木村達成×小野賢章がWキャストで登場! 日本版初演のミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』の魅力や意気込み、互いの印象は?

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左から 木村達成、小野賢章

左から 木村達成、小野賢章

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』が日本版演出・日本人キャストで2021年9〜10月に上演される。

世界的に有名な未解決事件として恐れられた殺人犯・通称“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”。19世紀末に英国ロンドンで発生したこの猟奇連続殺人事件をモチーフに、チェコ共和国でミュージカルが創作された。そのミュージカルを原作に、韓国独自のアレンジを施したミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は2009年の初演以来多くの観客に愛される大人気演目に。今回、KAAT神奈川芸術劇場の芸術監督も務めた白井晃が日本版演出を担う。

SPICE編集部は、純真なエリートだが闇に堕ちていく外科医ダニエル役をWキャストで演じる木村達成小野賢章に、作品の魅力や意気込み、普段の役づくりなどを聞いた。

左から 木村達成、小野賢章

左から 木村達成、小野賢章

 
○木村達成(きむら・たつなり)
1993年12月8日生まれ、東京都出身。2012年ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンにて海堂薫役でデビュー。2018年ミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール〜籠の中の道化たち〜』でグランドミュージカル初出演し、以降、幅広い舞台に出演。2020年には音楽劇『銀河鉄道の夜2020』にてストレートプレイに初挑戦した。​
 
○小野賢章(おの・けんしょう)
1989年10月5日生まれ、福岡県出身。子役時代から舞台・映画・テレビドラマに出演。映画『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフの吹き替えを担当して以降、アニメやゲームなどの声優としても活動の幅を広げている。近作の出演舞台作は、Team Unsui 第四回公演『パレード』(2020)、ミュージカル『ウェスト・サイド・ストーリー』Season2(2020)ほか。

 

――まずは、今回、出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

木村:僕がグランドミュージカルに初出演した劇場が日生劇場だったんです。観客としても、日生劇場に先輩方のミュージカルを観に行ったりすると、受付の方が「いつでも戻ってきてくださいね〜」と仰ってくださって。そんな思い出深い劇場で、日本初演の『ジャック・ザ・リッパー』という作品を上演できることが何より嬉しかったです。「やったー!」という気持ちはすごく大きかったですね。

――思い出の劇場なんですね。

木村:はい。思い出深い劇場ですね。

――小野さんはいかがですか?

小野:最初にお話をいただいた時は、すごく面白そうだなと思いました。ミュージカルをやらせていただく機会がそんなにないのですが、今回の作品は日本初演ですし、何より題材がすごく面白そうだと思ったんです。「切り裂きジャック」は世界的に有名な事件で、いまだに未解決。数々の小説や映画などのモチーフにされてきた事件の一つですから。まだ稽古は始まっていませんが、すごく楽しみですし、でも、不安だなと思うところもあるという感じですかね。

――その不安というのは?

小野:まずは共演者のほとんどの方がはじめましてなので、そこに対する不安。そして、その中でしっかり表現できていけるのかなという不安です。ミュージカルをやり慣れているか、やり慣れていないかで言ったら、圧倒的にやり慣れていない方なので(笑)。そこに対する不安はありますね……。

小野賢章

小野賢章

――お二人は『ジャック・ザ・リッパー』は韓国でご覧になられたのでしょうか?

木村:いや、観てはいないです。台本を読んで、音源を軽く聞いたぐらいで。まだ作品のすべてを理解しているわけではないです。

小野:僕も観ていないです。

――では、脚本を読まれた印象として、どんな作品になりそうだなと思いますか? 期待されていることなどお聞かせください。

木村:興味深い作品ですよね。過去に本当に起こって、未解決。ミステリー要素がたくさんあって、ワクワクしますよね。どうなっていくんだろうって。……だって、解決するじゃないですか、今後(笑)。

――確かに、可能性はゼロではないです(笑)。

木村:ですよね(笑)。僕も「切り裂きジャック」という名前を聞いたことはあったんですけど、台本を読んで、びっくりしたところが結構あったので、ぜひお客様にもびっくりしてほしいですね。なぜダニエルはそういう行動をしてしまったのか。そこには、やはり愛というものがあると思うんですね。愛を感じていただければ、たとえ、僕が猟奇的な事をしても理解していただけるんじゃないかな……いや、もちろん、現実ではしてはダメですけどね(笑)。

木村達成

木村達成

小野:そうですね。ダニエルは外科医で人を助ける側の人間なのに、どんどん人が変わっていく。その二面性をうまく表現できたらいいなと思います。僕の勝手な妄想ですが、このミュージカルを見終えた観客の皆さんが「帰り道怖いな」と思ってくれたらと思います。普段話している友達が、もしかしたら裏で、切り裂きジャックみたいに人を殺しているかもしれない……とか。まぁそれはないですけど(笑)、それくらい、後を引くような衝撃を与えられたらいいなと個人的には思っています。

――役作りもなかなか難しそうです。

木村:僕、普段からそんなに別に意図して役作りをしていくタイプではないので。どうなるか分からないですね。

――それは、稽古場で作っていくタイプということですか?

木村:まだね、意気込みすぎちゃっているところもあるというか(笑)。まだ作品にあまり深く触れていないので、何かヒントみたいなものが稽古場で見つかればいいなと。ヒントが見つかれば、そこからどんどん派生していって、自分の役作りはこうなんだなと感じることになると思うんですけど、まだその前段階なので。「普段こうやっていたら、ダニエルに近づけるかな」みたいなことは、正直今のところまだ考えられていないですね。

小野:僕は、ほぼ現場で作るタイプですね。自分の中である程度イメージは持って、専門用語や分からない言葉を調べていくぐらいはしますけど、自分の中で固めすぎちゃうと、現場で首が回らなくなってしまう。それがすごく嫌で。なので、余白は結構残して稽古場に行きますね。

――稽古が始まってからダニエル像が変わっていきそうですね。

小野:そうですね。あとは基本的にすごいスロースターターなので。最初の印象はあまり良くないと思います(笑)。

小野賢章

小野賢章

――それは人見知りということですか?(笑)。

小野:人見知りでもありますね。早く打ち解けたらいいんですけど、そんなに人を簡単に信じないタイプの人間です(笑)。

――ちなみに普段はプライベートでも役が反映されてしまうタイプですか? オンとオフがきっちり分かれるタイプですか?

木村:役はあまり反映しないタイプだと思っていたんですけど、たまに抜けない時は、あるっちゃあります。

――『プロデューサーズ』(2020)で演じられていたカルメン役とかは抜けなさそうですよね(笑)。

木村:そうなんです。やっぱり抜けないなと思う瞬間は撮影ですね。体のポージングとか、手の振りとか、女性っぽくなっちゃうことが、なんだかんだ今でもちょっとあります(笑)。

――いまでも!(笑)

木村:抜けていないところありますよ、つま先や膝の角度がちょっと内に入っていたり。まだカルメン抜けていないなと感じてしまいますね(笑)。

――これから『ジャック・ザ・リッパー』で切り替えていかれるわけですね。

木村:そうですね。今は時代劇をやっているので、本当なら抜けていなきゃいけないんですけどね(笑)。

木村達成

木村達成

――お互いについての印象やエピソードを教えてください。

小野:達成とは実際に一緒に舞台に立つのは初めてなんですけど、共通の知り合いがいて、たまに飲みに行ったりしていました。僕が出ているミュージカルに別シーズンで出ていたり(※)、縁はすごく感じています。

木村:そう、僕はできなかったんですけど、『ウエスト・サイド・ストーリー』は同じ役(リフ役)をやる予定だったので(※)。楽しみですよね、そういう共通点もあるわけですから。

過去には同じ『テニスの王子様』にも出ていて。お芝居で深く関わったわけではないのですが、仲良くさせていただいていました。コロナ前は、飲みに行ったりもして。なので、ご一緒にできるのは嬉しいです。それに、賢章さんはよく名前を目にしますからね。声優でもあり、プレイヤーでもある。すごいなと思いますよね。

※ブロードウェイミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2で小野賢章が上口耕平とともにリフ役を、Season3で木村達成が加藤和樹とともにリフ役を演じる予定だったが、コロナ禍で、Season2は一部公演中止、Season3は全公演中止に。

ーーでは、刺激しあうというか、ついにこの時が来たかという感じですね!

木村:いや、ついにこの時が来たとまでは思ってないですけど(笑)、一緒にできる喜びは感じたいですね。

小野:楽しみなんですけど、僕と達成は全然違うなと思いますね。見た目や第一印象からして違うと思うし、芝居の仕方もきっと違う気がしているので、全く違うダニエル像ができていくのかなと思います。僕は達成のダニエルに影響されすぎないにしようと思っていて。どっちがいい、どっちが悪いではなくて、お互いに刺激し合って、高めあえたらなと思います。

小野賢章

小野賢章

――ヴィジュアル撮影はもう終えられたんですよね。何か役作りの着想を得られましたか?

木村:撮影では、衣装を何パターンか持ってきていただいていたんです。その中から、僕は僕で、自分に一番合う、自分が考えるダニエルというものに近い衣装をかなり入念に選んだつもりです。時代背景に合った身なりで、その中でも自分のイメージに近いもの。面白いもので、木村達成が演じるダニエルと、賢章さんのダニエルは服装からして全然違ったんです。そういうところも見ていただければと思います。

――「木村達成が演じるダニエル」というのは、一言で言うと、どんなダニエルなのでしょう?

木村:……僕自身です。やはり自分の経験以上のもの、自分が人生で経験してきたこと以上のものを役に反映させるのって、なかなか難しいことだと思うんですよ。

だから僕が今まで感じた悲しみとか、感じた苦しみとか、人を殺したいと思ったことはないですけど、自分の中の怒りの根元みたいなのはどこかダニエルというものに反映されると思う。演じているというよりは、取り憑かれた様な感覚でできたらなと思います。

――いろいろな意味で苦しい稽古になるかもしれないですね。

木村:そうですね。

木村達成

木村達成

――演出の白井晃さんについてはどのような印象をお持ちですか? 何か作品についてお話されましたか?

木村:まだ1作品でしかご一緒していないですけど、とても信頼している演出家です。白井さんの演出はすごくセンシティブだし、白井さんには絶対嘘はつけないと思うので。すべて見透かされているような気がするんですよ(笑)。まだ1作品で僕のことを理解はどこまでしていただけるか分からないんですけど、もっともっと木村達成というものを知っていただいて、僕の知らない面白い部分をどんどん掘り下げていってくださるなとは思うので、すごく期待しています。

――まだ白井さんに見せていない「木村達成」がある、ということですか?

木村:いや、違います。多分できる限りの自分のボキャブラリーは出したので、それよりもっと奥というか、まだ自分でも知らないものを白井さんに見つけていただくことです。それによって、ダニエルという役に深さが出て、よりお客様の心をえぐるような芝居をするきっかけになるのかなと。

――なるほど、ご自身もまだ見つけられていないものが白井さんの演出によって炙り出されるということですね。小野さんはいかがですか?

小野:僕は実はまだお会いしてなくて。ただ稽古がすごく好きという話はどこからともなく聞こえてくるので、いっぱい稽古できたらいいなと思います。

――楽しみですか?

小野:怖くなかったらいいなと思います(笑)。セリフを覚えたり、歌を覚えたり、役者として最低限のことをやっていったら、そんなに怒られることはないかなと思っているので、準備はします。あとは稽古していく中で、作品を作り上げられたらと思います。

左から 木村達成、小野賢章

左から 木村達成、小野賢章

――最後に、観劇を楽しみにされているファンやお客様にメッセージをお願いします!

木村:『ジャック・ザ・リッパー』を見終えた後に、これが本当に過去に起こった事件で、恐ろしいなと不意に感じていただけたら、この公演は成功だと思います。日本版が初演ということで、生でご覧になったお客様が誇りに思ってくださるような作品をお届けしたいと思います。ぜひ日生劇場でお待ちしております!

小野:組み合わせごとにきっと違う雰囲気の作品になると思いますので、いろいろな組み合わせで見ていただきたいですね。コロナ禍はまだ続いていますし、みなさま無理のない範囲で、安全に劇場まで足を運んでいただけたらなと思います。まずはカンパニー一同体調に気をつけて、無事に幕が上がるよう、頑張ります!

取材・文=五月女菜穂 撮影=iwa

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