筋肉少女帯、デビュー33周年記念ライブ開催「未来永劫とは言いませんが、なるべく長く筋肉少女帯をやりたいと思っています」

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Photo by コザイリサ

1988年6月21日にアルバム「仏陀」/シングル「釈迦」でメジャー・デビューを果たし、今年デビューから33年を迎えた筋肉少女帯。彼らは大きな成功を収めたバンドではあるが、結成当初から何度となくメンバー・チェンジを繰り返し、1998年から2005年にかけて活動を凍結したこともあるなど、歩んできた道のりは決して平坦なものではなかった。それでも筋肉少女帯が存続しているのは彼らが創出する世界観や音楽が唯一無二のものであり、それに多くのリスナーが魅了されているからに他ならない。

そんな筋肉少女帯は、今年11月3日に最新アルバム「君だけが憶えている映画」をリリース。さらに、「ベストセトリ!筋少デビュー33周年記念ライブSP」と銘打った単独公演を、11月28日に東京LINE CUBE SHIBUYAで行なった。アニバーサリー・ライブという位置づけに加えて、“ベストセトリ”という気持ちを惹かれるタイトル、会場は“旧渋谷公会堂”ということで、観たいと思ったリスナーは多かったようだ。チケットは瞬く間にソールドアウトとなり、同公演は華やいだ空気に包まれたライブとなった。

LINE CUBE SHIBUYAの場内が暗転してニューアルバム「君だけが憶えている映画」唯一のインスト曲「ロシアのサーカス団イカサママジシャン」が流れた瞬間客席は総立ちとなり、筋肉少女帯のメンバー達がステージに姿を表すと熱い拍手が湧き起こった。ライブはパワフルな「サンフランシシスコ」からスタート。黒い特攻服に身を包んでステージにスッと立ち、抑揚を効かせた歌声を聴かせる大槻ケンヂ。黒いバンダナ・マスクとニットキャップというミステリアスな姿で、ファットにウネるベース・サウンドを轟かせる内田雄一郎。’80Sメタル直系のグラマラスなヴィジュアルとテクニカル&エモーショナルなギター・プレイの取り合わせが最高にカッコいい貴公子橘高文彦。シックなデザインと相反するパンキッシュなデザインのジャケットを纏って、シュアなプレイを展開する本城聡章。強い存在感を放つ4人が並び立ったステージは壮観で、ライブが始まると同時に場内の熱気は一気に高まった。

その後は「メジャー・デビュー33周年記念ライブ、ありがとう! LINE CUBE SHIBUYA。僕は密室圏の人間なので、狭いところでギュウギュウしているほうがスナック芸っぽくて好きだけど、こういうところもいいね」という大槻の挨拶も交えつつどこか怪しさが漂うハード・チューンの「暴れておやりよドルバッキー」やメタリックなサウンドと今回サポートを務めた三柴理が奏でる都会的なピアノを融合させた「機械」、柔らかみのある哀愁を纏った「星座の名前は言えるかい」などをプレイ。凝ったステージセットや演出などは用いないストレートなライブでいながら演劇的な匂いがある彼らのステージは本当に観応えがある。筋肉少女帯が作りあげる非日常の世界に浸る快感を、今回もたっぷりと味わせてくれた。

ライブ中盤に入った3rdブロックでは狂騒感を放つ「元祖高木ブー伝説」、レトロかつ妖艶な「ハニートラップの恋」、高速で疾走する「ゾンビリバー」が続けて演奏された。こういったナンバーを聴くと筋肉少女帯の音楽は“はみ出し感”があって、それが魅力になっていることを感じずにいられない。様々な音楽的要素を巧みに活かして、キャッチーでいながらどこか得体の知れなさを漂わせる彼らの楽曲は強い病みつき感を備えている。そして、そんな楽曲達のエモーションをしっかりと表現する演奏力の高さも筋肉少女帯の武器になっていることは言うまでもない。

「筋肉少女帯と出会っていなかったら、僕の人生はどうなっていたかな? 僕は大学を2年で中退して、22才のときに筋肉少女帯でデビューしたんですよ。早いね、今となっては」という大槻のMCが入った後、4thブロックでは大槻のアコギの弾き語りによる「踊るダメ人間」と他のメンバーも交えた形で「日本印度化計画」を披露。さらに、フォーク・テイストを活かした「新人バンドのテーマ」とウォームなミディアム・チューンの「お手柄サンシャイン」が届けられた。“穏やかな筋肉少女帯”も魅力的だったし、大槻のMCやメンバー同士のやり取りに客席からは何度となく笑いが起こり、4thブロックは心地よさに溢れたセクションとなっていた。

「未来永劫とは言いませんが、なるべく長く筋肉少女帯をやりたいと思っています。そして、来世でもお会いしましょう!」という大槻の言葉と共に届けられた「イワンのバカ」からライブは後半へ。ヘヴィメタルの仰々しさを昇華して独自の爽快感を生み出した「イワンのバカ」の間奏で、橘高はフライングVを振り回すという派手なパフォーマンスを展開。場内のボルテージがさらに高まる中、「オカルト」や「トリフィドの日が来ても二人だけは生きていく」などが畳みかけるように演奏された。メンバー全員が織りなすフィジカルなステージングと躍動感に満ちたサウンドの応酬にオーディエンスのリアクションも激しさを増し、場内は熱く盛り上がった。

アンコールを求めるオーディエンスの手拍子に応えて再びステージに立った筋肉少女帯は、内田の甘い歌声をフィーチュアした「北極星の二人」を披露。1960年代の歌謡曲っぽい曲調も含めて、彼らの持ち球の多さには本当に頭が下がる。その後はラストソングとして、「釈迦」が演奏された。爽快感に溢れたサウンドは心地よく気持ちを引き上げる力を持っていて、オーディエンスは一体感と熱気に溢れたリアクションを見せる。「釈迦」でLINE CUBE SHIBUYAの場内を完全にひとつにまとめ上げて、筋肉少女帯はライブを締め括った。

アニバーサリー公演にふさわしい、充実したライブで楽しませてくれた筋肉少女帯。今回の公演を観て強く感じたのは彼らという存在、そして彼らの楽曲は時代を超えた輝きを放っているな…ということだった。独自の普遍性を備えた彼らは、デビューから33年という長い歳月を経ても色褪せることがない。と同時に、長いキャリアを積むことで現在の筋肉少女帯は彼らが本質的に持っている危うさと安定感が絶妙にバランスされて、より魅力を深めている。

そんな彼らだけに、まだまだパワーダウンすることなく先へ進んでいくに違いない。来年はバンド結成40周年、さらに再来年はメジャー・デビュー35周年という節目を迎えることもあり、今後の彼らの動きも本当に楽しみだ。

最後に、今回の「ベストセトリ!筋少デビュー33周年記念ライブSP」は12月5日までの間、Streaming+で配信される。様々な理由から会場にいくことが叶わなかった筋肉少女帯フリークはもちろん、彼らに興味がありつつちゃんと触れたことがない人にも視聴することを強くお薦めしたい。

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