディストリビューションサービス「SoundOn」の存在である。「磁石」については2025年9月と11月の二度にわたってクリエイター投稿キャンペーンが実施されており、いずれのタイミングでも再生数の伸びが大きく加速した。SoundOnは単なる配信代行にとどまらず、TikTok内のトレンド分析にもとづいて適切なタイミングでクリエイターへ楽曲をつなぐプロモーション機能を備える。アーティスト主導の毎日投稿という「現場の努力」と、プラットフォーム側のマッチング機能が噛み合った結果として、二度の追い風が生まれた、と整理できるだろう。
こうした流れを受けて、「磁石」はSpotify Viral 50(Japan)やApple Music J-Pop Dailyチャートにランクイン。iTunes Top Songs(J-Pop)では世界16の国と地域でチャートインを果たし、TikTok内の熱量は海外チャートにまで接続していった。Kanadevia Hallのソールドアウトは、この一連の流れの帰結として位置づけられる。
セルフレーベル9年──「届け方」の哲学が結ぶ実
シロセはこう語る。
「ひとつの動画が話題になっただけでは、ライブの動員は増えない。SNSが苦手でも、毎日コツコツ努力した結果だ。何にも上手くいかない日々があった。「毎日頑張ったら、いつかヒットを出せるぞ」って、あの時の自分に言ってやりたい」
WHITE JAMは2017年に自身のレーベル「WHITE JAM Records」を立ち上げて以来、セルフプロデュース体制で活動を続けてきた。9年にわたり「自分たちが信じる音楽の届け方」を試行錯誤してきた蓄積が、TikTok時代になって高い解像度で結実している、と捉えることができるだろう。シロセはライブの総合演出から数秒のショート動画にいたるまで、自身の美学を一貫させている。ホールの舞台と手のひらの中の縦動画が地続きで設計されているところに、彼らの方法論の独自性がある。
「磁石」と「池袋サンシャイン」のヒットを追い風に、WHITE JAMは全国5都市でのZeppツアー開催も発表した。デジタルプラットフォームを味方につけながら、楽曲の地力とアーティスト自身の手仕事を貫いてきたチームが、いまどのような景色を描けるのか──Kanadevia Hallの夜が示したのは、TikTokにおけるトレンドから持続的なライブアクトへの移行を成功させたケーススタディとして、WHITE JAMの2026年が記録されるであろうということだった。
◾️各種プラットフォーム・SNS情報
・X
https://x.com/WHITEJAM_STAFF
・Instagram
https://www.instagram.com/whitejam_official/
・TikTok
https://www.tiktok.com/@whitejam_official
・YouTube
https://www.youtube.com/@whitejamnet
◾️リリース情報
4/18 release
WHITE JAM「I MISS YOU」
https://sndo.ffm.to/d5gg3ba
SoundOnについて
「SoundOn(サウンドオン)」は、TikTokが提供している音楽ディストリビューションプラットフォーム。2024年夏に日本で正式にサービスがスタートし、公平なライセンス条件のもと、アーティスト自らが楽曲を管理し、世界中の配信ストアへリリースできる仕組みを提供している。
また、楽曲をより多くのオーディエンスに届けるため、月間10億人以上のユーザーを抱えるTikTokコミュニティと連動した独自のプロモーション支援により、配信からヒットの創出まで、アーティストの活動を包括的にサポート。
ポッドキャスト概要:
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