Superfly、デビュー15周年を記念した約3年ぶりとなる有観客ライブ「Superfly 15th Anniversary Live “Get Back!!”」で圧巻のパフォーマンス 来年6月より全国アリーナツアー開催も

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写真:神藤剛/カワベミサキ

11月23日、Superflyが東京・有明アリーナで、デビュー15周年を記念した一夜限りのスペシャルライブを行なった。コロナ禍以降、無観客での配信ライブは2度あったが、有観客での大きなライブとなると、11万人を動員した2019年のアリーナ・ツアー「Superfly Arena Tour 2019 “0”」以来3年ぶり。6thアルバム「0」を出した2020年1月15日には都内某所でリリースイベントがあったが、そこから数えても2年10ヶ月ぶりとなるものだった。

公演タイトルは「Superfly 15rh Anniversary Live “Get Back!!”」。「Get Back」は「return」「come back」「go back」とも言い換えられる言葉で、「元の場所に戻る」「取り返す」といった意味だが、デビュー以来何よりもライブに力を注いで活動してきたSuperflyにとっての“元の場所”とは、即ちステージであり、みんながいる会場。ライブの終盤には2023年6月からアリーナ・ツアーが開催されることも発表され、まさに「Get Back」を表明する夜となった。

アリーナの中央に設置された円形ステージ。そこが今回Superflyとバンドの立つ舞台だ。円筒形の天井に近い上部が360度LEDのビジョンになっており、17時過ぎに着席して開演を待つ間、そこに過去のSuperflyのミュージックビデオの象徴的な場面を繋げたものが映されていた。「Get Back!!」のロゴも度々映され、開演間近には「Are you ready?」の文字も。否が応でも期待が高まる。始まるまで志帆が好んで聴いてきたと思われる曲がBGMでおとなしめに流れていたが、シェリル・クロウ、アレサ・フランクリン、ジャニス・ジョプリンと、まさに彼女のルーツとも言えるシンガーたちの曲が続いたところで客電が落とされ、お馴染みの登場曲であるカーティス・メイフィールド「Super Fly」がかかる。ビジョンには、これからステージに向かう志帆とメンバーたちの気合入れの様子がモノクロで映された。期待感マックス。そして……気が付けば、いつのまにかミュージシャンたちが円形ステージ上の定位置につき、生音が鳴らされだした。

オープナーは「Bi-Li-Li Emotion」。紗幕が上にあがると円形ステージど真ん中に青・黒ストライプのセットアップでキメた志帆がいた(ステージでのパンツルックはけっこう珍しかったんじゃないか)。ノリのいいそのロック曲に合わせ、ダンサーの4人が4方向に分かれてダンス。いきなり盛り上げにかかる。志帆自身はこの段階でまだ大きくは動かないが、「get no satisfaction」のところで腕を回し、観客たちも同じように回していた。ホーンの生きる曲である故、早くもホーン隊が存在感を見せつけた。続いて名越由貴夫がお馴染みのあの昂るリフを弾き始める。そう、早くも「タマシイレボリューション」。「呼び覚ませ本能」と歌う志帆が、まさしくここで本能を呼び覚ましたかのように見えた。この数時間後にドーハで行なわれたW杯・対ドイツ戦における日本の奇跡的勝利は、有明のこの曲が呼び込んだんじゃないかと、後になってそう思えたりもした。そして3曲目は「Hi-Five」。シルバーのテープが客席全方向に放たれる。ビジョンには「Dance Dance Dance」「Step Step Step」と印象的なフレーズが映され、バンド演奏もオーディエンスもさらにヒートアップ。志帆はといえば、以前のこれらの曲のときのように、挑むように、あるいは挑発するように全力で歌うのではなく、余裕を持った動きをしながら声の出力をコントロール。若い頃のように血気にはやって突き進むのではなく、余裕を持ちながらロック的高揚をもたらす。それができるのが15年のキャリアの意味するところであるかもしれない。

「久しぶりです。Superflyの15周年記念ライブ“Get Back!!”に来ていただき、ありがとうございます。私、こうやって誰かの前で歌をうたうのは3年ぶりなんです。発表してから毎日緊張していて、心臓が飛び出しそうになるほどで。ライブってどうやってやるんだろうって忘れていたくらいなんですけど、みんなを前にすると思い出しますね」「こうやって立って歌うのも久しぶりなんですけど、みんなと盛り上がりたくて立ち上がろうと決心しました(笑)」。初めのそんなMCも気負いがなく、「志帆ちゃん、おめでとー!!」という声が男性客からかかれば、笑って「どうもありがとう」と返す余裕も。この夜は約1万4000人が集まっていたそうだが、ひとりの友達に話しかけるようなフレンドリーな口調が会場全体を温かな雰囲気にする。熱さと、温かさ。Superflyのライブが基本的にそのふたつの温度感で成り立っていることを思いだした。

この日のメンバーをここで書いておこう。ギターが八橋義幸と名越由貴夫。ベースが須藤優。ドラムスが玉田豊夢。キーボードが鶴谷崇。コーラスが稲泉りん、竹本健一、塚本直、Luz、若島史佳。トランペットが川上鉄平。トロンボーンが五十嵐誠。サックスが村瀬和広。ストリングスが門脇大輔、山本大将、高橋輝、村中俊之。ダンサーはcalin、Miyu、Fumiya Matsumoto、Keita。総勢21人がそれぞれの腕と個性を存分に発揮し、志帆と一緒にこのライブを作っていた。

志帆がジャケットを脱いでからの次のブロックは、デビュー曲「ハロー・ハロー」でスタート。「ここから全てが始まるよ」というのはデビューに際しての思いであったはずだが、15周年を迎え、久々にステージに戻ってきた今、もう一度「ここから全てが始まる」と志帆は感じているんじゃないか。そんなふうにも思えた伸びやかな歌唱だった。続いて、これもSuperflyにとって重要な1曲「輝く月のように」。村瀬和広のサックスがフィーチャーされ、ソウル味の加わったアレンジになっていたのが新鮮だった。「有明のみんな、楽しんでますかー?」といった呼びかけを挿んでからも代表的な曲が続き、次はドラマ「スカーレット」の主題歌だった「フレア」。「Superfly Arena Tour 2019 “0”」ではアンコールの最後に歌われたその曲を、志帆は今回も幸せそうな笑顔で歌っていた。志帆の幸せそうな表情は、観客たちをも幸せな気持ちにさせる。志帆が軽やかに歌えば、みんなの心も軽やかになる。あの笑顔をまた見たいからライブに行く、という人もきっと少なくないはずだ。

LEDビジョンには流れる雲が映され、軽やかだった「フレア」から一転してストリングスの鳴りがドラマチックなムードを醸し出す。大きくアレンジされていたイントロ部分ではわからなかったが、「Wildflower」だった。大自然が映され、荒野に咲いた一輪の花が輝く。サビ部分のハイトーンを聴きながら、あの頃の志帆はまだ「運命だろうか?、夢か使命か?、わからないいまま」「時折懸命に悩みながら」それでも自分を知ろうと歩いていたことを思いだした。その曲が終ろうとする頃に紗幕がステージを囲うようにおりてきて、そこでゴスペル的なコーラスが。泳ぐ魚の群れと海藻が紗幕に映され、まるで海底で歌っているような映像演出。鯨が横切り、クラゲも浮かぶ、そんな背景で歌われたのはアルバム「WHITE」からのリカット・シングル曲「On Your Side」だ。久しぶりにナマで聴くエモーショナルなソウルバラッド。最後のとびきりのハイトーンにしびれた。

「オープニングのMCでは、3年ぶりでドキドキするって言ったけど、もう全然そんなことない。安心する」と、ここでそう話した志帆。確かに進むに連れて気持ちがどんどん歌に乗っていくのがわかり、このあたりでは声艶もよくなって、共鳴度合が増していったように感じられた。「久しぶりにみんなに会うのに後ろの人が遠いのは嫌だなぁと思って、できるだけみんなが近くに感じられるように」。初めて円形ステージにした意図をそう説明し、またそのステージがピースマークを象ったものであることもここで伝えた志帆。「アリーナー! スタンドー!」というお馴染みのコール&レスポンスも、コロナ禍故の声出し禁止ルールに則ったサワサワ・バージョンで行ない、「今、私、すごく楽しい」とも。そして印象的なピアノで始まる「愛をこめて花束を」を、会場の端方向に延びる花道をゆっくり歩きながら歌ったのだった。

そのあとバンドのソロ回しがしばらく続く。勘のいいファンなら、それが「Beep!!」のイントロをアレンジしたものだとすぐに気づいたことだろう。ダンサーたちを引き連れてステージとひと続きの花道を歩き、カラフルな衣装に着替えた志帆が再び中央に立つと、バンドは一気にロックモードに拍車をかける。「Beep!!」というシンプルなロック曲は、こうしていつもなかなかいい役割を果たすのだ。そしてベースがブインブインと響き、「マニフェスト」へ。志帆の吹くブルーズハープもいいアクセントとなり、曲終わりでは迫力のシャウトを数回。このシャウトは初めてSuperflyのライブを観るという人たちをも「すげえ」と驚かせ、引き込んだはずだ。「最近この曲はブルースバージョンでやっていたけど、久しぶりにCDバージョンでやりました」と志帆。「なんか、眠っていた何かが目覚めちゃいますね」とも言っていたが、確かにそういう効力を持つ曲であり、聴く者みんなの体温もグッとあがったことだろう。

ダンサーのKeitaとトランペットの川上鉄平が旗を持ってランナー役を務め、観客みんながウェーブをしてひとつになったひと時のあとは、さらに熱をもったロック曲がこれでもかと続いた。八橋義幸のギターソロが唸り、ダンサー4人の煽りも激しくなっての「Force」。そこからの「Alright!!」では再びKeitaが円の外周を走って、もう一度ウェーブが起きる。このようにして次々に盛り上げ曲を繰り出し、その高揚をキープしたまま、ここで今年の新曲「ダイナマイト」を投下。ライブで初めて演奏されるこの曲はタイトルさながらの爆発力があり、あがった火炎の熱さまでも客席に伝わってきた。間奏部分のトランペットがさらに炎に油を注ぐかのように鳴り、志帆の歌唱の迫力も「タマレボ」超え。続いてもう1曲、移籍後の新曲「Voice」がここで歌われたのだが、これが凄かった。コーラスの5人は低位置から外に出てバラバラに円を囲んで立ち、それぞれの思いを最大限に込めた声=Voiceをそこで放っていた。ひとりひとりの祈りにも似たVoiceと、その合わさりの厚みたるや。音源ではプログラミングされたダンスビートも印象的だったが、ライブでは生演奏と生声の合わさりによって強度がさらに増していた。こうしてライブで演奏されてこそ完成する曲だと、そうも思えた。個人的には、このライブのなかで最も激しく心を揺さぶられた1曲でもあった。

「この15周年ライブをやるにあたり、昔の歌のフィーリングを取り戻してみるのも面白いかなと思って、この3ヶ月くらい昔の曲をじっくり聴いてみたんです。歌が未熟だからガッカリするだろうと思って聴いたんですけど、でもそこで昔の自分の歌声もすごいなって思ったんですよ。かっこいい!って。粗削りなんだけど、すごいエネルギーがあって、初めて自分で“いいじゃん!”って思えたんです」「(そうやって昔の曲も歌っていくうちに)今の私と昔の私が合体したような感じがしたんですよ」。そう話していた志帆だったが、なるほど、その感じはイメージできることだった。もっともっと歌唱の可能性を広げなきゃと、それを探ることに必死だった時期が確かに志帆にあったのを自分は知っている。それも短い時間じゃなく。だが、そういう時期を経て、今は自分の確立した歌唱表現にとても素直になっている。無理をして負担をかけることなく、どう鳴らせば声が豊かに響くのか、今の志帆にはそれがよくわかっている。動きも一緒だろう。激しく、荒々しく、端から端まで駆けたりしながら大きく動くことだけが迫力や熱量に結びつくわけではないということを、今の志帆はわかっている。15周年を迎えた2022年の今が、シンガーとしての志帆にとっても最良の状態にあることがよくわかる、そんな歌唱表現を十二分に味わえた。

来年のツアー開催を発表したあと、本編最後の曲として歌われたのは「Starting Over」だった。「ここからもう一度、続けてみよう」「もう一度、夢をもっと 見つめたい」。その歌詞はまさしく今の志帆の気持ちそのものなのだろう。だから本編最後にこの曲を選んだのだ。LEDビジョンには10数年前の志帆、長い髪を振り乱して歌っていた志帆、バッサリ髪を切った頃の志帆、最近の志帆の映像が混ざりながら映し出されていた。その多くの志帆は笑っていた。「歌うこと。歌詞を書くこと。メロディを作ること。その3つのことだけを本気でやってきた15年だった」と話していたが、辛かった時期もあったにせよ、多くのその時間は楽しく、喜びが感じられ、だからあんなふうによく笑っていたのだろう。そう思いながらこの歌を聴いていたら胸が熱くなってしまった。最後のア・カペラによる熱唱も感動的だった。

アンコールはまず、「愛をこめて花束を」に並ぶ代表曲の「Beautiful」。ストリングス隊もホーン隊もいる故、厚みをもって音が響き、志帆の歌は光に包まれるような感覚をもたらした。そして21人のメンバー紹介。長きに亘ってSuperflyを支え続けるバンマスの八橋義幸が涙を両手で拭うふりをして笑わせたが、冗談ではなく、そんな思いは実際彼のなかに去来したに違いない。続いてはかなり久しぶりの「愛と感謝」。志帆も話していた通り、初期にはよくライブで歌われていたが、長らく歌っていなかった曲だ。15周年を記念したこの夜にこの上なく相応しい曲。ダンサーの4人はサビの部分を手話でも表現し、「愛しい人よ 最高の笑顔をありがとう」と歌われるところではコーラスの稲泉りんが志帆にそのことを伝えんと手でその気持ちを表現。志帆もまた彼女を始めみんなに向かってその気持ちを手でも表現しながら幸せそうに歌い、観客たちみんなも「最高の笑顔をありがとう」と志帆に伝えるべくサビを繰り返した。見事な演出、厚みある演奏、感情を表現するダンス。それらがひとつになったこのライブがチーム一丸となって作られているのだということが明確に伝わる象徴的かつ幸福な場面だった。

アンコールの最後に歌われたのは、最新曲の「Presence」だ。青春をテーマに書かれたその曲を聴きながら、Superflyにとっての「青春期」と「未来」をイメージした。誰もが光と影を持っているが、今、Superflyは光のなかにいる。輝ける未来を見つめている。そうも思えた。お馴染みの代表曲が次々に歌われたこの特別なライブを、15年間の集大成と捉えることもできなくはないし、ハッキリとそういう位置づけにすることもできたはずだ。が、これまでの名曲群にも増して、新曲3曲の強度がなんといっても凄かった。志帆は昔の私を肯定しつつ、今の私を素直に、軽やかに、時にはドラマチックにも表現し、その上でもう未来に視線を向けていた。つまり、「ここから」のためのライブであった。それが素晴らしかったし、そのことが嬉しかった。久しぶりのアリーナ・ツアーを柱とした2023年の活躍が今から楽しみでしょうがない。

文:内本順一

「Superfly 15th Anniversary Live “Get Back!!”」セットリスト

M1.Bi-Li-Li Emotion
M2.タマシイレボリューション
M3.Hi-Five
M4.ハロー・ハロー
M5.輝く月のように
M6.フレア
M7.Wildflower
M8.On Your Side
M9.愛をこめて花束を
M10.Beep!!
M11.マニフェスト
M12.Force
M13.Alright!!
M14.ダイナマイト
M15.Voice
M16.Starting Over

ENCORE1.Beautiful
ENCORE2.愛と感謝
ENCORE3.Presence

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