ソニーミュージック、音楽物販企業を買収。音楽業界はマーチャンダイズ戦略で世界を狙う

2019年9月9日 12:50

ソニーミュージック・グループのイギリス支社ソニーミュージックUKは、ロンドンに拠点を構え、20年以上の実績を誇る音楽マーチャンダイジング専門会社「コントラバンド」(Kontraband)を買収した。

コントラバンドは、アーティストのグッズの製造、流通、販売を世界規模で行なってきた。これまでカミラ・カベロやビョーク、Bloc Party、Bring Me The Horizon、ニック・ケイヴ、イギー・ポップ、Superorganism、トム・ミッシュなど多数のアーティストのグッズを手がけている。
 

「コントラバンド」(Kontraband)


ソニーミュージックUKは、買収の目的は音楽ビジネスの成長領域であるマーチャンダイジングで、同社の存在感を高め、基盤を強化することとしており、今後コントラバンドはソニーミュージックのレーベルとアーティストとコラボレーションしていくと説明する。

ソニーミュージック・グループがマーチャンダイズ専門会社を買収するのは、今年で2件目となる。
 

メジャーレコード会社で進むマーチャンダイズ戦略

 

「スレッド・ショップ」(Thread Shop)


グローバルでのソニーミュージック・グループは、社内でインハウス・マーチャンダイジング会社「スレッド・ショップ」(Thread Shop)を運営している。

今年8月、スレッド・ショップはエンタメ業界のマーチャンダイジング専門会社The Araca Groupの音楽物販部門を買収した。

The Araca Groupはレッド・ツェッペリンやピンク、ZAYN、デュア・リパ、ブリトニー・スピアーズ、オフスプリングなどの音楽物販やマーケティングを手掛けている。今後は、コントラバンドもこのスレッド・ショップとの連携を図る。

マーチャンダイジングは近年、アーティストやレコード会社にとって、収益源やブランディングを確立するための重要な戦略の一つとなっている。

特にメジャーレコード会社では、この数年でマーチャンダイジング企業の買収が進んでいる。

ワーナーミュージックは2018年10月、ドイツのEMPマーチャンダイジングを買収した。ワーナーミュージックでは数年前から社内でマーチャンダイズやファンクラブ、チケットセールス、ECなどを包括的に取り組む「アーティスト・サービス」部門の統合を進めている。
 

Bravado


米国ユニバーサルミュージック社内のファッション・マーチャンダイズ・エージェンシーのBravadoは2019年1月にEpic Rightsを買収している。
 

メジャーレコード会社が運営するマーチャンダイジング企業
ユニバーサルミュージック:Bravado、Epic Rights
ソニーミュージック:スレッド・ショップ、コントラバンド
ワーナーミュージック:EMP


現代の音楽シーンにおいて、ライブ毎に音楽物販の取り扱いを行うというような業務だけの時代は終わった。特に、グローバル化が進む音楽ビジネスにおいて、マーチャンダイジングの役割は多角的に拡張している。

マーチャンダイジングの担当チームや専門企業は、グッズのクリエイティブやブランド戦略、マーケティングの機能を持ち、ライセンス契約、ポップアップショップの運営、販売チャネル開拓、ECシステムの構築、流通のインフラ構築、顧客データの分析など、戦略的な役割を担うことが増えている。

さらにVRやARなど先進的テクノロジーを活用したショッピング体験や製品開発なども視野に入れるなど、未来の収益化に向けた取り組みにも行い始めている。

マーチャンダイズ戦略に取り組む理由は幾つかあるが、一つはオーディエンスや購入者のデータが獲得できるようになったことは大きい。

ストリーミングの普及や、SNSやモバイル利用の増大によって、レコード会社は以前は不可能であったファンの可視化が実現可能になった。データを取得して、最適なオーディエンスや音楽ファンを見つけるだけでなく、適切な市場や購入行動も把握できる。こうしたインサイトは、アーティストのブランド戦略や、レーベルやマネジメントの収益拡大における機会拡大の可能性を拡げてくれる。

もう一つの側面としては、レコード会社がアーティストに提供するサービスにおいても重要な付加価値となる。レコード会社が持つマーチャンダイズやECのインフラを活用することで、アーティストはファンに対してグッズ販売を行いやすくできる。小売ブランドとアーティストとのライセンス契約や、ポップアップショップの企画や運営も、レコード会社がアーティストに提供するサービスの一貫となっていくはずだ。

さらには中長期的な視点でアーティストのロイヤルファンを開拓するためにもマーチャンダイズの活用は欠かせない。こうした理由からレコード会社がマーチャンダイズも強化し始めている。ストリーミングするリスナーだけを追っていても音楽のファンは増やせない。マーチャンダイズは既存の役割やシステムから進化し、戦略的な取り組みへのシフトが始まっている。


 

jaykogami
記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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