片平里菜の高い純度を生かした映画製作〜映画『パパのお弁当は世界一』鼎談 主演・渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)×監督・フカツマサカズ×企画 プロデュース・松崎崇(ポニーキャニオン)

インタビュー フォーカス

左から:松崎崇さん、渡辺俊美さん、フカツマサカズさん

父親が作るお弁当を娘がTwitterに投稿したことをきっかけに、お弁当を通じた父娘の心温まるエピソードが反響を呼び、その投稿をモチーフに約半年間というスピードで製作・公開された映画『パパのお弁当は世界一』。サン・セバスチャン国際映画祭出品、台湾、香港での劇場公開が決定する等大きな話題となっている。映画製作からタイアップという通常の流れではなく、主題歌である片平里菜「なまえ」のミュージックビデオ製作から発展して映画となった今作は、映画製作の新しいアプローチとして注目を集めている。今回は映画初主演となる渡辺俊美さん(TOKYO No.1 SOUL SET)、監督のフカツマサカズさん、そして企画・プロデュースを手掛けたポニーキャニオン 松崎 崇さんに映画化の経緯から、企画の発端になったアーティスト・片平里菜の魅力まで話を伺った。

  1. 片平里菜「なまえ」のデモとみどりちゃんのお弁当ツイート
  2. 役者・渡辺俊美と映画経験ゼロのスタッフたちの情熱
  3. 家族映画は永遠になくならない〜ロングラン上映への想い

 

 片平里菜「なまえ」のデモとみどりちゃんのお弁当ツイート

――最初に映画『パパのお弁当は世界一』製作への経緯をお伺いしたいのですが、きっかけは何だったんでしょうか?

松崎:まず片平里菜のシングル『なまえ』のデモができあがりまして、その後、リリースを考えたときに、レコード会社からすると必要条件とまではいかないですが、タイアップがすごく重要なものになってくるんですね。ただタイアップって基本的に前向きな歌詞で、ポジティブでアップテンポな曲が好まれる中で、『なまえ』はミドルバラードでコンセプトは家族だったので「タイアップどうしよう?」と考えていたときに、Twitterでみどりちゃんという普通の女子高生の、お父さんの作るお弁当についてのツイートがすごく盛り上がっていて、「これとタイアップできるかも」と思ったんですよね。

それで、『なまえ』のミュージックビデオ(MV)と併せて、「ショートムービーみたいな作品をお願いできませんか?」とフカツ監督に相談しました。そのショートムービーは当初Twitter上での親子のやり取りをドラマ化するみたいな感じだったので、父親役と娘役のキャスティングについてスタッフで色々意見を出し合ったときに、「やっぱりお弁当と言えば、今日本で一番有名なあのミュージシャンだろう」と…(笑)。

――渡辺俊美さんですね(笑)。

松崎:はい(笑)。それで俊美さんの名前が挙がりまして、すぐに片平のマネージャーさんが俊美さんに連絡したら、オッケーをいただけて。そこがスタートですね。

映画『パパのお弁当は世界一』

――フカツマサカズ監督とは以前からお仕事をされていたんですか?

松崎:フカツ監督とは片平の『煙たい』『結露』のMVや、最近はライブDVDも撮っていただいたりしています。『なまえ』はとても良い曲でしたから「これはもうフカツ監督で!」と満場一致で監督にお願いしました。

――フカツ監督はMVとショートムービーの依頼が来たときにどう思われましたか?

フカツ:普通のMVだとスルーされちゃうので、最初の打ち合わせから「何か変わったビデオにしたいよね」みたいな話はしていたんですよね。そんなときに松崎さんがみどりちゃんのツイートを見つけてきたんですよね。

松崎:結構、打合せはしましたよね。

フカツ:すごくしましたね。最初は15分くらいのショートムービー風で、最後に上手く『なまえ』が流れて来たらいいよねと言っていたのが、松崎さんが「30分くらいにしましょう!」とか「60分を越えると劇場で上映できるらしいですよ!」とかどんどん言ってきて、尺が伸びていきました(笑)。

――松崎さんは映画の人じゃないのに、よく会社で企画を通して映画化まで持っていけたなと思いました。

松崎:社内でも娘を持つ父親層にはこの企画がすごく刺さったんだと思います。「俺も娘いるからさ」みたいな感じで。で「10分15分くらいの短いもので終わらせるんじゃなくて、せっかくならきちんとした形にした方がもっと広がるんじゃないか?」と逆提案されたんです。

――なるほど。ある意味、松崎さんが動かされた部分もあったんですね。

松崎:ええ。あと俊美さんやフカツ監督といった素晴らしいキャスト・スタッフの方たちが揃いましたから、ショートムービーで終わらせるのはもったいないなとも思いました。

――松崎さんにとって映画制作は初めての経験でしょうから、色々ご苦労があったんじゃないですか?

松崎:もう死ぬほど大変で…。本当にお二人には頭が上がらないというか無茶なことばっかりお願いしました。俊美さんもとても忙しいタイミングだったんですけど、無理してスケジュールを調整していただきましたし、あと撮影日程もタイトだったので、最初のマンションのシーンとか香盤上は12時に終わる予定だったのが結果的に終わったのが朝4時とか。

フカツ:ご飯作るシーン、大体明け方に撮っていましたよね。でも一番やりたかったシーンなので、そこは寝ないでやりたいっていうか。まあスタッフがよかったなって思いますね。

松崎:しかも、俊美さんに監督が「明日もあると思うんですけど、僕は今撮りたいと思います」みたいな直談判というか提案をして、そうしたら俊美さんも「やりましょうよ」と快く引き受けてくれて。本当に感謝しかないです。

渡辺:でも、辛かった思い出は全然ないんですよ。僕自身、本格的な演技は初めてですし、初めてだから分からないところも余計楽しんでやったという記憶ですね。

――渡辺さんはオファーが来たときに迷いはなかったんですか?

渡辺:いや本当にMVの撮影だと思っていましたし、「セリフがなければオッケー」みたいな感じだったんですけどね。あと里菜ちゃんからのオファーだったので「是非協力させてください」って気持ちでした。その後、メールが来たときに「主演」となっていて「主演? MVに主演とかなくない? なんなんだろう…」みたいな(笑)。そのときはスルーしていたんですが、ある朝にTwitterのタイムラインを見たら、映画の話題で盛り上がっていて、そこで初めて「映画主演だって…ちゃんとやんなきゃ」って思いました(笑)。

――そこで話が違うとはならなかった?

渡辺:自分がどうのこうのというよりも、里菜ちゃんのことを応援するぞという気持ちは変わりませんでしたから。そうしたら謙虚になれるし、そのままずっと謙虚なままでいたような感じがします。

 

役者・渡辺俊美と映画経験ゼロのスタッフたちの情熱

――松崎さんとフカツ監督は役者としての渡辺さんをどう見ましたか?

松崎:すごく自然体というか、その感じが素敵だなと思いましたね。

フカツ:なんか力が抜けている感じですよね。ぶっちゃけ俊美さんは役者の方ではないので、そこがすごく良かったなって思うんです。でも、俊美さんも息子さんにごはんやお弁当を作っていたので、お父さんの気持ちが分かるというかバッチリはまったのかなと思いますね。

渡辺:僕は役者が本職じゃないですし、例えば、福山雅治くんや星野源くんみたいに演技をしよう、それに立ち向かおうとか、そういう気持ちは全くなくて(笑)、単純に監督はいつもプロモーションビデオを作っていて、音楽・ミュージシャンとの接点はすごくある人だから、もう全て任せようと思っていました。もしダメだったらダメ出しは来るだろうし、逆に自分でこう表現したいということは、我を出すというより、「父親としての自分だったらこうだよ」というようなニュアンスを事前に監督と話しました。あとは編集に助けてもらったと思いますけどね。全部1カット2カットセリフが違っていたりして。終わった後「多分編集大変だわ」って思いました(笑)。

映画『パパのお弁当は世界一』渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)

フカツ:いやいや(笑)。僕と一緒にやったことがある人は分かると思うんですが、MVも本当にザックリとしか決めずに撮影しちゃうタイプなんです。コンテとか一切無いですし、逆にリアリティがあるのでアドリブが結構好きなんですよね。この映画ってある種感動モノですけど、日本映画にありがちなお涙頂戴みたいな作品にはしたくなかったですし、リアルなツイートの話なので、そのリアルな感じは大事にしたかったんです。そういう意味では結構アドリブっぽい感じで撮影していました。

あと特殊なのは、スタッフがほとんどみんな映画経験ゼロの人たちなんですよ。スタッフやカメラマンも、全部MVの人で集めちゃっているので。ですからみんな手探りなんですけど、その分すごくアットホームというか、撮影はやりやすかったですね。映画のルールに乗っ取って撮るみたいな感じじゃなくて、「どうすれば良いんだろうね」みたいな感じでやっていたというか。

渡辺:僕もそれがすごく良かったです。映画に慣れていた人は音声さんだけですよね。そういう映画のプロの方の仕事を見られたのも、すごい勉強になりましたし、映画に関してはあまり経験ないのかもしれないけれど、映像を撮ることに対して好奇心旺盛で、集中力のあるスタッフたちとの撮影は一緒にやっていてすごく楽しかったです。「僕も頑張ろう」って思いましたね。

――企画から映画完成までかなりのスピード感ですよね。

フカツ:そうですね。Twitterが映画になったって今まであんまりないと思うんですが、やはり時間が経つとフレッシュじゃなくなっちゃうので、あのツイートが出たのが2016年12月末ぐらいで、その3日後ぐらいに「これ使いましょう」という感じにはなっていて、2017年2月から撮り始めました。

松崎:事前に原作となる書籍やマンガ、アニメだなどがあって、その映画化というのが本来の道筋だと思うんですが、原案はTwitterだとしても、原作がなかったので、それも含めて監督に相談して、監督から大野敏嗣さんというミュージックビデオのディレクターをご紹介いただきました。

フカツ:大野くんは僕と同じ仕事をしているんですが、脚本を書いたことがなかったんですよ。でも、以前「脚本を書いてみたい」と言っていたのを思いだして、「やる?」って聞いたら「やりたいです!」って言うから(笑)。

松崎:でも、その上がってきた脚本を読んで「すごいな」って思いました。実際僕も目を通すまで緊張していたんですよ。酷い脚本が来ちゃったらどうしようと(笑)。だって1ツイート3行か4行ぐらいのものを何ページもの脚本に落とし込まないといけないので、熟練の人でも大変だろうなと思っていたんです。でも、本当に見事な脚本で驚きましたし、その部分も含めて監督にご相談して良かったなと思いました。

フカツ:ただ、みどりちゃんとお父さんには実際に会って取材しました。あと、LINEで「何か面白い話ない?」とみどりちゃんに訊ねたりして。そこから面白いネタをピックアップして話を膨らませました。例えば、普通の映画だと製作委員会とかやっぱり入っちゃうじゃないですか? 色々な出資者がいると、もっと「脚本のここを直せ」とかすごく言われる可能性があるんですが、今回は関わる人間が少人数だったので、全てが速いっちゃ速いんですよね。前例が本当にない感じで。

松崎:絶対どこ探してもないですよ、こんな映画の作り方(笑)。

フカツ:この映画が転けたら、松崎さんは会社からリストラされるんじゃないか…って思うくらい腹を括ってやってくれたんだなと思います。

松崎:いや今でもドキドキしていますよ(笑)。ポニーキャニオンには映画のプロフェッショナルがたくさんいますから、とにかくそういった人たちにアドバイスを求めました。僕もこの会社に入って10年くらい経ちますので、音楽の仕事に関しては流れが把握できていますが、映画って本当に分からなかったので、勉強も兼ねて映画のミーティングに参加するんですが、会議で話される単語から全然分からない始末でした。

映画『パパのお弁当は世界一』松崎崇(ポニーキャニオン)

――映画と音楽でたくさん違いがあるかと思いますが、決定的に「違う」と思ったことは何ですか?

松崎:音楽はやはりアーティストありきで、アーティストが作りたいものを具現化させていくものだと思うんですが、映像って監督がいて、その監督からどうやって広げていくかという発想なんですよね。つまりスタッフから始まっているプロジェクトなので、割と全員がフラットに意見し合える気がしたんですよ。そこが大きく違うと思いました。

A&Rはチラシとかをいつも作るじゃないですか? 音楽のときと同じ感じで映画の方も仮チラシを作って、「こんな感じで進めようと思います」と映画スタッフに見せたら、「全然わかってない」って滅茶苦茶ダメ出しされたんですよね。キャッチが見づらいとか、スタッフの名前のバランスとか、公開日の入れ方とか、あとはシンプルなフライヤーだったんですが、「お弁当というテーマだったらイラストを入れて温もりがある感じの方がいいんじゃないの?」とか。今まで独りよがりでガンガン勝手に進めていたのが、こうやって色々な人と意見交換をしてやっていくのはすごく楽しかったですし、勉強になりました。

――松崎さんにとって全て初めてのことだったんですものね。

松崎:監督にも「こういうことらしいです」としか言えなくて(笑)。「60分以上あればなんとか上映できそうです」とか。

――(笑)。

フカツ:あのときは上映する場所も決まってないまま撮っていましたからね。

松崎:決まりそう、ぐらいの話はしていたんですけどね。最初は1カ所ハコを借りて上映できたらいいなと思っていたんです。話題になれば徐々に広まるんじゃないかなと思っていたので、監督にも「たぶん大丈夫です」と伝えて(笑)。

フカツ:作ったはいいけどどうなるんだろうな、と思いながら撮っていましたからね。

――撮っても上映できない映画は山ほどあると聞きますからね。

松崎:そうみたいですね。ライブだったらライブハウスさえ押さえちゃえばできたりするじゃないですか? ですから劇場はいい意味で敷居が高いんだなと思いました。

――クラウドファンディングを利用したことも特徴的ですよね。

松崎:劇場公開にも色々とお金がかかる中で、製作委員会があるわけじゃなかったので、リアルにお金がなかったんですよ。それでも劇場数を増やしたいというストレートな気持ちがあったので、「みんなでこの映画を一緒に盛り上げていきましょう!」と呼びかけて、本当にありがたいことに200万円近く集まりました。ここまでクラウドファンディングを求めていた映画もないんじゃないかなと思うぐらい、ぴったりなシステムでしたね。

――やはり映画は想像以上にお金がかかりますか?

松崎:そうですね。一般的な映画に比べたら、かなり破格な価格で監督および映像チームの方にやってもらったんですが、MVとは次元が違うというか、MVが1日で撮るところ今回の映画では1週間くらい撮りましたから単純計算で7倍ですよね。しかも朝から晩までやっていたので、やっぱりかかりますね。

 

家族映画は永遠になくならない〜ロングラン上映への想い

――映画『パパのお弁当は世界一』はサン・セバスチャン国際映画祭へ出品されましたが、どのような経緯で出品されることになったんでしょうか? 

松崎:弊社の海外担当が、ヒューマントラストシネマ渋谷に観に来てくれて、「すごくいい映画だね」と言ってくれていたんですね。それで「海外にいける気がするから色々出してみるよ」という話になって、たくさんある弊社の作品の一つとして、世界各国の映画祭にエントリーしてくれました。まずは社内の身近な人が作品を観て感動してくれて、心から良いと思ってくれると、プレゼンするときにも気持ち乗ると思いますし、そういったみなさんのサポートもあって、サン・セバスチャン国際映画祭という有名な映画祭に出品していただいたことは非常に光栄でしたね。

――フカツ監督は現地に行かれたそうですね。

フカツ:はい。まず、僕は映画祭に出していることすら聞いてなかったので、急に松崎さんから「ノミネートされたみたいです」って連絡がきて、それでもあんまりよくわかってなかったんですよね。飛行機に乗ったときも、「何かの映画祭なんだな」くらいの結構軽い気持ちだったんですけど、「フカツさん、わかってないかもしれないですけど、これはものすごいことなんですよ!」「みんなが憧れるところに普通の人の7段飛ばしくらいで行っていますよ!」と言われて、「そうなんだ」と思って(笑)。

――(笑)。

映画『パパのお弁当は世界一』フカツマサカズ

フカツ:サン・セバスチャンに着いたら、街全体が映画祭一色になっていて、そこで初めて「結構すごいところに来ちゃったんだな」って思いましたね。空港に降りたら迎えの車が来るんですよ。

――現地のメディアからインタビューもされていましたよね。

フカツ:そうですね。サン・セバスチャンは食の街で、僕は美食映画部門(キュリナリー・シネマ部門)で招待されたんですが、初日の上映は、映画を観たあとに、レストランで映画にちなんだ料理をシェフが出すという高価なチケットだったんですよね。それで100人くらい観客が来て、上映前に挨拶をして、上映後に質問会みたいなのがあって、そこで「お父さんがお弁当・料理をつくることは日本では珍しいことなんですか?」とか、「日本ではお父さんは娘に嫌われている存在であるというのは本当ですか?」とか、文化の違いみたいなことをよく聞かれました。ただ、映画を観たときのリアクションは想像以上に大きくて感動しましたね。こんなに笑ってくれるんだって。お父さんがキャベツの千切りを練習しているところは大爆笑でした。

松崎:日本ではそのシーンでは笑いは起こってなかったですよね。

フカツ:あとは、「おいしかったよ」と娘に言われて新聞をくしゃくしゃにするところとか爆笑でしたね。

渡辺:文化が違っても面白さは伝わったということですね。

フカツ:ええ。あと、「音楽の使い方が面白いですよね」というような話もされました。音楽を作ってくれた石崎光さんと話し合って、最後に片平里菜ちゃんの曲が流れることは決まっていたので、そこを引き立てるためにも、できるだけ音数はシンプルに少なくしたいと言っていて、ギター1本で音を付けてもらったりしたんですよね。

松崎:石崎さんには片平の曲のアレンジもやっていただいていて、映画でも、監督としっかり打ち合わせをしていただいて、イメージをかなり具体的にカタチにしてくださいました。

フカツ:画が出来上がってから作ってもらっている曲も結構多かったので、音のタイミングを合わせてくれるんですよね。「この尺にハマる音がほしいです」というようにリクエストしたので収まりはいいんですよね。

松崎:一番印象的なのは、最後のお弁当を作るシーンじゃないですか? 10秒くらい無音になるんですけど、あの間の使い方は監督らしいと言うか、エッジ効いていると思いました。

渡辺:音楽が好きな人特有の作り方というか、マーティン・スコセッシもそうだし、ジム・ジャームッシュとかウディ・アレンとか、自分でも音楽やっている人とかは、やっぱりああいう間が上手いですよね。

フカツ:料理を作る音もけっこうリズミカルじゃないですか。聞いていても飽きないんですよね。

――この映画のきっかけにもなった片平里菜というアーティストに対して、渡辺さんとフカツ監督はどのような印象を持っていますか?

片平里菜

渡辺:僕はデビューするちょっと前に福島で会っているんですね。そのときは震災後だったので「すごくたくましい子だな」と思っていたんですが、福島から上京するという話を聞いたときに、野心、向上心も含めて自分の意見をきちんと持っているんだなと感心しました。今では福島に行くと弾き語りの女の子はみんな里菜ちゃんの真似をしているんですよ。そのくらい里菜ちゃんは影響を与えているし、福島の子たちにとって里菜ちゃんは大きな存在なんだなとすごく感じます。これからもかっこよく成長していって欲しいですね。

フカツ:里菜ちゃんは自然体というか、いつも変わらない、そのまんまな感じの人なんですが、自分の意見を言うときはビシっと言うし、本当に正直な人ですよね。僕は里菜ちゃんのことが大好きで、ある種ファンなんです。今は音楽も使い捨てられるというか、すぐ忘れられちゃうようなものが多いですが、里菜ちゃんの書くような曲たちは長く残ると思いますし、より多くの人たちに浸透してほしいですよね。

――渡辺さんもデビュー前に出会った片平里菜さんと映画で仕事をするなんて感慨深いものがあるんじゃないですか?

渡辺:そうですよね。ライブはよく一緒にやっていましたが、まさかこういう形でご一緒するとは…前は普通にしゃべれたんですけど、今は緊張しちゃって(笑)。

――(笑)。

渡辺:だけどすごく嬉しいです。一人でも多くの人に里菜ちゃんを知ってもらいたいという想いが僕は強いですから。

――松崎さんは担当者として、片平里菜というアーティストをこれからどのようにサポートしていきたいとお考えですか?

松崎:俊美さんも、監督も言っていただいた通り、片平はありのまま感がすごく魅力的な子だと思うので、今回の映画もそうですが、彼女が作った音楽を1ミリも濁すことなく、ストレートに表現するのが多分一番良いと思うんですよ。野菜も鮮度の高いものはそのまま食べた方が美味しいみたいな、そんなアーティストだと思うので、何もやらないということじゃないんですが、今後もできるだけ彼女から生まれてくる純度の高いものをストレートに表現するサポートができれば、自ずと色々な人に片平の音楽が伝わるんじゃないかなと思っています。


DVD「パパのお弁当は世界一」
DVD「パパのお弁当は世界一」
2018年1月17日発売
[DVD+CD]PCBP.53680/4,500円+税
DVD:本編+メイキング&インタビュー
※映画撮影風景、スチール撮影の様子、6/10初日舞台挨拶密着、出演者インタビュー等たっぷり収録
CD:サウンドトラック収録

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