工藤静香、アコースティックツアー・ファイナル公演の公式レポート到着

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撮影:福岡諒祠・池上夢貢(GEKKO)

工藤静香が、8月26日、東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で「工藤静香 Acoustic Live Tour 2023」を開催、7月1日の愛知・アイプラザ豊橋からスタートし、全国10会場のすべてでチケットをソールドアウトさせたツアーを完走した。

アコースティックセットで行われた本ツアーでは、これまでのヒット曲はもちろん、敬愛する中島ゆみきのカバーから、自身が作詞を手掛けた最新曲「勇者の旗」までの17曲を熱唱。ファイナル公演では、ピアノの伴奏でおニャン子クラブのデビュー曲「セーラー服を脱がさないで」を歌うサプライズもあり、LINE CUBE SHIBUYAに集まった2,000人のファンを沸かせた。

昨夏にソロデビュー35周年を記念した初のセルフカバーアルバム「感受」をリリースし行った全国ツアーは、バンドにストリングスカルテットを加えた豪華なものだったが、36年目の今年の東京公演は、ステージの上に30年来の付き合いだというピアニストでアレンジャーの澤近泰輔と、35周年ツアーにも帯同したヴァイオリニストのクラッシャー木村と工藤静香の3人だけという構成に。「着替えの時間の分、1曲でも多く歌いたい」と、衣装も薄紫色のドレス1着だけと、とことんシンプル。しかしシンプルだからこそ、より工藤の歌力が心に響くライブとなった。

「最後までよろしくお願いします」と笑顔で登場した工藤は、しっとりとした「雪・月・花」でオープニングを飾ると、ファンの手拍子のリズムに乗った「黄砂に吹かれて」で3階席にまで手を振り、一層手拍子が大きくなった「メタモルフォーゼ」までをいっきに歌い上げ大きな喝采を集めた。

ヒット曲の後に続いたのは、「違った女性像を楽しめるかなと思って並べた」というセクション。「かすみ草」は、一言一言を丁寧に紡いでいたのが印象に残った。そして工藤への楽曲提供を多く行い、工藤自身も大ファンを公言している中島みゆきの「見返り美人」と「化粧」という2曲のカバーで、女性の強さと弱さをせつせつと歌い上げたが、このカバー曲含め本ライブの17曲中7曲が中島みゆきが手掛けた曲ということからも、改めて彼女にとって中島みゆきの存在の大きさが伺われた。

ライブで歌うのが珍しい曲を固めたセクションでは、深田恭子と金城武をブレイクさせたドラマ「神様、もう少しだけ」挿入歌で、LUNA SEAの河村隆一が書き下ろした「きらら」と「in the sky」を2曲続けるという面白い構成も。また、「コアなファンに捧げる曲」という「裸爪のライオン」では、喜ぶファンから大きなコールの掛け声がかかった。

工藤の言う「アップテンポのロックみたいなコーナー」では、まずピアノとヴァイオリンが生み出す軽快なリズムに乗って「Jaguar Line」を力強く歌いあげると、その勢いにリズムセクションなどのバックトラックが加わり、「慟哭」「Blue Velvet」「嵐の素顔」といった大ヒット曲をセルフカバーアルバム「感受」のアレンジで披露。「嵐の素顔」では客席ギリギリまでステージサイドに歩み寄って歌ったり、顔のラインに沿って手をL字に動かす“あの”振り付けを見せて、会場を熱くした。

MCタイムには、会場のファンからかかる声にきさくに応えて交流を図っていたのも印象的だった。男の子の「しーちゃん、「Again」歌って~!」という声に、「ママの付き添いできたの?」と問いかけると、「そう。でも、僕が好きなの!」という小さなファンのリクエストに「OK!」といってアカペラで「Again」をワンコーラス歌ってみせた。「夏の曲がききたい!」というリクエストに、ピアノの澤近が聞き覚えのあるリズムをきずみだすと、客席も大興奮で手拍子。工藤は笑って「リクエストコーナーではない!」と言いながらも、マイクスタンドにマイクをセットすると、おニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」を振り付きで歌い、ファンを沸かせた。客席には、海外からのファンの姿も。彼らが大きな声でアピールすると、「香港や台湾からも来てくださっていますね」と優しい表情を見せていた。

本編ラストを飾ったのは1994年のアルバム「Expose」からのスローバラード2曲。「寂しい夏の歌」という美しいメロディの「I’m nothing to you」は、ハミングから高音、そしてささやくような歌声と、彼女のさまざまな表現が堪能できた。そして最後は「Lotus~生まれし花~」をしっとりと歌いあげた。

アンコールには、ドレスの上に自身が描いた花をデザインしたTシャツを着て登場。8月2日にリリースされたばかりの新曲「勇者の旗」を歌うことを告げ、「「勇者の旗」は、ドラマ「科捜研の女 season23」主題歌です。そしてカップリングの「孤独なラプソディー」には、とても高い音があって細胞がピューンと起きた感じがしたの」と新作のエピソードを語ると、すかさず「少し歌って!」という声が客席から上がり、「いっぱい歌ったのに、まだ歌わせますか(笑)」と言いながらも、「少しだけ」とアカペラで「孤独なラプソディー」のサビをワンフレーズ歌った。さらにそこで、「今年は、もう1曲配信する予定です。それはここでは歌えないけれど」と嬉しいお知らせも飛び出した。そして、「今日はお越しいただいてありがとうございました。私自身のお守りになっている歌です」と、明日への希望を自身で歌詞に託した「勇者の旗」を力強く歌いツアーの幕を閉じた。

1987年8月にシングル「禁断のテレパシー」でソロデビューして、36年。誰もが知るヒット曲を連発しながら真摯に歌と向き合い、セルフプロデュースを経て工藤静香というアーティストを確立させてきた。36年経った今も歌声に衰えはなく、さらに大人のアーティストとしての余裕と艶が増している。その優しさと強さ、そして人生の充実が彼女の歌には反映されているのだろう。シンプルなアコースティックセットだからこそ、そのことがより伝わる公演だった。

今後の工藤静香は、9月2日に1993年の「RISE ME TOUR」以来30年ぶりとなる台湾公演「工藤静香 2023 CONCERT in TAIPEI」を行い、12月には恒例の「工藤静香 Christmas Dinner Show2023」を全国6都市で開催予定。

(取材・文:坂本ゆかり)

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