ソニーミュージックがポッドキャスト・ビジネスに進出、異色の新会社を設立

2019年7月3日 19:05
ソニーミュージック

ソニーミュージックはポッドキャストのジョイントベンチャーを設立し、急成長し続けるポッドキャストのビジネスに進出する準備を始めている。

ソニーミュージックが新設したポッドキャスト・ベンチャー「Three Uncanny Four Productions」はニューヨークにオフィスを構える。共同創業者には、ポッドキャスト・プロデューサーのアダム・デヴィッドソン(Adam Davidson)と、ローラ・メイヤー (Laura Mayer)が参画する。ソニーミュージックは出資額を明かしていないが、新会社の株式は50%がソニーミュージック、デヴィッドソンとメイヤーがそれぞれ25%を持つ。

新会社は主に、オリジナルのポッドキャストコンテンツの制作とディストリビューションを行う。ジャンルとトピックも多岐に渡り展開される予定だ。

ソニーミュージックはポッドキャストコンテンツの収益化、ディストリビューション、マーケティング、セールス、データ分析に人材を提供しコンテンツ制作を支援する。デヴィッドソンとメイヤーが新会社のリーダーとなりクリエイティブ面を統括し、人材育成とストーリーテリングに注力する。

Three Uncanny Four Productionsとソニーミュージックはすでに新会社の人材も募集し始めている。
 

 

ポッドキャスト・プロデューサーという仕事


ここ数年、テック会社やメディア、ベンチャーキャピタル(VC)の多くが熱心かつ急激に注目しているポッドキャスト市場は、成長機会が見込める領域として投資や人材流入、コンテンツ開発が後を絶たない。すでにSpotifyは、今年からポッドキャストを音楽と並ぶ事業領域として、ポッドキャスト・ビジネスを本格化させてきた。

今年2月には、オリジナルなポッドキャスト・コンテンツ制作のスタートアップ「ギムレット・メディア」と、ポッドキャスト・ディストリビューターの「Anchor FM」を買収。さらに3月にはプレミアム・ポッドキャスト制作で知られるスタートアップ「パーキャスト」を買収した。

Spotify Japanでもオリジナル・ポッドキャスト番組「三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast」と「中島ヒロトのLIFE ALBUM」 の2つの音楽番組の配信が始まっている。

 


すでにポッドキャストやオーディオコンテンツが普及してきた感のある北米では、デヴィッドソンは音声コンテンツ制作ではベテランとして知られ、2008年から公共ラジオ「NPR」で経済ポッドキャスト番組「Planet Money」を立ち上げ、人気ポッドキャストの一つに成長させた実績がある。

 


この番組をデヴィッドソンと共に立ち上げたアレックス・ブルムバーグ(Alex Blumberg)は、2014年に「ギムレット・メディア」をマット・リーバー(Matt Lieber)と共同で創設し、2019年にはSpotifyに買収されることとなる。デヴィッドソンはギムレット・メディア制作で「Surprisingly Awesome」のホスト役を務めたという繋がりもあるほど。今後、Spotifyとギムレットと共同で新しいプロジェクトを始めることも期待できる。

さらに新会社とは別にデヴィッドソンは独自のポッドキャスト番組を制作中だ。最近ではサブスクリプション型ポッドキャストサービス「Luminary」(ルミナリー)で、新しい経済番組「The Passion Economy」をに独占配信し始めたばかりだ。

 


デヴィッドソンはポッドキャスト・プロデューサー職の他にジャーナリストとして活動しており、現在はNew Yorkerでライターとして活躍しているが、今後はポッドキャストに専念していく。New Yorker以前はニューヨーク・タイムズで経済ライターを務めていた経歴を持つ。

メイヤーはニューヨークの公共ラジオWNYCでラジオ・プロデューサーとして番組制作のキャリアを始め、その後はポッドキャスト・ホスティング会社「Panoply Media」(パノプリー・メディア、現Megaphone)でポッドキャストの制作を統括するプロデューサーとなる。

Panoply Mediaはポッドキャストを配信したいメディアや制作会社、さらにポッドキャストに広告を出したい広告主に対して、ポッドキャストのホスティングサービスやデータ分析機能、オーディエンスデータを活かしてポッドキャストに差し込むターゲティング広告のソリューションを提供している、ポッドキャスト・テクノロジー会社だ。2019年にPanoply Mediaは「Megaphone」に社名を変更している。

Panolyの共同創業者アンディ・バウアーズ(Andy Bowers)もデヴィッドソンと同様にポッドキャスト・プロデューサーでありジャーナリストとして活躍している。以前は(これもデヴィッドソンと同じ)NPRでホワイトハウスや大統領選挙のレポーターや、ロンドン支局やモスクワ支局の局長も務めていた人物が今はポッドキャスト・テクノロジーをリードしている。

 

ポッドキャストも視野に入れる音楽業界


Spotifyを例にあげるまでもなく、音楽業界やレコード会社もポッドキャスト市場に関心が高まっていることがJV設立からも見えてくる。またポッドキャストを制作するプロダクションやメディア、広告またはデータ分析を提供するB2Bポッドキャスト・スタートアップの起業家にとっては、音楽業界とのジョイントベンチャーは、VCからの資金調達を狙う以外の別の選択肢になるかもしれない。

参考記事:【最前線】「音声コンテンツ」の黄金時代がやってきた

とはいえ、音楽業界やレーベルは、ポッドキャストの市場や制作現場では新参者だ。ポッドキャストが成長領域だからといって手を出しては、失敗するか、成長まで時間がかかるだろう。制作手法やディストリビューションは音楽のそれとは全く異なるという現状を認識しなければならない。またオーディエンスや広告を理解するには、ポッドキャストの専門家と手を結ぶといった、運営体制も考えなければならないだろう。

ユニバーサルミュージックは今春、プレミアム音声コンテンツを制作する「Wondery」と提携して、オリジナルのポッドキャストを制作していくことを発表した。ポッドキャストではユニバーサルミュージックのカタログやアーティストを軸にした番組が制作される予定だ。

Wonderyはドラマ型ポッドキャストで人気を集めている音声コンテンツのスタートアップで、全米のポッドキャスト・パブリッシャーでは第4位となるオーディエンスを抱えている。特に「犯罪」カテゴリーのポッドキャストには定評が高く、過去に制作した『Dirty John』はNetflixでドラマ化された。Wonderyには映画スタジオの20世紀フォックスやAdvancit Capitalが出資している。

 


 

jaykogami
記事提供All Digital Music

Jay Kogami(ジェイ・コウガミ)
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